
アブ・スナン、イスラエル: イスラエルのアラブ系市民らが、「Arab lives matter(アラブ人の命を守れ)」のハッシュタグを拡散することで、彼らのコミュニティで急増する暴力犯罪に対する人々の認識を高めようとしている。しかし、米国での同様のキャンペーンとは異なり、より警察が関わることを要求しているのである。
イスラエルの人口の約20%を占める少数派のアラブ系住民たちは、近年、それをはるかに超える殺人率を伴う暴力犯罪の増加に怯えている。それらの犯罪は、犯罪組織や家庭内紛争がきっかけとなって起きている。
活動家たちは、イスラエル当局は歴史的にアラブ人同士の殺人事件を無視してきたと述べている。近年では、アラブ系コミュニティの治安維持強化のための予算の増加など、数多くの取り組みを打ち出してきた。しかし、アラブ系住民のコミュニティの改善ために同コミュニティのリーダー達ができることがもっとあるはずだというのが警察の言い分である。
ユダヤ人とアラブ人の共存の促進を図るイスラエルの社会組織であるエイブラハム・イニシアチブによると、今年これまでにイスラエルで殺害された人の合計は93人、そのうち少なくとも78人がアラブ系市民であった。
長年にわたる警察の怠慢を経た先月、イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、新政権では、アラブ系住民のコミュニティにはびこっている暴力犯罪に立ち向かっていゆくことを約束した。そのことは、同首相の歴史的な連立政権を辛くも成立させる鍵となった少数派のアラブ系政党の最大の要求の1つであった。
先週、アラブ系住民が多い町でさらに2人が殺害されたことを受け、アラブ系のブロガーであるシェレン・ファラ・サーブさんは、イスラエルの人口の大多数を占めるユダヤ系住民との対話を開くことを目的として、ヘブライ語で「#Arab_lives_matter」とツイートした。
「アイデアは『Black Lives Matter』の社会運動から得ました。ですが、イスラエルのアラブ系社会における暴力は、警察や法執行機関によって引き起こされたものではなく、アラブ人同士の間で起きているのだという点に注意することが大切です。また、殺人事件が起きた時に、警察が怠慢であり、法的処置やフォローアップが欠如していることに声を上げることが重要です」と、サーブさんは述べた。
彼女のツィートは、ソーシャルメディアで話題となり、国会議員、活動家、組織に加えて警察を管轄する大臣も賛同の意を唱えた。
オマー・バーレブ公安大臣は、この問題の責任は「何十年にもわたる怠慢、無視、アラブ系住民間の問題の根深さに踏み込むことへの恐れ、そして『彼らが互いに殺人を犯す限り、これは彼らの問題である』という前提が浸透していること」にあるとし、「私は就任後の100日間で、過去10年分よりも多いアラブ系のコミュニティでの犯罪に対処しました。そうです、#Arab_Lives_Matterです」と、同大臣はツイートしている。
AP