
ヨルダン川西岸地区:イスラエル軍に殺害されてから1年以上が経過した今も、ムスタファ・エレカト氏は息子の遺体を探し求めている。
イスラエルは、攻撃抑止の必要性から、またガザ地区のパレスチナ過激派組織ハマスが保有するイスラエル軍兵士2人の遺体と交換できる可能性があるということから、紛争で死亡したパレスチナ人数十人の遺体を保持しているが、これはそのうちの1人である。
パレスチナ人と人権団体は、遺体を引き渡さないのは遺族にさらなる苦痛を与える集団的懲罰の一種であるとみなしている。
「彼らに私の息子を拘束する権利はなく、私には息子に立派な葬儀をあげる権利がある」とエレカト氏は語った。
パレスチナの人権団体であるエルサレム法的支援人権センターによると、2015年にこの政策が確立されて以降、イスラエルは少なくともパレスチナ人82人の遺体を保持しているという。
また、多くは秘密墓地に埋葬されており、その墓地には番号札がつけられているだけだという。ハマスは、2014年のガザ紛争で殺害されたイスラエル軍兵士2人の遺体を保持している。
ベニー・ガンツ国防相は当時、遺体を保持することで攻撃を抑止し、イスラエル人の捕虜や遺体の返還を確実なものにできると述べていた。 国防省はこの政策についてコメントを拒否している。
それらの遺体の1つが、エレカト氏の息子アフメドさんのものである。イスラエル当局によれば、アフメドさんは2020年6月、軍の検問所に故意に突入して射殺された。
アフメドさんは結婚を間近に控え、「息子には家も用意してあった」と彼の父親はいう。今日に至るまで、彼の遺体は行方不明のままである。
ニューヨークに拠点を置くヒューマン・ライツ・ウォッチのイスラエル・パレスチナ担当ディレクター、オマー・シャキール氏は、イスラエルは「遺体を交渉材料にしている」と指摘する。彼によれば、この政策は「何の罪にも問われていない故人の家族を故意に、そして不法に罰する」ものである。
イスラエルには、敵国との間で捕虜や遺体を交換してきた長い歴史がある。
2011年には、その5年前にパレスチナ人武装勢力に捕らえられ、ガザに収容されていたイスラエル人兵士1人と1,000人以上のパレスチナ人捕虜を交換した。
2008年には、その2年前にヒズボラに捕らえられたイスラエル人兵士2人の遺体と、5人のレバノン人捕虜、および戦闘で死亡した約200人のレバノン人とパレスチナ人の遺体を交換している。
AP