
ジュネーブ:国連の最高人権責任者である国連人権高等弁務官は金曜日、約2週間前に発生したクーデター後のスーダン軍事指導者らによる行動を非難し、民主主義政権の復帰のために「退く」ことを求めた。
国連のミシェル・バチェレ人権高等弁務官は、クーデター以降、少なくとも13人が死亡、300人以上が負傷している治安部隊による過度な武力行使を非難した。また、バチェレ国連人権高等弁務官は、市民社会や抗議デモのリーダー、ジャーナリスト、活動家らの「多数の」拘束や失踪についても懸念を表明した。
バチェレ氏は、スーダンに関する国連人権理事会の特別会合で演説した。イギリス、アメリカ、ドイツ、ノルウェーが中心となって、スーダンの人権状況を監視するための専門家の任命を盛り込んだ決議案を要請した。
今回の国連人権理事会の特別会合は、国連が未だに追放されたスーダン政府から国連に派遣された大使を国連人権理事会におけるスーダンの公式代表として認めている中で開催された。今回の特別会合には、スーダン軍幹部の代表者は出席していないようだ。
バチェレ氏は独裁者であったオマル・アルバシール元大統領による30年間におよぶスーダンの支配について触れ、「今回のクーデター以降に起こったことは、表現の自由が抑圧され、人権が徹底的に抑圧された、スーダンの歴史の暗澹たる1ページを思い起こさせる」と述べた。
さらにバチェレ氏は、「スーダンが制度や法の改革に向けた道に戻るため、スーダンの軍事指導者とその支援者が退くことを求める」と加えた。
10月25日のクーデターは、2019年4月に民衆の反乱によってスーダン軍がオマル・アルバシール元大統領とそのイスラム主義政権を追放してから2年以上が経過して後に起こったものだ。今回のクーデターにより、計画されていたスーダンの民政移管の実現が揺らいでいる。クーデター後、何万人もの人々が路上で抗議デモを行った。
特にスーダンの首都ハルツームやオムドゥルマンにおいて、クーデターに反対する大規模な抗議デモに対して、実弾を含む過度な武力行使が行われたことが、スーダン国内の国連統合人権事務所の記録に残されている。
医療関係者によると、10月25日以降、軍や治安部隊による武力行使により少なくとも13人の民間人が死亡し、300人以上が負傷している。
スーダン暫定政府を解散させ、暫定政府関係者や政治家らを拘束したスーダン軍最高司令官アブドゥルファッターフ・ブルハン将軍と彼に忠実な部隊に対する国際社会からの圧力が高まっている。欧米諸国はこのクーデターを非難している。
サイモン・マンリー駐ジュネーブ英国大使は、AP通信に寄せた声明の中で、「これは根本的に民主主義と人権の尊重の問題である」とし、「他の国連人権理事会理事国らが今日、スーダンの勇敢な人々と連帯してくれることを願っている」と述べた。
今週初めに欧米4カ国が提示した決議案は、金曜日にその内容が大幅に修正された。草案では、スーダンの人権状況を監視するための「特別報告者」という1年間のポストを新設することになっていた。しかし、決議の最終案では内容が変更され、バチェレ国連人権高等弁務官に対し、民主主義政権が復帰するまでの間、スーダンの状況を監視するための専門家を任命するよう求めている。この専門家は、ハルツームにある国連人権高等弁務官の地域事務所と協力し、スーダンの人権状況について報告を行う。
今回の決議は、47か国で構成される同理事会において、無投票で採択された。
さらに、決議の最終案では、クーデターで拘束されたアブダッラー・ハムドゥーク首相を中心とした文民主導の暫定政府への即時復帰を求める内容も削除された。その代わりに、決議文では「文民主導の暫定政府の回復」を求めている。なお、現在軟禁されているものの、調停の一環として国連や各国外交官らとの面会が認められているハムドゥーク首相の名前は挙げられていない。
多くの国が今回のクーデターに対し反対の立場を示した。一方、国際的な内政干渉に懸念を示すことの多いロシアと中国は、異なる立場を取った。中国の外交官であるLi Song氏は、「建設的な対話と協力」を呼びかけ、「外部からの圧力は状況を複雑にするだけだ」と警鐘をならした。
ロシアのアルトゥール・チェルニャコフ代表は、主に西側諸国が招集を要請した今回の特別会合について、「性急な決定」と反対の意を表明した。
チェルニャコフ氏は、「スーダン内政へのいかなる干渉も逆効果であり、受け入れられない」と述べた。
スーダン国内では、クーデター反対派の人々が新たに拘束されたという報道が続いている。
スーダンの民政移管を支援する国連ミッションは金曜日、2019年の抗議デモから生まれた民主化運動団体「自由・変革同盟」のリーダー3人が拘束されたことを非難した。
国連ミッションは声明の中で、タハ・オスマン・イサハク氏、シャリフ・モハマド・オスマン氏、ハムザ・ファールーク氏の3人が木曜日にハルツームにある国連ミッション本部付近で拘束されたとしている。
今回の拘束は、これまでに拘束されていた職員らが釈放されるとの報道があったにもかかわらず、一歩後退したものだとしている。
スーダン国営通信によると、スーダン軍のブルハン氏は拘束されている4人の政府閣僚の解放を命じたという。拘束されている閣僚らの弁護人は、閣僚らはまだ解放されていないと述べた。
AP