
ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノンの銀行は、現地通貨のレバノンポンドが暴落する中、支店の閉鎖や業務コストの削減を求めて、従業員の解雇を静かに進めている。
これは、同国の中央銀行が商業銀行に対する規制を強化した後のことである。
国内でその規模を縮小する銀行がある一方、海外での資産売却を選択する銀行もある。
閉鎖されたと推定される支店の数は、全1,100支店のうち300~400支店にのぼる。これらの決定の影響を最初に受けたのは、従業員やその他の雇用契約者である。
銀行従業員シンジケート連盟のジョージ・アル・ハジ会長は、レバノンの銀行従業員にとって2021年は「非常に厳しい」年だったと述べ、こう付け加えた。「解雇された従業員の正確な数を示す統計は行われていませんが、その数は4,500人を超えていません」
しかし、近い将来、さらに多くの銀行員が解雇されることが予想される。
アル・ハッジ氏は、「我々は嵐の中にいます。レバノンが銀行セクターの再建プロセスについてIMF(国際通貨基金)と合意に達するまで、危機は続くでしょう」と語った。
2018年の銀行セクターの従業員数は約26,000人で、61の銀行に勤務していたと推定されている。2019年以降、同セクターは従業員の17%以上を失っている。
経済・戦略の専門家であるジャセム・アジャカ博士は「最大で50%の銀行従業員が解雇されることになるでしょう」と警告する。
博士はアラブニュースにこう語った。「経済状況の悪化、そして金融送金の遮断の決定による銀行活動の停止で、銀行セクターはもう利益を上げられない状況です」
「銀行は慈善事業ではなく、現実は誰にとっても厳しいものです」
「銀行セクターの従業員は、レバノンの中産階級の非常に重要な割合を占めており、このグループを経済から根絶やしにすることは、レバノン社会をさらに害することになるでしょう」
アル・ハジ会長は述べる。「2019年、当連盟はこの危機の到来を予見し、従業員を解雇しようとする銀行に、その意図を労働省に知らせるよう促しました。一部の銀行はそうしましたが、他の銀行はそうしなかったため、解雇された従業員の正確な数はわかりません」
さらに「銀行が大量解雇をする際の言い分は様々でした。銀行が早期退職制度を適用していたからということもあれば、行政からの要請による退職、経済的な理由による契約の打ち切りなどです」と付け加えた。
また、多くの商業銀行は、従業員が自主的に辞めるためのインセンティブをセットで提供している。
一般の銀行員の平均給与は200万〜250万レバノン・ポンドで、これは現在の米100ドルに相当するが、経済危機や通貨の暴落以前は米1,500ドル相当であった。
今年、レバノン銀行従業員シンジケート連盟は、解雇された従業員の経済的権利に関する新しいプロトコルを発表したが、アル・ハジ氏は「これまでのところ、銀行はあまり受け入れていません」と懸念を示している。
新規約では、「解雇された従業員は、18ヶ月分の月給に加え、ボーナスとして6年までの勤続年数に応じて2ヶ月分の給料を受け取り、6年から12年までの勤続年数に応じて1.5ヶ月分の給料を受け取り、12年を超え44年までの勤続年数に応じて1ヶ月分の給料を受け取る」としている。
これまでの解雇規定では、銀行側からの恣意的な解雇の場合、解雇された従業員は16ヶ月分の給与しか受け取ることができなかった。
しかし、一部の銀行では、解雇された従業員との衝突を避けるために、他のインセンティブに加えて、24ヶ月分の給与を補償することを選択した。
アル・ハジ氏は次のように述べている。「大量解雇に加えて、最初の問題と同じくらい深刻な別の問題が発生しています。それは、従業員の給料の切り下げと、それによるレバノン人の生活環境への悲惨な影響です」
「この問題は、危機が続く中でさらに深刻化しており、そのため高い能力を持つ従業員の自主的な退職が増えています」
「このことは、銀行セクターの将来にも影響を及ぼすでしょう。残念ながら、無価値になってしまった給与を見直さない限りは、こうした人々の移動を防ぐことはできないでしょう」
一般労働組合の代表であるベチャラ・アル・アスマー氏は「経済危機と新型コロナウイルスの流行が始まって以来、レバノンで解雇された従業員の数は50万人以上にのぼるでしょう」と推定している。
また、「レバノン労働者・従業員の権利のための統計機構」は、50万人から80万人の労働者が職を失い、レバノンの失業率は50%を超えていると発表している。
また、雇用を維持している公共部門、軍人、警備員のうち、ほとんどの人が給料の約90%を失っているとしている。
同統計機構は「325の機関が、2020年の開始時に従業員を解雇する要望を労働省に提出している」と述べている。
また、大量解雇の第一波は、主に観光産業の労働者を対象としていたと指摘している。危機はその後、中小企業や国内の大規模な闇市場にまで及んだ。
「第2波は教育分野を襲い、私立学校の教師シンジケートによると、2020年には2,000人以上の教師が解雇され、多くの生徒が私立教育から離れて公立学校に入学したため、彼らの給料は40%も削減された」
同統計機構は、これらの大量解雇は「1200人以上を解雇したベイルート・アメリカン大学、350人を解雇したコカ・コーラ社、250人を解雇したアディダス社など、危機の影響に耐えられるほど堅実であるはずの大手企業や機関にも影響を与えた」としている。
多国籍小売フランチャイズ企業のアルシャヤ・グループ(Alshaya Group)も、レバノン国内のほとんどの会社を閉鎖し、従業員を解雇したとある。
解雇の影響は、「雇用主が米ドルで支払うことができなくなったため、家庭内労働者や、アジア、アフリカからの非レバノン人労働者」にまで及んだ。
また、「日雇い労働者やパレスチナ難民などの弱者も影響を受けているが、彼らは社会保障基金や労働省に登録されていないため、その数を推定することは困難である」と付け加えている。