テヘラン:イランは、崩壊した2015年の核合意を復活させるためのウィーン協議において、次回の交渉に向けた討議文書に制裁緩和を何とか盛り込むことができ、勝ち点を得ることができたと考えていると、専門家らは言う。
2018年に当時のドナルド・トランプ米国大統領が米国を合意から離脱させた際に同大統領が課した懲罰的な制裁体制を解除させることは、イラン政府にとっての最優先課題となってきた。
欧州の主要国は、ウィーンでの協議がこれまでのところ進展していないことに不満を口にしており、これらの国々の外交官らは17日、「急速に終わりに近づいている」と警告した。
しかし、イラン政府からすれば、進展はあったと、イランの政府高官やイラン国内外の政治アナリストらは言う。
「当事国は、ここ数日のウィーンでの激しい議論の結果、2つの新たな文書で合意した」と、20日、イラン外務省のサイード・ハティブザデ報道官が述べた。
「これらは、イランの立場が考慮された文書であり、これに基づいて我々は今後の議論を続けることができる」
イランの専門家であるフランス人のベルナール・ウルカード氏は、イラン政府は「今回の交渉で、制裁は優先課題として解決しなければならず、その理由は、そうすることにより、核問題の技術的解決への道が開けるからだと、交渉相手を説得することに成功した」と述べた。
同氏は、イランは包括的共同行動計画(JCPOA)と呼ばれる2015年の当初の合意を「常に尊重し」、「損害の修復は、その誠実さに背いた米国次第だ」と、定期的に強調していると述べた。
「今は、世界の約30ヵ国と同様に、望めば短期間で原子爆弾を製造できる寸前の段階に来ているので、権力のバランスが自国に有利に傾いていることをイランは理解している。イランはいつでも好きな時にウランを濃縮できるのだ」と、ウルカード氏は付け加えた。
2015年のイランとの合意の当事国である英国、中国、フランス、ドイツ、ロシア、米国は、これがイランの核兵器使用能力の開発を阻止する最善の方法だと判断した。イラン政府は常に、このような目標の達成は目指していないと否定している。
イランは、当時同国に対して課されていた制裁の緩和と引き換えに、核活動を縮小することを約束し、核活動は国際原子力機関の監視を受けることになった。
トランプがこの合意から離脱すると、イランにとって極めて重要な石油の販売を米国が一方的に禁止するなど、より一層の痛みを伴う徹底的な制裁体制を敷き、イランが再び核活動を活発化させることにつながった。トランプ大統領に代わってジョー・バイデン米国大統領が就任すると、核合意再建のための協議が再開された。協議は6月のイラン大統領選の前に中断し、11月29日に再開した。
イランの超保守的な新政権は、欧米が制裁解除に真剣になり、「脅し」をやめれば、「速やかに」合意に達することができると述べている。
イランは米国と直接関わることを拒否しているため、米国政府は間接的に参加している。
イランの宿敵イスラエルは、協議の当事国ではないが、外交が失敗すれば武力行使すると脅しており、米国も「代替案」を準備していると述べている。
バイデン大統領の国家安全保障担当補佐官のジェイク・サリバン氏は、数日前に「JCPOAに復帰する道筋がまだないという意味では、上手くいっていない」と述べ、協議への不満を口にしている。
サリバン補佐官はその後の21日に会談のため、イスラエル入りする予定となっており、ホワイトハウスの高官らは、会談では、イランと、「流動的」だという核協議の「非常に深刻な状況」に焦点の一部が置かれるだろうと述べた。
現在も続いている協議では、イランは同盟国の中国とロシアに頼ろうとしており、最近核施設の1つでIAEAの監視カメラの交換に同意して善意を示したことからも恩恵を得ようとしていると、観測筋は述べている。
イランの政治学者のフセイン・カナニ・モガダム氏は、制裁解除とイランの核活動に関する2つの文書ができたことを、イラン政府は「重要なステップ」と見なしていると語った。
イラン政府のアリ・バゲリ主席交渉官は、改革派の前任者らが交渉してきた内容に対する「補足点」として、この2つの文書を提示した。
超保守主義者で、元々の合意を厳しく批判してきたバゲリ氏は、最優先課題は「不当で非人道的な制裁を完全に解除すること」だと主張してきた。
バゲリ氏は今、事はイランに有利な方向で進んでいると見ていると、カナニ・モガダム氏は考えている。
「イランは、最終的な離脱であれ、JCPOAへの完全復帰であれ、最終的な結論を出したいと考えているようだ」と、同氏は述べた。
「いずれにせよ、目標はこの不透明な状況から脱することだ」