
エルサレム:イスラエルの法務大臣は19日、物議を醸しているスパイウェア「ペガサス(Pegasus)」が、ベンジャミン・ネタニヤフ前首相への抗議活動を行った人々を含むイスラエル国民に対して使用されたのではないかという疑惑について、全面的な調査を行うことを約束した。
ペガサスは、イスラエルのNSO社が製造する監視用製品で、携帯電話をスパイ装置に変えてしまうことができる。昨年、世界各地のジャーナリストや反体制派を監視するために使用されていたことが明らかになり、国際的な論議の的となっている。
ヘブライ語の日刊経済紙「カルカリスト(Calcalist)」は、ペガサスは、昨年、ネタニヤフ前首相の在任時に、同首相に対する抗議デモの先頭に立っていた市民やその他のイスラエル人に対しても警察により使用されていたと報じている。イスラエル警察はこの報道を強く否定している。
ネタニヤフ前首相の批判者であり、昨年6月にその政権を終わらせて発足した新政府の一員であるオメル・バルレフ公安相は、やや含みのある弁明をしている。
「裁判官の承認なしに、警察が盗聴器やハッキング装置を使用することはありませんでした」というのが公安相の用いた言い方である。
イスラエルの治安部隊は、裁判官の承認を受ければ、イスラエル国内で広範な監視活動を行うことができる権限を持っている。
カルカリストの報道を受け、法務省と国家会計検査官事務所は共に報告書を調査していると述べた。
法務省の一部門であるプライバシー保護庁は、ペガサスをイスラエル国民の監視に使用することは「深刻なプライバシー侵害」にあたるとし、調査の実施を発表した。
マタニヤフ・エングルマン氏は18日、現在行っている警察による監視技術の使用に関する調査の対象を、今回のペガサス疑惑にも拡大すると述べた。
特に、捜査における監視ツールの「有用性」と「プライバシー権の侵害」との間の「バランス」について掘り下げていくとのことだ。
やはりネタニヤフ前首相の政敵であるギドン・サール法務大臣は、19日に議会で、今回の疑惑に関する調査を全面的に支持すると述べた。
「カルカリストの記事の主張と警察の声明内容には大きな違いがあります」とサール法相はイスラエル議会の法律委員会で指摘した。
「独立した機関である会計検査院がこの問題の調査に乗り出したのは好ましいことです」と法相は述べた。
「法務省は、裁判所の命令なしで行われているいかなる活動についても関知していません。そうした活動については調査を行い、国民にその結果を知ってもらうべきでしょう。」
イスラエル製の防衛産業関連の製品輸出をすべて承認審査しているイスラエルの国防省も、ペガサスの海外での販売について調査を開始した。
AFP