
ダオウド・クタブ
アンマン: イスラエルの企業が関与するハッキングで、数千台の携帯電話が被害を受けた事件に関連し、ヨルダンの報道関係者、活動家、王室関係者などが所有する計200台ほどの携帯電話が標的になっていたことが、現地の通信社によって明らかになった。
アンモンニュースの発行者であるサミール・ヒアリ氏は、この件を報道していたロイターの記者から、情報漏洩ついて注意喚起されたという。
この報道で、弁護士のHala Ahed氏、ソーシャルメディアのインフルエンサーDeema Amad氏、Mustafa Hamarneh上院議員ほか複数のヨルダン人に対し、セキュリティ侵害の可能性があるというメッセージがAppleから送信されていたことが明らかになった。
同氏は、「情報を収集したところ、王室関係者やオリンピック委員会のメンバー、活動家など、200人弱がハッキングの被害に遭っていたことが判明した。WhatsAppのコンテンツやメッセージ、写真、動画、メールを含む、携帯電話の全ての情報が取得されていた」と言う。
アモンニュースの記者Ahmad Hiari氏は、米国の情報筋の言葉を引用し、「(携帯電話の)ハッキングに関して、テルアビブに協力した地元の関係者がいるのかどうかはまだ不明だ」と述べた。
Arab Reporters for Investigative Journalismの共同設立者で元取締役のRana Sabbagh氏は、アラブニュースの取材で、自分の携帯電話がハッキングされていたことを突き止めた経緯を語った。
「Appleからメッセージを受け取ったという友人の話を聞き、……自分の携帯電話2台をOrganized Crime and Corruption Reporting Project(OCCPR)のデータセキュリティの専門家に送り、調べてもらうことにしました」。
現在OCCPRの主任編集委員を務めるSabbagh氏は、科学捜査での分析により、 2台の携帯電話が被害を受けていることが判明したと述べた。
「2020年7月と2021年4月にハッキングされていたことがわかりました。同じ組織の別の同僚は、2021年9月に携帯電話をハッキングされていたことを突き止めました」と同氏は述べた。
ヨルダンのベテラン記者で、ヨルダン・タイムズの元編集長でもあるSabbagh氏によると、日付が重要な意味を持つという。なぜならこの日付は、パンドラ文書が公開される直前だからだ。
「とても気がかりです……自分たちが常に監視されているのはわかっていますが、私の情報筋が危害を受けるのではないかと心配です。
「自分の生活全てが大きく侵害されていると知り、不安に襲われました。書類も写真も動画も、全て抜き取られました。国内からの攻撃なのか、海外からの攻撃なのか、わかりません」
Hiari氏は、ハッキングされた情報がどのように使われるのか心配だという。
「常に私たちの電話を盗聴しようとする者がいることはわかっています。これは非人道的な違法行為ですが、起きてしまうものです。情報がどのように使われるのかが心配です」
「脅迫される人が出ないか心配です。国際的な保護が必要です」と同氏は付け加えた。
ヨルダンの携帯電話のハッキングに関与した者が地元にいると考えるかどうかについては、Hiari氏もSabbagh氏も言及を控えた。
Hiari氏は、「地元の関係者についての情報は持っていませんが、海外の情報筋はヨルダンの携帯電話に使用されたソフトウェアは、海外から購入され、使用されたと断言した」と述べた。
イスラエル在住のパレスチナ人弁護士Botrus Mansour氏は、アラブニュースの取材に対し、イスラエルが開発したソフトウェア「ペガサス」が、イスラエルのセキュリティ・エコシステムの一部を形成していることを明らかにした。
同氏によると、このシステムは、パレスチナ人やその他世界中の人々に対してのみならず、法的な令状も容疑もなしに省庁の長官や市長を含むイスラエル人の携帯電話をハッキングするのにも使われていたという。
「占領によって、イスラエル国内のイスラエル人の道徳が堕落した。占領地で起こることはイスラエル国内に反映され、イスラエルの民主主義的価値観が大きく蝕まれ、イスラエル国民にまで及んだ。前首相が裁判を逃れようとしたことで、この事態に拍車がかかった」
ハイファを拠点に活動するイスラエルの政治評論家Wadie Abu Nassar氏は、アラブニュースに対し、イスラエルは今までにも道徳上で一線を超えたことがあると述べた。
「スパイ活動は、イスラエルで古くから行われてきた。一線を超えたのはとうの昔だが、それが今明らかになった。しかも、あらゆる人に対して、組織的に行われた兆候 を示している」