

エミナ·オスマンジコヴィッチ
アブダビ:多くの誇りと共に、コソボは独立14周年を迎える。同国はヨーロッパで最も新しく、平均年齢も一番若い国である。2008年2月17日、コソボがセルビアからの独立を宣言して以来、100以上の国がコソボを承認している。
政権交代は多いが、コソボは非政府機関や市民社会グループの強いネットワークを持つ、強固な民主主義国家であり続けている。また、レジリエンス(回復力)のある経済、有能なリーダーシップ、そしてEU·米国·湾岸諸国との優れた関係を有している。
しかし、課題は多い。コソボが地域や欧州·欧州大西洋の各機関に正式に加盟し、統合することは、現在進行中の課題である。隣国のセルビアやボスニア·ヘルツェゴビナとの関係も、正常化にはほど遠い。ロシア、中国、そしてコソボの国家承認をしていないEU加盟国5カ国については、いまだに態度を変える気配はない。
コソボにとって幸運なのは、同国における2人のリーダーの存在である。アルビン·クルティ首相とビヨサ·オスマニ大統領は、汚職問題の追求で政治的経験を積んだ。2021年3月下旬以降、コソボの政治は、クルティ氏とオスマニ氏がそれぞれ立ち上げた党、「ヴェテヴェンドシェ」と「グクソ」によって、共同で形成されてきた。
クルティ氏は6人目の首相であり、オズマニ氏は5人目の、選挙で選ばれた国家元首である。2人とも紛争中の汚点を持たない政治家と見られている。国に対する明確なビジョンを持ち、コソボの同盟国や敵対国に関わる問題については、臆することなく自分の立場を表明している。
彼らはまた、目前の課題に対して幻想を抱いていない。地域的にも内的にも、コソボは大きな課題に直面している。国内の問題に優先的に取り組まなければ、コソボの人々が強く望んでいる、EU加盟の可能性を高め、自立するという夢は叶わない。
その最たるものが、政府と民間企業の両方に蔓延する汚職である。投資家は、汚職が蔓延し、あらゆるレベルで賄賂が必要になる国は避ける。汚職が取り除かれていると認識するだけで、国外からの投資は増える。
国連開発計画(UNDP)が2021年に発表したレポートによると、コソボのセルビア系住民は、失業、個人の安全、都市開発を上位3つの懸念事項として挙げている。その他の民族では、貧困と電気の安定供給が当面の最優先事項である。
明るい面もある。国内のすべての民族が、政府の立法、行政、司法の各機関がより効率的になり、腐敗が減ったことに同意している。
また、依然として高いレベルにある貧困や失業率、国内外からの投資不足、ビジネス環境の問題などを考えると、経済発展を加速させる必要がある。
コソボ政府のもうひとつの国内課題として、民族、宗教、政治的信条、志向に左右されることなく、人権を守ることが挙げられる。理論的にも実践的にも、すべての市民を法の下で平等に扱うことが、コソボのEU加盟の可能性を高めることは間違いない。
コソボの世俗主義的な民主主義の基盤は、ポーランドやハンガリーのようなEU諸国の権威主義的な指導者の脅威を考慮すると、簡単に維持できるものではない。市民の問題から宗教を排除することは、自由で公正な選挙、報道や集会の自由、政治的影響を受けない司法を守ることと同様に、重要である。
EU加盟は、コソボの社会的、政治的、経済的状況を変革するための、最良の触媒となり得る。しかし、これまでの道のりは予想以上に険しいものであった。
2016年、コソボはEUとの「安定化·連合協定」に署名し、これは欧州統合に向けた歴史の中で最も重要なマイルストーンとなった。その2年後、欧州委員会は、コソボとモンテネグロ、北マケドニア、アルバニア、ボスニア·ヘルツェゴビナ、セルビアの5つの隣国を含む、EUの2025年以降の拡大計画を発表した。
2020年、コソボはセルビアとボスニア·ヘルツェゴビナからの輸入品に対する100%の関税を解除した。これにより、セルビア·ボスニアとの貿易が回復し、EUが促進している両国の対話が再開された。しかし、コソボのEU加盟を阻む大きな問題は、セルビアがコソボの独立を認めないことである。
コソボを自国の領土とみなしているセルビアは、コソボの独立承認を撤回するよう各国に働きかけ続けている。しかし、2020年にNATOに加盟したマケドニア(現·北マケドニア共和国)とモンテネグロの2つの旧ユーゴスラビア共和国は、そうした圧力に抵抗している。
セルビアとの関係正常化の主な障害の1つは、コソボ在住のセルビア人の地位である。セルビアの人口の84.5%は東方正教会のキリスト教徒であるのに対し、コソボの人口の95.6%はイスラム教徒で、そのほとんどがアルバニア系民族である。
過去20年間、コソボ北部のミトロビツァは、北部のセルビア人と南部のアルバニア系民族により分断されている。
ミトロビツァをはじめとする北部のセルビア人は、コソボの独立をかたくなに拒んできた。1999年以前のミトロビツァは、アルバニア人とセルビア人が混在する地域であった。しかし、紛争後の数年間で、アルバニア人とセルビア人の間の溝が深まり、対話の余地がなくなってしまった。
NATOが危うい平和を支える一方で、この町を流れるイバル川が2つのコミュニティを事実上分断している。しかし、EUが仲介する、公式·非公式含めた話し合いは、長年にわたってほとんど進展していない。
クルティ首相は、コソボが3つの目標に取り組む間、西バルカンにおける、ワシントンとブリュッセルの協調を提案している。コソボは、法の支配の強化、NATO加盟による安全保障の実現、西バルカン諸国のEU加盟による欧州統合を目指している。
また、中東には、サウジアラビアやUAEを筆頭に、コソボの独立と発展を約束してくれる伝統的なパートナーが存在する。サウジアラビアは、コソボの独立をいち早く承認し、国際刑事裁判所でもコソボを支持した。2009年の、イスラム協力機構(OIC)によるコソボの主権承認を強く後押しした国のひとつである。
コソボ紛争から1年後、サウジアラビアは少なくとも1200万SR(320万ドル)を投じて、家屋、学校、モスクの再建を支援した。2020年、コソボとサウジアラビアは、二重課税の回避に関する協定の共同実施を開始した。
2020年1月にリヤドで行われた式典では、コソボのベテラン外交官であるルージム·ムジェク氏が信任状を提出した大使たちの中に含まれていた。サウジアラビアのサルマン国王は、二国間関係の強化と発展のために、各国と協力していく意思を強調した。
コソボにおける、新型コロナウイルス感染症との戦いの際には、ムスリム世界連盟(MWL)は貴重な人道支援を行った。昨年、クルティ首相は、あらゆる国際的な場でコソボを支援し、苦痛を和らげるための援助を提供してくれた、王国の指導者たちに感謝の意を表明している。
最近行われた両国の会談では、経済·貿易·観光·投資·教育·保健·インフラなどの分野における協力関係を強化することに重点が置かれた。
UAEは、1999年にNATOのコソボ治安維持部隊(KFOR)に参加しした。そして、アルバニア国境で逃げ惑う数千人の難民に食事を提供するという、援助活動を行った。また、赤新月社と協力してキャンプを建設し、ピーク時には1日1万5000人もの人々に食事を提供した。
コソボでは、2つの作戦でUAEの部隊約1500人が活動した。1つは1999年春から2001年末までKFORに参加したもの。もう1つは1999年3月から6月末まで国境を越えたアルバニアで行われた援助活動「ホワイトハンズ」である。
湾岸諸国と西バルカン諸国との緊密な関係は、コソボと、そのすべての近隣諸国との関係の正常化を促している。それは、この地域の人的·経済的な潜在力を最大限に引き出すことにつながる。
コソボとアラブ諸国との関係が、人道支援や復興支援を中心としたものから、政治·経済·安全保障面での協力関係へと変わりつつある。このことは、セルビアとの関係にも良い影響を与えていく可能性がある。