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クルティ首相:コソボを認めないムスリムは大きな過ちを犯している

プリシュティナのオフィスにて、アルビン・クルティ首相は、コソボは若年層のイスラム教徒が多いため、特にサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国とは自然な同盟感がある。と述べた (アラブニュース写真/ジアド・アラファージ)
プリシュティナのオフィスにて、アルビン・クルティ首相は、コソボは若年層のイスラム教徒が多いため、特にサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国とは自然な同盟感がある。と述べた (アラブニュース写真/ジアド・アラファージ)
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17 Feb 2022 06:02:19 GMT9
17 Feb 2022 06:02:19 GMT9
  • 「ロシア・ウクライナのエスカレーションはセルビアをより攻撃的にするかもしれないが、我々は恐れていない」
  • NATOとアメリカはここに留まり、我々は将来のいかなる紛争にも勝利を収めるだろう
  • フーシ派によるサウジアラビア、UAEへの攻撃は「テロ行為」である

ファイサル・J・アッバス編集長

プリシュティナ:14年前、コソボ共和国は独立を宣言し、当時、世界で最も新しい国となった。独立から15年目を迎えた今、同国は主な同盟国である米国の支援を受け、国連が定めたNATOの駐留に守られながら、いくつかの課題と明確な危険に直面している。

世界最大級の影響力を持つ国々が支援しているにもかかわらず、コソボはいまだに国連に加盟していいない。国連加盟国193カ国のうち、100カ国以下にしか認められていないのだ。

同様に、ヨーロッパの中心部に位置し、欧州連合(EU)から多大な支援を受けているにもかかわらず、いまだにEUに加盟していない。コソボ人は、いまだにヨーロッパ大陸をビザなしで旅行することができない。

コソボにおける苦悩の原因の多くは、北の隣国、セルビアとの深く、長期にわたる亀裂にある。両国は旧ユーゴスラビアの一部であり、その崩壊後、1990年代にバルカン半島で起きた血なまぐさい10年間の一部である。

セルビアはコソボを承認せず、NATOの介入によってのみ終結した、1998年から1999年にかけての残虐行為に対する謝罪もしていない。もちろん、このような状況ではEUに加盟することはできない。EU加盟国のうち5カ国がコソボを承認していない。

これまでのコソボの指導者たちは、セルビアとの対話を試みてきた。しかし、2021年3月に就任したアルビン・クルティ現首相は、ベオグラードとの対話は優先事項ではないと繰り返し示唆している。

同氏はプリシュティナのオフィスで、アラブニュースのインタビューに次のように答えている。「我々はセルビアとの対話を軽視しているのではない。しかし、それを最優先事項にすることはできない。私は政権発足時に、雇用・司法・新型コロナウイルス対策の三つが優先事項だと表明している。セルビアとの対話は、4番目となるかもしれない」

「この対話は、コソボとセルビアの関係の状況についての対話であり、私たちは建設的かつ創造的な方法でさまざまな提案をしている。コソボとセルビアはお互いを認めていない。つまり、相互承認こそが解決策となる」

しかし、両国の関係正常化やEU加盟の可能性をさらに複雑にしている要素も存在する。そもそも、過去の暗い影がある。クルティ氏は、当選から数ヶ月後、セルビアの虐殺を国際法廷に訴える計画を復活させること語った。また、コソボ国内の少数派であるセルビア系住民に、セルビアの国民投票に参加するよう求める欧米の一部の訴えを拒否している。セルビアは、これを違憲としている。

また、コソボの政府関係者は、セルビアの政府関係者たちは、ヨーロッパではなくロシアの軌道に乗ることをはるかに望んでいる、と露骨に非難している。

「セルビアはモスクワと文化的、歴史的、軍事的に密接な関係がある」とクルティ氏は言う。ロシアとウクライナの間で戦争が勃発した場合、ベオグラードとモスクワの緊密な関係が、自国にどのような影響を与えるかという質問に、クルティ氏はこう答えた。「セルビアがより攻撃的になる可能性がある。コソボは状況を注意深く見守っているが、我々は恐れていない」

とはいえ、最近のアメリカの外交政策方針に対する批判者の中には、コソボには懸念すべきいくつかの理由があると考える者もいる。近年、多くの同盟国や友人に対し、ワシントンもNATOも、頼れる友人であることを証明していないからだ。

ウクライナにおいて、オバマ前大統領のいわゆるレッドラインは、2014年のロシアによるクリミア占領をほとんど阻止できなかった。さらに最近では、バイデン現政権が掲げる、「永遠の戦争」の終結に向けたピボットの一環としてのアフガニスタン撤退がある。アフガニスタンに民主主義をもたらし、タリバンの支配を終わらせるための戦争をワシントンが始めてから20年後、同国を、その過激派グループに返還することに合意したのだ。世界は、カブール空港から必死に脱出しようとするアフガニスタン人の痛ましい映像を目にした。

しかし、クルティ氏は、NATOはコソボに留まるために存在しているのであり、さらに、いざとなればコソボ人は自分の身を守ることができるという強い信念を持っている。「コソボには偉大な意志と勇気を持った素晴らしい人々がいると考えている。一方で、私たちの防衛・治安部隊やNATO、特に米国はここに留まると考えている」と同氏は語った。「そして、将来発生するかもしれない、しかし私たちが望んでいない、いかなる種類の危機においても、私たちは勝利すると確信している」

実際に、クルティ氏は自国に対するNATOのコミットメントを信頼しており、コソボがEU加盟を果たすよりもずっと早く、NATOに正式加盟する可能性が高いと考えている。

「これには二つの理由がある。まず、EUでは27カ国中5カ国が非承認国であるのに対し、NATOでは30カ国中4カ国が非承認国だ。つまり、NATOではEUよりも非承認国が一つ少ないのだ」

「それに加えて、NATOに加盟するために満たさなければならない基準や規格は、EUに加盟するためのものほど複雑ではない。だから、まずNATOに加盟し、次にEUに加盟するというのが現実的だ」と述べた。

さらに、NATOは加盟国に対し、国連やEUの加盟国であることを要求していないため、コソボがスペイン、ギリシャ、ルーマニア、スロバキアを説得することができれば、首相の構想は数年後には現実のものとなるかもしれない、との観測もある。

 イスラム世界との関係 

EU加盟国における非承認国は、自国での分離主義的な動きを助長したくない、という立場を主張するかもしれない。現状では、イスラム協力機構(OIC)加盟国のうち、イスラム教徒が多いコソボを承認しているのは半数強に過ぎないというのは注目に値する。認めているのは、サウジアラビアやUAEなどの、穏健派のイスラム諸国が中心である。

しかし、コソボの首相は、非承認国である同じイスラム教国、特にイランのようなイスラム教の大国をどう思っているのだろうか。

「ムスリム(イスラム教徒)が多い国の一部がコソボを承認していないのは、大きな間違いだと考えている。彼らはセルビアから、誤った情報を流されているのだと思う。彼らの中には、ロシア連邦と密接な関係を保っているために、我々を承認していないところもある」

「しかし、長期的な平和と持続可能な安全保障のために、また、人々の自由と自決の権利を認めるために、世界のすべての国にコソボの独立を認めることを強く求めたい。ある意味で、コソボの独立を認めない者は、意図する、しないにかかわらず、コソボで大量虐殺を行った民兵の時代から、セルビアを支援することになるのだ」

もう一つの逆説的な展開は、パレスチナ自治政府(PA)による非承認だ。70年もの間イスラエルによる不法占拠に抗議し、戦ってきた人々の代表であれば、真っ先にコソボを承認すると考えるだろう。

しかし、現在のところ、PAはコソボを承認していない。その指導者であった、故ヤーセル・アラファト氏は、世紀の変わり目に、セルビアの指導者であった故スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領と密接な関係を持ち、味方していたことで批判されていた。

一方、イスラエルとコソボは昨年、正式に互いを承認したばかりだが、テルアビブのコソボに対する政策は長い間、非攻撃的であった。トランプ前米大統領の下で働きかけられた承認以前から、イスラエルはコソボのIMFや世界銀行への加盟を支援していた。

しかし、昨年、コソボがエルサレムをイスラエルの首都と認定すると発表したことは、多くのイスラム諸国に衝撃を与えた。エルサレムは非常に繊細な問題を抱えている。

では、現在コソボでは、PAやその主張に対してどのような感情を抱いているのだろうか。「我々がパレスチナの人々がどれだけ苦しんだかを知っているように、彼らもまた、セルビアの大量虐殺を生き延びたコソボのアルバニア人の苦しみを無視してはいけない」とクルティ氏は言う。

エルサレムをイスラエルの首都と認めるというトランプ時代の決定は、コソボを認めないというパレスチナの公式見解に対する報復だったのだろうか。首相はその関連性を否定する。

「我々のスタンスと、パレスチナの人々やその主張とは何の関係もない。我々はパレスチナ、PA、そしてパレスチナ人と良好な関係を築きたいと思っている」と述べた。

昨年、コソボはいくつかのアラブ・イスラム諸国とともに、イランに支援されたレバノンの民兵組織ヒズボラをテロリスト集団に指定した。その背景を聞かれたクルティ氏は「テロリストや暴力的過激派を認識することは難しいことではない」と答えた。

「我々は、自分たちの国を築き、将来の世代を導くための信念や価値観に沿って、コソボにおいて、このような決断をした。そして、暴力的過激主義とテロリストに対抗する世界的な連合の一員となったのだ」

「よって、我々はヒズボラだけではなく、ダーイシュのすべての攻撃と活動を非難する」

最近のフーシ派によるアブダビ空港への攻撃や、サウジアラビアの人口密集地を狙った一連の攻撃について聞かれたクルティ氏は、その映像を見て衝撃を受けたと述べた。そして、これらの事件は決して容認できないものであると付け加えた。

彼は、これらの民間人に対する攻撃に関して、フーシ派をテロリストグループに指定すべきだと同意しているのだろうか?「そのとおりだ。民間人への攻撃はすべてテロ行為だと考える」と彼は語った。

コソボはボスニアと同様、自国のテロ対策に問題を抱えており、数年前には多くの国民がダーイシュに参加するために国を離れた。しかし、コソボの首相は、過激なイデオロギーを容認する余地はないと考えている。

「不幸にも、コソボからこれらの絶対的戦争に参加した者が数百人いる。中には戻ってこなかった者もいる。戻ってきた者に対しては、リハビリテーションプログラムを行っている。また、刑務所で服役している者もいる」とクルティ氏は言う。

「特定の個人が操られ、感化されることもあった。彼らは教育を受けておらず、失業や、社会的に悲惨な状況に置かれていることが想像できる。しかし、これらのことは、暴力的な過激主義を厳しく非難しない理由には、決してならない」

「クルティノミクス」とサウジ・ビジョン2030

インタビューの冒頭でクルティ氏は、サウジアラビアで2月22日を新たな「建国記念日(Founding Day)」することが発表されたことを受けて、サウジアラビアの指導者と国民を祝福した。

インタビューを通して、彼は、サウジアラビアで起きている出来事について、最新の情報を得ようとしていた。

「コソボの人々だけでなく、バルカン半島やヨーロッパの人々も、サウジアラビアの改革や進歩についてもっと知るべきだ。私たちは、サウジアラビアとの協力関係を強化したいと考えている。サウジアラビアは、文化や歴史だけでなく、天然資源や経済発展においても非常に豊かな国だ」

クルティ氏が言及した改革とは、もちろん、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が掲げる「ビジョン2030」の下で行われているものである。その内容は、石油依存から脱却して経済を多角化し、人口の大半を占めるサウジの若者に雇用を創出することや、これまで想像もできなかった社会的自由や宗教改革、そして徹底した汚職撲滅などがある。

一方、コソボでは、若者や女性に機会を与える「雇用と正義」を掲げ、汚職撲滅を公約に掲げたクルティ氏率いる政党が昨年の選挙で勝利した。

彼は、両国の類似性とさらなる協力の機会を見出している。リヤドに対しては、この機会を利用してコソボの新しい環境に大きな投資をしてほしいと呼びかけている。

「私たちは政府をあげて汚職と戦っている。汚職は許されない。また、経済も成長させている。例えば、昨年は、前年に比べ輸出量が3分の2増加した。私たちの商品の輸出だ。予算収入も3分の1増加した」

「同様に、企業の売上高も増加し、海外からの直接投資も50%以上増加している。これらの数字は、コソボが進歩していることを示している。そして、さらなる進歩のための最良の方法は、すでにある進歩に投資することである」

では、「クルティノミクス」は具体的にどのように機能するのだろうか。改革を主導している当事者によると、人々に希望と、プログラムを信じる理由を与えることが重要だという。「人々が希望を持ち、かつ経済が成長していれば、貯蓄よりも消費をするようになる。なぜなら、将来的に雨が降ることが予想される場合、使うよりも貯める方がよいからだ。そして、政府が腐敗していないことがわかれば、人々は税金やその他の貢献をする気になる。だからこそ、コソボの予算収入である税収は、財政政策を変えずに3分の1も増加したのだ」

「そしてついに、税務行政が以前よりも規律を持ち始めた。つまり、汚職や犯罪との戦いは、国民の共通の価値観に対してだけではなく、経済の健全性にも貢献しているのだ。一方、膨大な数のディアスポラ(国外在住の自国民)、特にドイツ語圏のヨーロッパに集中している彼らは、以前よりもさらに多くの送金を本国に行っている」

「また、商業裁判所も設立した。このようにして、ビジネスに適した環境を整えていきたいと考えている。コソボは通貨がユーロで、人口も非常に若い。古くからの民族であるにもかかわらず、平均年齢は30歳だ。そして、バルカン半島の中心に位置し、ヨーロッパの市場にも近い。そして同時に、コソボは決して友人を忘れない国であり、世界の平和を愛するすべての国と良好な関係を築きたいと考えている」

汚職との戦いについて、クルティ氏は政府の課題は山積みだと認めている。「コソボの汚職は以前から多く、完全に根絶したわけではない。しかし、それはトップに集中していた。そのため、トリクルダウン効果はなかった。民主的な選挙による政権交代で、このように上層部に集中していた腐敗を、まさに上層部で止めたのだ。これが第一のポイントだ」。

「第二のポイントは、単に腐敗を避けるだけでは不十分で、腐敗しない人間になるべきだということだ。私たちの政府は、高度な教育を受け、優れた専門家による閣僚たちで構成されている。政治で金持ちになろうと思っている人間はいないと考えている。私たちは、友人や活動家たちにこう言っている。大金持ちになりたい人は、民間企業で自分の運とスキルを試して欲しい、国家機関の公共サービスでは、奉仕をすることになっていると」

「つまり、能力と知識の限りを尽くして奉仕することが、私たちの職務なのだ」

では、その先にある機会とは何であろうか?クルティは氏、ICT(情報通信技術)分野、木材や金属の加工、そして農業や再生可能エネルギーを挙げている。首相として、これらの分野の推進に積極的に取り組んでいきたいと語った。

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