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アナリストが警告 アサド政権による援助の私物化を止めない限り、驚異は地域全体に及ぶ

専門家によると、シリアのバッシャール・アサド大統領の政権は、シリア国民の苦しみを和らげることを目的とした何十億ドルもの外国からの援助を、永続的な「利益センター」に変えてしまった。(AP/ファイル・写真)
専門家によると、シリアのバッシャール・アサド大統領の政権は、シリア国民の苦しみを和らげることを目的とした何十億ドルもの外国からの援助を、永続的な「利益センター」に変えてしまった。(AP/ファイル・写真)
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19 Feb 2022 11:02:18 GMT9
19 Feb 2022 11:02:18 GMT9
  • シリアの政権は、何十億ドルもの国際的な援助を「利益センター」として利用する一方で、何百万人もの苦しんでいる国民への援助を拒否していると、新たに報告書が発表された
  • 欧米の援助者は、資金がどう使われているのか、誰が利益を得ているのかに注意を払わないと、この地域は深刻な事態に直面する可能性があると警告している

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:11年に及ぶ内戦の中で、シリア当局は国際的な援助を巧みに操ることに長けてきたと、ワシントンの独立系シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が新たに発表した報告書は述べている。

報告書によると、アサド政権は、シリア国民の苦しみを和らげるための数十億ドルの海外援助を永続的な「利益センター」に変えてしまったという。資金は政権支持者に利益をあたえ、反体制派を弾圧するために利用されている。

「シリアにおける救援活動の正常化」と題された70ページの報告書では、シリアへの国際援助で利益を得ている人々は、そもそも人道的危機を生み出した人々であると述べられている。報告書は、シリア紛争に関わる130人の国連職員、援助関係者、アナリスト、外交官、現地調査員、調停に取り組む関係者へのインタビューに基づき執筆された。

彼らによると、アサド政権は、ビザの承認を含め、さまざまな方法で援助機関への締め付けを強化しているという。支配地域では自らの利益のために援助を流用し、それ以外の地域では国際的なアクセスを制限している。

また、シリアの援助スタッフへの脅しや、拷問、恣意(しい)的な拘束も行われているという。また、戦争の戦術として、反政府勢力が支配する地域に住む何百万人ものシリア人に対し、食料や清潔な水などの基本的な物資やサービスを提供していない、と報告書は付け加えている。

このような状況を打開できなければ、地域全体が絶望のふちに追いやられる可能性があるとしている。欧米の援助国政府に対しては、虐待の連鎖を断ち切ること、残された時間は少なく、その早急な実行を求めている。

報告書によると、シリアは今、転換期にある。アサド政権の存続が暗黙の了解となっている中で、脆弱な立場にある人々の数が増加している。人道支援の改革も行われず、避難民を含む国内の無数の問題にも対処することもないまま、政権の盟主であるロシアを中心に、国家の再構築が進められている。

援助者たちは、政権が、さらに多くの国際的な資金を戦争の武器として使うことを恐れている。

本報告書の著者、ナターシャ・ホール氏は、アラブニュースの取材に対し次のように述べた。「長い間、外交は停滞しています。援助は、基本的に欧米政府による封じ込め戦略として使われてきました。第二次世界大戦以降、世界で最も深刻な人道・難民危機のひとつであるこの問題に対して、自分たちも何かしている、と得意になるための道具のようなものです」

「支援の必要性が高まり、紛争の根本的な解決には程遠い状況の中で、国際社会が援助と外交こそがシリアの進むべき道であると判断したとします。であれば、私たちはそれを本質的に、メインコースとして扱わなければなりません」と彼女は語る。

内戦が始まって以来、EU、米国、カナダといった西側の援助国は、シリアに400億ドル以上の援助を行ってきた。さらに、何十億ドルもの援助が続けられている。しかし、11年間にわたる多額の支援にもかかわらず、シリアの各地域では苦しみが続いており、何百万人もの人々の生活は、ますます絶望的な状況になっている。

現在、1200万人以上のシリア人が食事の確保に苦労しており、その数は2020年から2021年にかけて50%増加しているという。水不足と長期にわたる干ばつにより、小麦の収穫量が減り、それが何百万人もの人々の生活に壊滅的な影響をあたえ、国全体の食糧不安を悪化させている。

政府の支配下にある北東部では、人々は戦闘から逃れるためではなく、貧困と飢えから逃れるために避難民キャンプに移動している。子供たちはますます発育不良に悩まされている。ある非政府組織のコーディネーターによると、スタッフからは、驚くべき栄養失調の数値が報告されているという。

「もし明日、国境が開かれたら、何百万人もの人々が、絶え間ない不安、飢え、壊滅的な干ばつから逃れるため、国境を越えることになるだろう」と報告書は警告している。

アサド政権は、外国の援助を操作しているという非難を受けてきた長い歴史がある。政権は、パレスチナやイラクの難民問題を監督していた当時から、国際的なNGOや国連機関と協力することに慣れている。

2011年に民主化運動が始まると、「自分たちのレッドラインを構築する方法に長けた政権は、すぐに、シリア・アラブ赤新月社(SARC)がすべての援助の主要な実施者、提供者になるようにしました」とホール氏は言う。

「彼らはまた、資金の操作や流用、援助物資の運搬の妨げになるようなことを口にした国際的な援助者を脅し、協力させ、監視しました。協力しない者はペルソナ・ノン・グラータ、つまり好ましからざる人物として、国から追い出しました。このようにして、援助組織を実質的にコントロールすることを可能にしたのです。しかし、今日ではもう少し狡猾になっています」

ホール氏によると、政権は反体制派が支配する地域を意図的に飢えさせ、食料や命を救うための必需品を倉庫に放置、そして反体制派に属するNGOが援助物資を配布することを拒否しているという。

彼女は、欧米の援助国政府に対し、独立した監視体制を含む、協調的で包括的な情報に基づいたアプローチによって、虐待の連鎖を断ち切るよう求めた。これは援助国である欧米の政府だけが、「援助国だからこそ」できることだとホール氏は語る。シリアの政権は、「必要に応じて監視を妨害する」ことがあり、また、援助者に対する強制や殺害の脅威があるため、国連機関は援助を監視することができないという。

「援助が、実際に切実に必要としている人々を助けているかどうか、もし助けていないとしたら、誰を助けているのかを評価する時だと思います」と、シリア開放の話が続く中で、欧米のドナー各国が直面している課題について語った。

この問題への取り組みを怠ると、シリアだけでなく、より広い地域に影響を及ぼすことになると、ホール氏は付け加えた。自暴自棄になったシリア人がナゴルノ・カラバフやリビアで戦ったり、ダーイシュの戦闘員が形成されて活動したりする例は、すでに存在する。

「率直に言って、このような不安定な状況にダーイシュが加わると、いつでも『ブラックスワン現象』が起こる可能性があります」と彼女は付け加えた。これは、通常の状況で想定される範囲を超えた、深刻な結果をもたらす可能性のある予測不可能な出来事を指す言葉である。

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