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女性を科学分野に呼び込むさらなる取り組みが必要、と中東の優秀な女性たち

湾岸諸国は科学分野における女性への道を切り開いているがまだ道のりは長い、と専門家は話す。(AFP)
湾岸諸国は科学分野における女性への道を切り開いているがまだ道のりは長い、と専門家は話す。(AFP)
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05 Mar 2022 08:03:37 GMT9
05 Mar 2022 08:03:37 GMT9
 

カリーン・マレック

  • ドバイ万博イベントの受賞者たちは、女性が科学とテクノロジーに極めて重要な貢献をする、と語る
  • 湾岸諸国は道を切り開いているが、その他のアラブ諸国ではSTEM分野における女性への活躍の道のりは長い

カリーン・マレック

ドバイ:近年中東は発展を遂げているが、この地域全体の科学や工学の分野において女性は圧倒的に少なく、これを変えるためにさらなる取り組みが必要だと専門家は述べる。

2021年のユネスコ・サイエンス・レポートによると、世界の研究者のうち女性は33%しかいない。中東・北アフリカ地域では、博士課程レベルや科学分野のキャリアのスタートにおいては男女平等がほぼ達成されてきているが、分野間や国家間ではまだかなりの格差がある。

研究に携わる女性にとって、ガラスの天井は依然として現実であり、おそらく障害や障壁が原因で、キャリアを重ねるごとに女性の比率は低下していく。湾岸地域は女性のための道を切り開いているものの、女性がSTEM分野の労働人口の40%しか占めていないことを踏まえると、まだまだ道のりは長い。



 世界の研究者のうち、女性はわずか33%しかいない。(AFP)

カタール大学のヌーラ・アダム・モハメド氏は、この不均衡を変えるには、家庭や学校、大学、政府など、多くのグループや組織、社会分野の協力が必要だと考える。

「科学分野における女性の地位向上は、パブリックエンゲージメント活動を開催したり、研究公開日や後々研究でのボランティアに若い女の子たちを迎えたりすることにより、非常に早い段階、早ければ小学校からでも始めるべきです」と同氏は述べた。

彼女の研究は、糖尿病や心血管疾患を予防するための従来とは異なる治療ツールの開発であり、この地域の最大の健康課題の1つを解決する可能性がある。

モハメド氏は、先月「ロレアル-ユネスコ女性科学賞中東地域」で表彰されたアラブ女性14名のうちの一人だ。このイベントは、生命科学、物理科学、数学、コンピューターサイエンスの分野で優秀な女性の功績を称える、ドバイ万博主催の特別イベントである。

このプロジェクトは、1998年の開始以来、世界110以上の国と地域から3900人以上の研究者と122人の受賞者を表彰しているグローバルな取り組みの一環である。

今回の受賞者の一人、ニューヨーク大学アブダビ校のガーダ・ドゥシャク氏は、同イベントで表彰された湾岸協力会議地域出身の女性5名のうちの一人だ。

ドゥシャク氏は、まだアラブ女性が少ない科学分野に、若い世代が進むきっかけとなりたいと考えており、特に割合が平均以下である光工学や光学の分野に関心を持っていると語っている。



研究に携わる女性にとって、ガラスの天井は依然として現実だ。(AFP)

「革新的で画期的な科学のアイデアには、男女両方の才能が必要です」と同氏は話す。「科学における男女平等の達成は、リーダーシップへのバランスのとれた全体的なアプローチと、将来の世代の子供たちへのより良い教育を生みます」

ドゥシャク氏は、従来技術の速度、容量、精度を向上させるための光工学における新しい素材と構造に関するポスドク研究を評価された。このような研究は、健康、宇宙、モビリティ、セキュリティといった他の分野にも影響を与え、変革さえ起こす可能性があると同氏は述べている。

同イベントで表彰された同じくカタール大学のアリージ・イェヒャ氏は、女性が科学分野のキャリアに進むことを奨励するために、さらなる取り組みが必要だと考えていると述べた。なぜなら、女性の研究がもたらす利益は、科学界の枠をはるかに超えて広がる可能性があるからだ。

「女性は介護士など、社会的に重要な役割を担っています」と同氏は述べる。「科学分野でより多くの女性が働くことは、その社会的役割を通じて地域社会に影響を与えることができ、科学分野の女性はより豊かな社会への道を切り開くことができます」

イェヒャ氏の研究は、現在および将来のジェンダー政策をさらに評価するために、性格特性における男女格差の拡大を促す要因を特定することに重点を置いている。

同氏は性格と文化の関連性の発見について言及し、この種の調査は複雑で、厳密な科学的アプローチを必要とするが、このテーマに関する研究のほとんどは世界の他地域のものであり、この地域でこのギャップを埋めるべき時が来ている、と話した。



  1. ガーダ・ドゥシャク氏、ニューヨーク大学アブダビ校の研究者
  2. ハリマ・アル・ナクビ氏、アブダビのハリファ大学の学者
  3. ヘンド・アル・カデリ氏、ハーバード歯科医学校の講師
  4. ヌーラ・アダム・モハメド氏、カタール大学の研究者
  5. アリージ・イェヒャ氏、カタール大学の指導員

「これは、私たちの文化や個人の複雑性を十分に理解する妨げになるかもしれません」とイェヒャ氏は述べる。「若い世代に道を開くことは、これまでの知見を基に、私たちの文化や個人のアイデンティティについてより深く学ぶ良い機会となるでしょう」

ハリファ大学の学者であるハリマ・アル・ナクビ氏は、部族間結婚が伝統とされているUAEの小さな町の出身だ。彼女は、好奇心旺盛な子どもの頃、自分の住む地域に、主に遺伝に起因する珍しい病気に苦しむ人々がいることに気づいたことを覚えている、と話した。

後に彼女は、劣性疾患の有病率を高める、血族結婚や近親婚などの文化的慣習がある地域では、より珍しい病気が出現しやすいことを知った。

アル・ナクビ氏はこう話す。「大人になり、医用生体工学者になったとき、私は、自分の内発的な関心を、自分の社会と世界に影響を与える課題の解決に向けました」

「特に、自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たすアラブ人の免疫系を司る遺伝子の研究(免疫遺伝学)に知識と技術を注ぎ込みました」



カタール大学のヌーラ・アダム・モハメド氏は、「科学分野における女性の地位向上は、非常に早い段階から始めるべきです」と述べる。(AFP)

 



カタール大学のヌーラ・アダム・モハメド氏は、「科学分野における女性の地位向上は、非常に早い段階から始めるべきです」と述べる。(AFP)

アラブ民族をより良く取り込むために臓器移植システムを向上する方法に関する彼女の研究は、この地域にとって極めて重要だ。アラブ人に関するゲノムデータが乏しいため、標本不足地域の医療制度は、分子遺伝学的研究成果を臨床応用に結び付ける地域の能力に影響を及ぼす独自の課題に直面している。

「血縁関係のない臓器提供者は、地域のネットワークを通じて数百万人のボランティアから特定されています」とアル・ナクビ氏は話す。「しかし、このような国際的登録にアラブ人は貢献していません。私の研究は、このギャップを解決し、臓器や骨髄移植の提供者選択のための予備的な枠組みを確立することを目的としています」

現在UAEのエンジニアの半数は女性であることから、同氏は、国内で科学分野が変化しつつあり、かつて女性の前に立ちはだかった障壁は取り除かれ、男性優位の分野というイメージは時代遅れになった、と付け加えた。

 



ニューヨーク大学アブダビ校のガーダ・ドゥシャク氏は、科学分野に若い世代のアラブ女性が進むきっかけとなりたいと考えている、と話した。(AFP)

「科学、特に工学の分野で働くのは男性だけだという固定観念は変わりつつあります」とアル・ナクビ氏は言った。「科学では、研究はチームで行われます。どのようなチームにおいても、性別や専門分野の多様性はイノベーションを促進するため、特に重要です」

「UAEの工学部卒業生の半分以上が女性であるように、女性は以前から科学のテーマでその能力を発揮してきました」

クウェート出身でハーバード大学歯学部講師のヘンド・アル・カデリ氏も、より多くの女性を科学分野に参加させることが重要だと考えており、パンデミック時の個人的な体験で一層その意見が強まったと述べる。

「科学研究により多くの女性が参加することで、多様性が生まれ、研究がより効果的かつ正確になり、男性にも女性にも影響を与えることができます」と彼女は語る。

彼女の研究は、新型コロナウイルスやその他の炎症性疾患の早期診断と疾病管理のための非侵襲的ツールとしての口腔液の使用に関するものだ。新型コロナで父親を突然亡くしたことが研究を進めるきっかけとなったため、この研究は彼女にとって非常に個人的な意味を持つ。

「父を亡くしたショックから、免疫システムの仕組みや、なぜ症状が出ない人がいる一方で病院での治療が必要な人や亡くなる人がいるのかを理解したいと思うようになりました」とアル・カデリ氏は述べた。

「私は、唾液中バイオマーカーを研究した経験があり、知識を広げたいと思いました。そこで、新型コロナの新たな理解につながり、新たな予防法の開発につながるかもしれない、口腔内の免疫反応を研究することにしました。私の研究成果が、私の家族のような他の家族を助け、より多くの死を防ぐことができればと思います」


「科学、特に工学の分野で働くのは男性だけだという固定観念は変わりつつあります」と、ハリファ大学の学者であるハリマ・アル・ナクビ氏は言った。(シャッターストック)

糖尿病と心血管疾患を予防する治療ツールに関するモハメド氏の研究は、世界の糖尿病患者数が4億2,500万人に迫り、2045年には6億2,800万人を超えると予想されていることから、極めて重要なものになり得る。

同氏は、糖尿病の治療薬を送達するだけでなく、この地域で最も一般的な病気の一つである糖尿病に伴う心血管合併症を最小限に抑えることができるナノ医薬品の開発に取り組んでいる。

「この研究は、特に世界が標的化ドラッグデリバリーや個別化医療、幹細胞技術に移行する中で、国内外から注目を集めています」とモハメド氏は語った。

「私は、封入された薬剤の効果を高めることができる保護特性を持つナノキャリアを開発し、幹細胞技術を利用して、糖尿病とそれに伴う心血管合併症をよりよく再現したインビトロ細胞・組織モデルを開発したいと考えています」

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