
クリストファー・ハミル・スチュワート
ロンドン:ウクライナ侵攻は、欧州の政策立案や報道機関において、反アラブ・反イスラムの偏見を露呈させた。とはいえ、今もなお追い詰められ、拒絶され、立ち往生している何十万人もの難民や亡命者にとっては、このような偏見や差別が明らかになったことは驚きではないだろう。
その最も新しい事例、つまり『ダブルスタンダードの教科書的事例』はデンマークだ。同国の政治家が、当局がシリアやイランの難民の資産を差し押さえることを認めている法律から、ウクライナ難民を免除することができると示唆したのだ。
デンマークの社会民主党政権の移民担当報道官、ラスマス・ストックルンド氏は先週、デンマークの新聞エクストラ・ブラデットに、いわゆる「宝石法」は紛争から逃れてきたウクライナ人には適用されるべきではない、なぜなら彼らは「近隣地域」出身だからだ、と語ったのだ。
その後、ストックルンド氏はこう語っている。「宝石法は、安全な近隣地域を離れ、安全な国を経由して移動する場合のために作られている……しかし、それはウクライナ人には当てはまらない」
同氏はこの変更案について、次のように説明する。「ウクライナ難民に対するEUの対応と、シリア人、アフガニスタン人、イラク人、エリトリア人……数え上げればきりがないほどのEUの対応との間の、著しい対比を結晶化したものだ」
サンダーランド氏は、「ウクライナ人に向けられた共感と寛大さは、国籍、宗教、肌の色に関係なく、すべての難民にも及ぶべきである」と付け加えた。
アラブ・英国理解評議会のディレクター、クリス・ドイル氏も彼女と同じ懸念を抱き、次のように確信している。「デンマークの法律はそもそも間違っていた。それが誰に適用されるかは別として」
「だから、デンマークがウクライナ難民のためにこの法律を解除するならば、それはある意味で喜ばしいことだと私は考える」と彼はアラブニュースに語った。「しかし、多くの国で見られるように、ウクライナ難民の受け入れに対する反応や対処の仕方は、シリアやアフガニスタンなどからの難民に対するものとは全く異なる」
ドイル氏によると、これは、「各国が難民政策を練る方法であってはならない」とのことだ。
デンマークのロンドン大使館は、アラブニュースによるコメントの要請には応じていない。
火曜日の時点で、戦前の人口が約4000万人だったウクライナから、200万人以上が国外へ脱出している。ロシアの侵攻によって避難した人々の大半は、EUに流入している。
ポーランドはウクライナ危機の中で欧州の重要な代弁者となっており、2週間足らずで100万人以上という、最も多くの難民を受け入れている。
同様に、国連の発表によると月曜日の時点で、ハンガリー、チェコ共和国、スロバキアはそれぞれ少なくとも18万人、10万人、12万3千人に避難所を提供した。
ポーランド内相のマリウシュ・カミンスキー氏は先週、「ポーランドに安全な避難所を提供するために全力を尽くす」と語った。しかし、シリア内戦中、ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国はシリア難民の受け入れを実質的に拒否していたことには触れなかった。
同国はシリア人の保護を徹底的に拒否したため、欧州司法裁判所から「難民受け入れに関するEU全体の法律に従っていない」という叱責を受けている。スロバキアもまた、シリア危機の際はごく少数のキリスト教難民を受け入れたに過ぎない。
カミンスキー氏はまた、ほんの数カ月前、自国の政府が隣国ベラルーシとの間に3億8000万ドルをかけた壁を構築し、EUに亡命を求める何千人もの非ヨーロッパ系難民を阻止したことについても言及しなかった。
今ではウクライナの騒ぎの中でほとんど忘れられてしまったが、この国境危機の数ヶ月の間に19人もの難民が死亡し、ポーランド政府の、非ヨーロッパ系難民に対する敵意がはっきりと世界に示されたのである。
ドイル氏は言う。「地理的に近いということが、より多くの難民を受け入れることにつながるという議論もある。しかし、それば人種や民族などに基づく差別的な政策につながるものであってはならないことは確かだ」
「世界は見ている。世界は、ウクライナや発展途上国の紛争に適用されている、それぞれまったく異なる基準を目の当たりにしているのだ」
デンマークの法律改正案のニュースは、ウクライナ紛争とヨーロッパ以外の紛争や危機の報道をめぐり、オンラインやメディアにおいて多くの論争を引き起こした。
欧米のジャーナリストを中心としたウクライナ紛争報道におけるさりげない人種差別を物語る動画はツイッターで公開され、数百万回再生されている。
例えば、紛争の初期にキエフから生中継したCBSニュースの上級外国特派員、チャーリー・ダガタ氏はこう語っている。「ロシアが進軍してきたことで、計算がまったく変わってしまいました。何万人もの人々が都市から逃げ出そうとしています。さらに多くの人々が防空壕に身を隠しています」
「しかし、ここはイラクやアフガニスタンのように、失礼ながら何十年も紛争が続いているような場所ではありません。ここは比較的文明的で、比較的ヨーロッパ的な……この言葉も慎重に選ばなければなりませんが……都市で、誰もこんな想像はできません。誰もこうなることを望んでいないはずです」
彼は、この「比較的文明的で、比較的ヨーロッパ的」なという発言に対し、後に謝罪を表明した。しかし発言は広く非難を浴び、中東などの紛争を長年取材してきたアラブ人ジャーナリストからは、人種差別だとの非難が殺到した。
また、BBCの取材に招かれたゲストが、ウクライナ戦争について「青い目と金髪のヨーロッパ人が殺されているのを見て、とても感情的になりました」と語ったケースもある。
しかし、ドイル氏によると、このようなメディアの言説が反アラブ、反中東的な偏向を引き起こしているのではなく、むしろ「より広範で根底にある、人種差別の意識の反映」だという。
「ここには世論の問題があると考えている。極右や反移民、反難民の意見が増えるのは、以前から見てきたことだ」
「そしてそれは、今、私たちの多くが悟るようになったことを裏付けている。非ヨーロッパ諸国やイスラム教徒の多い国から来た人に対しては反移民だが、ウクライナのようなヨーロッパ諸国から来た人に対しては、それほど反移民ではない、ということだ」