
ハゼム・バルーシャ
ガザ市:新型コロナウイルスの流行で中断していたウムラ(小巡礼)のフライトをサウジアラビアが2年ぶりに再開したことで、ガザに拠点を置くハッジ(大巡礼)とウムラを取り扱う旅行代理店には通常の生活が戻ってきた。
イスラエルの封鎖により複雑な状況下で営業しなければならないとはいえ、宗教的な観光は、ガザにおいて巡礼を取り扱う旅行代理店の主要な柱である。200万人いるパレスチナ人の大半は、国際的な旅行や観光を禁じられている。
これらの企業は、パンデミック時に被った大きな損失を補うために、この分野の回復に期待している。
3月14日に出発した最初のウムラの旅では、600人の巡礼者がガザから出発し、エジプトとのラファ境界を通ってカイロ国際空港へ向かい、そこからメディナへ向かった。
前回、最後にガザからウムラの旅へ出発したのは、世界を停滞させ、生活の多くの側面を混乱させたパンデミックの発生前の2020年2月であった。
ガザの人々はウムラの便が戻ってきたことに喜びを表した。パンデミック前よりも価格が上がったにもかかわらず、多くの人々がシャバンとラマダンの時期に儀式を行うため、予約を急いだ。
数年前、イクラム・アル・アスマール氏はハッジを希望する予約リストに登録したが、ガザからの巡礼者のグループの中に入ることはできなかった。「あまりに長い間待っていたので、ウムラの巡礼に登録することにしたのです」と、彼女はアラブニュースに語った。
アル・アスマール氏の言葉は、彼女の強い思いと、巡礼のために何年もお金を貯めてきて、やっと旅ができたという圧倒的な喜びを表現するには十分ではないだろう。
イスラエルから15年もの間、多くの制限を受け、生活環境も悪化していることから、多くのガザ地区住民がウムラをきっかけに初めて旅に出る。
ムハンマド・ハマド氏は5年前にウムラを体験した。今回のラマダンの時期に妻と一緒に再び体験するつもりだ。「ラマダンのウムラには、特別な味わいと大きな報酬がある」と彼は言う。
ムハンマド氏は、カアバ神殿やメディナの話に影響された妻に、ウムラの儀式に同行することを約束していたが、パンデミックによって旅行ができなくなったのだという。
「私たちは、その時は巡礼の旅をしませんでした。なぜなら神は、ラマダンにウムラの巡礼を行という、この聖なる月がもたらす美しい精神的な感情や儀式を、私たちの最善の機会のために隠しておいてくれたからです」と彼は言う。
ハマド氏は、ガザ地区の人々の大半がウムラの巡礼を望んでおり、それを妨げているのは貧困と、人口の大半に蔓延する失業だと考えている。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の推計によると、ガザの人口約200万人のうち80%が難民で、生活の糧を救援物資に頼っている。
こうした状況にもかかわらず、ハッジ、ウムラ巡礼の旅行代理店によると、今シーズンのウムラ巡礼の出足は良好だという。
巡礼旅行を取り扱う代理店ドヨーフ・ラフマン社のオーナー、ムハンマド・ハムダン氏によると、サウジアラビアがガザからの巡礼者を制度上の検疫とその費用から免除することを決定し、費用が1270ヨルダン・ディナール(約1791ドル)から1150ヨルダン・ディナールに下がったことから、登録者が増加したとのことだ。
ハムダン氏によれば、ラマダンには出足が良くなり、ガザの企業が不況の危機を脱し、損失の「出血」を止めるのに役立つという。
「提供されるサービスや巡礼者が聖地で過ごす時間を考えると値段はリーズナブルだ。しかし、ガザの厳しい生活状況が、人々に高いコストを感じさせている」とハムダン氏は述べた。
ガザからのウムラ巡礼者は、往復ともにカイロ国際空港を利用する。ヨルダン川西岸地区からのウムラ巡礼者のように陸路を利用する選択肢がないため、費用に大きな開きが生じるのだ。