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トルコ、イラク北部のクルド人武装勢力に対し大規模作戦を開始

トルコとイラクの国境に近いハブールにて軍事演習を行うトルコ軍兵士たち(AFP/File)
トルコとイラクの国境に近いハブールにて軍事演習を行うトルコ軍兵士たち(AFP/File)
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19 Apr 2022 09:04:50 GMT9
19 Apr 2022 09:04:50 GMT9
  • アラブニュースの取材に答えたアナリストによると、国家主義的な有権者の観点から、今回の攻撃は国内政治に影響を与える可能性が高いという
  • 特殊部隊、エリートコマンド部隊が「クローロック作戦」に投入された

メネクセ・トキャイ

アンカラ:週明け、トルコはイラク北部のクルド人武装勢力に対し地上および空からの大規模な越境攻撃を開始した。

この作戦には迫撃砲、T129Bヘリ、ドローン、F-16戦闘機と共にトルコの特殊部隊およびエリートコマンド部隊が投入され、イラク北部のメティナ、ザップ、アヴァシン・バシャン地域においてクルド労働者党(PKK)を標的に攻撃が行われたと報じられている。

「クローロック作戦」と名付けられた今回の越境作戦が開始される前日、トルコのスレイマン・ソイル内務大臣は次のように述べている。「我々は米国および欧州の手からシリアとイラクを守り、平和をもたらす」

イスタンブールに拠点を置く国際関係アカデミーの科学委員会会員であるザイド・イスマイル氏によると、今回の作戦はニネヴェのジリカンにあるトルコの軍事基地に対するミサイル攻撃の増加、PKKがイラク北部シンジャールの深部へと勢力を拡大していることに関連したものだという。また、先日行われたトルコ政府とクルディスタン地域政府による政治的接触とも関連がある。

先日トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、エルビルにあるイラククルディスタン地域政府のマスルール・バルザニ首相と会談を行った。

専門家らは、シンジャールがPKKの代替本部になりつつあると指摘している。

「今回の軍事作戦はバルザニ首相のアンカラ訪問からおよそ一週間後に開始されました。これは今回の軍事作戦開始にあたって、クルディスタン地域政府とトルコ政府の間に安全保障協力体制が存在していることをはっきりと示しました」。イスマイル氏はそう話す。

イスマイル氏はPKKについて次のように語る。「エルビル国際空港にミサイル攻撃を繰り返し、イラク北部地域全体の政治的安定性に対する脅威を強め始めています」

今回の攻撃はトルコの「友人および仲間たち」と連携して行われたと防衛大臣は声明を発表している。

だがイスマイル氏は、より広範囲に渡る地上作戦を展開するための国際的条件が整わない限り、空爆によって戦闘に決着をつけることは難しいと見る。

深夜に口火が切られた今回の作戦は、ロシアがウクライナ侵攻の手を緩める気配を見せない一方、調停役としてのトルコの役割を西側同盟国が歓迎する中で始まった。

米国とEUは既にPKKをテロ組織に指定している。

アンカラに拠点を置くシンクタンクORSAMのイラク専門家トゥナ・アイグン氏は、今回の作戦は以前の攻撃の一部として行われたものだが、今回トルコは同地域の東部および西部におけるPKKの退避用施設等を標的にしたと語る。

「今回の作戦地域はしばらくの間PKK武装組織のシェルターになっていました。特に2017年以降、PKKはトルコ国内の標的を攻撃するため、物流および軍事力の大半をイラクに集中させてきました」。アイグン氏はアラブニュースの取材に対しそう語った。

「一時的な軍事基地を設置することで、トルコには同地域の地理的特性に基づいて武装組織の輸送ルートの支配権を確立しようという狙いがあります」。アイグン氏はそう話す。

しかしながら、今回の軍事作戦がどの程度続くのか、PKK武装組織の移動が制限されることになるのかどうかについては依然として不明だ。

「この作戦が1日で終わることはないでしょう。しかしこういった攻撃における武装ドローンの使用が増えていることから、このような劇的な条件下でこうした動きがこれ以上長引くことはないでしょう」。アイグン氏はそう語る。さらにアイグン氏は、今回のトルコの作戦は近年PKKの存在によって数千人の市民が立ち退きを余儀なくされてきた同地域の安定化に繋がるとの見方から、イラクおよびクルディスタン地域政府の支援を受けていると付け加える。

トルコは来年に選挙を控えており、今回の作戦は国家主義的な有権者の観点から国内政治に影響を与え、野党である親クルド派の国民民主主義党に対する切り札として利用される可能性が高い。

ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所で研究員を務めるイェレヴァン・サイード氏は、トルコは長年にわたってクルディスタン地域に安全地帯を築こうとしてきたと話す。

「今年の軍事作戦は、より深く激しいものであるように見受けられます」。アラブニュースに対してサイード氏はそう語った。

今回の作戦の目的は、戦略地域であるアファシン、マティン、クフクク、ザブの制圧を含むものだと見られる。「これまで、トルコ軍はこれらの地域の制圧に失敗してきました」サイード氏はそう付け加える。

「これが成功した場合、トルコ政府はPKKの基地があるカンディル山とロジャヴァおよびシンジャール地域を分断し、PKKの動きを制限することができます」

イスタンブールにあるニシャンタシュ大学のイラク政治専門家アリ・セミン氏は、今回の攻撃は2019年から続いてきたイラク北部およびPKKの支配地域との国境に緩衝地帯を作り出すための一連の作戦の一環だと話す。

「トルコ政府は作戦拡大のための最良の政治的機会を掴もうとしているようです」。セミン氏はアラブニュースに対してそう語った。

「イラクとクルディスタン地域政府のトップは、PKKの最近の活動を彼らの政治的プレゼンスへの介入だと見なしています」。セミン氏はそう語る。

「領土主権の侵害だとイラク政府当局から批判されてきたこれまでのトルコの作戦とは異なり、現在のトルコの作戦の大半は彼らからの支持を受けています」。専門家であるセミン氏はそう話す。

セミン氏によると、過去30年の間にイラク北部では約250の村が立ち退きを余儀なくされてきたという。また、同地域ではこの数年クルディスタン民主党(KDP)に忠誠を誓うペシュメルガ軍とPKKの戦闘が激化している。

この件の専門家であるジョージタウン大学のノア・リングラー氏によると、今回の攻撃はトルコと手を結ぶKDPのペシュメルガの軍事支援を受けており、イラク政府の組閣が難航する中で始まったという。トルコの政府関係者は今、今回の作戦に対してイラクの各政党から幅広い支持を得たと考えている。

「今回の作戦の目的には、カンディル山付近のPKKの戦略的拠点により近い位置に拠点を築くというトルコの新たな作戦が含まれます。これはトルコにおいて政治的重要性を持っており、同地域におけるPKKの活動と影響力を阻害し、トルコと手を組んでいるクルドおよびイラクの政治アクターに力を与えるものです」。リングラー氏はアラブニュースに対してそう語った。

専門家らは、このような作戦の成功はシリア国内のダイナミクスにも影響を与えると指摘する。

「クルド人民防衛隊は主にシンジャールにあるPKKの各基地から物流および軍事支援を受けています」。セミン氏はそう語る。

イラク政府とクルディスタン地域政府は、2020年10月9日にシンジャールにおける安全保障および行政協定を締結している。

しかしながら、この協定に盛り込まれていた同地域からのPKKの排除は、依然として実現に至っていない。

「トルコはイラクおよびクルディスタン地域政府と協力することでこの協定を実行するための進行役となり、同地域の支配権をイラク政府に取り戻させ、安全地帯にすることができるでしょう」。セミン氏はそう語った。

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