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ワシントンは、イランの核交渉が行き詰まる中、侮辱の瞬間に直面しています

イランとの協議は、同国の核開発能力に関する2度目の合意まで世界を導いた。しかし、バイデン政権はイランに甘すぎるのではないかと懸念する声もある。(AFP)
イランとの協議は、同国の核開発能力に関する2度目の合意まで世界を導いた。しかし、バイデン政権はイランに甘すぎるのではないかと懸念する声もある。(AFP)
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04 May 2022 12:05:18 GMT9
04 May 2022 12:05:18 GMT9
  • ウィーンにおけるバイデン政権の間接的な交渉戦略は、イランの地域的野心の抑制には寄与していない
  • 米政府高官は、イランが数週間で核爆弾を製造する可能性があり、同国の影響力が強まると考えている

ウバイ・シャーバンダル

ワシントン:米国政府当局者は、イランが核兵器開発の境界線に近づきつつあると見ている。イランは十分な核分裂性物質と、それを核兵器化し、ミサイルに搭載するのに必要な技術の両方が、あと数週間で達成される可能性があるという。

イランが、核爆弾製造までの工程(ブレイクアウトタイム)を大幅に短縮できるポイントに到達した場合、同国は、中東における覇権を追求する大戦略に関する将来の交渉において、大きな影響力と交渉力を持つことになる。

バイデン政権はイランに2015年の核合意への復帰を促すよう努力している。しかし、イラン政権がイスラム革命防衛隊(IRGC)を米国の外国テロ組織指定リストから外すよう主張しているため、両国の間接交渉は暗礁に乗り上げている。

ワシントンの反核団体「イラン核兵器抵抗連合(UANI)」の政策担当者ジェイソン・ブロツキー氏は、イランが自由に核開発を進めることができたのは、欧米諸国が確固たる条件を設定する姿勢を欠いたからだと指摘する。

「最新の遠心分離機の研究と製造に関して、イランは昨年、特に60パーセントまでのウラン濃縮と、金属ウランの製造を開始して以来、大きな進展を見せている」と、同氏はアラブニュースに語った。

「原因は、イランが国際社会のレッドラインを検証した結果、かつてレッドラインと思われていたものが、実はレッドラインではなかったことを確信したからだ」

最近の中東の歴史を振り返れば、オバマ政権時代のイランとの核合意(包括的共同行動計画/JCPOA)は、イラン政権の核武装や地域支配への渇望を和らげることはできなかった。

ジョー・バイデン米大統領は、米国を2015年の核合意から離脱させるという、前任者が2018年に行った決定を覆すことを望んでいる。トランプ政権は、この協定はイランの核兵器保有を防ぎ、弾道ミサイル計画を阻止し、中東全域での悪質な活動を止めるには、ほとんど役立たないと考えていた。

ブロツキー氏によれば、JCPOA離脱後にトランプ政権がイラン経済に課した強烈な制裁措置の後でさえ、同国政権は依然として核の野心を抱いているという。

「イランはこの道を進み続けるだろう」と彼は述べた。「国際原子力機関(IAEA)事務局長の最近の発言によれば、イランは遠心分離機のウラン濃縮能力を高めており、その生産ライン、設備が拡大されている。これはナタンズでも、イスファハンの新たな施設においても同様である」

イランとアメリカ、そしてJCPOAに署名した中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、そしてEUの間で、ウィーンでの交渉が停滞している。ブロツキー氏は、交渉力を高めるために、イランは意図的に時間をかけているのではないかと見ている。

「イランは1年以上も交渉を引き延ばして核開発を進めながら、西側諸国にはより短くて弱い合意を、自国には核開発における制裁緩和という形の、より強い合意をもたらすように仕向けている」

国際社会がウクライナ紛争やロシアとNATOの武力衝突の脅威に気を取られている中、米国は、イランとの交渉が行き詰まったのかどうかを判断しなければならない時期が迫っている。

民主主義防衛財団のアンドレア・ストリッカー研究員は、イランは核開発の境界線に急速に近づいており、曖昧な合意では手遅れになる可能性が高いと考えている。

「イランが核兵器開発に十分な量の濃縮ウランの蓄積に近づいていることが懸念される。しかし、米国の意図は、この脅威を利用して、イランとの核合意の復活を支持させることにあるようだ」と、彼女はアラブニュースに語っている。

交渉力を高めるために、イランは意図的に時間をかけている(AFP)

「イランは、兵器としてはこれ以上濃縮する必要のない、原子爆弾製造に必要なほぼ60%の濃縮ウランを製造している。そして、全体として、少なくとも4つの兵器に十分な濃縮ウランを保有している」

彼女は、問題の解決方法は、「イランに数十億ドル規模の制裁緩和を提供し、2024年からウラン濃縮プログラムを拡大することを可能にする」、核合意ではないと述べた。

ストリッカー氏によると、バイデン氏が提示した取引は、2024年以降、イランの新型遠心分離機開発に対する制約がないことを示しているという。それによって、イランは当初のJCPOAよりも核爆弾製造へのブレイクアウトタイムを大幅に短縮することが可能になるという。

「報告された取引の条件下においては、イランのブレイクアウトタイムは、2015年のように少なくとも7カ月ではなく、4カ月程度までしか延びないだろう」と彼女は語る。

「イランは2024年から年間400基の先進的な遠心分離機の備蓄を追加することが認められる。協定の有効期間が終わるころには、イランは核兵器保有の入り口に立っている。彼らがそれ(核爆弾の製造)を選択した場合、誰も止めることはできないだろう」

敵国による先制攻撃を警戒して、イランは最先端の遠心分離機を、国際的な監視や妨害工作、ミサイル攻撃の及ばない地下深くに設置しているという。

この戦略は、イランの遠心分離機生産、濃縮研究、生産に関する努力が、イラン政権が主張するような民間利用の目的ではなく、軍事目的に使われているのではという潜在的な疑念を強めている。

「イランは、破壊工作や軍事攻撃に耐えうるように移転させた2つの地下施設で、先進的な遠心分離機の生産を再開している」と、ストリッカー氏は言う。

「理論的には、イランは約650台の『IR6型』遠心分離機と既存の濃縮ウランを使用して、非常に迅速に兵器用ウランを製造することができる。この2つ施設は現在IAEAの監視下にないため、イランが遠心分離機をこれら秘密の濃縮工場に流用していないという保証は得られない」

核爆弾製造までのブレイクアウトタイム期間が大幅に短くなるというポイントに到達すれば、イランは大きな交渉力を持つことになる。(AFP)

IRGCのテロ指定解除というイランの要求を受け入れるという、バイデン氏が提示する核合意の擁護者の中には、バラク・オバマ前大統領の国家安全保障担当副顧問だったベン・ローズ氏がいる。同氏は最近、このテロ指定は米国の国家安全保障上の利益につながる取引にとって、過度に負担の大きい障害であると発言した。しかし、事実は異なることを物語っている。

「米国防問題ユダヤ人研究所」がまとめたデータによると、イランの攻撃性、具体的にはミサイル攻撃、海上での対立、サイバー攻撃、誘拐、兵器実験などが、バイデン氏の就任以来、倍増しているという。バイデン氏のチームが表明した、核合意の復活、制裁と核査察に関する多大なインセンティブの提供が、イラン政権の行動を穏やかにし、暴力の傾向を抑制したという証拠はない、と同研究所は付け加えている。

ブロツキー氏は語る。「バイデン政権には、別の政策オプションがある。制裁の組み合わせ、その積極的な実施、外交的な孤立の強制、秘密工作、抑止力の行使、そして信頼できる軍事オプションもその一つだ」

「現在、イラン政策に関してE3(英国、フランス、ドイツ)との再編成が進んでいる。政府はこの力学を利用してJCPOAから移行すべきだ」

バイデン政権におけるイラン政策に対する批評家は、IRGCの海外テロ組織(FTO)指定を維持することは、イランとの核取引の範囲を超えた米国の利益をもたらすと言う。

「海外テロ組織の指定を解除することには、両党においても大きな反対がある」とブロツキー氏は言う。

「もしバイデン政権が、中間選挙の年に、IRGCをFTOの登録から抹消すれば、大きな反感を買うだろう。そして結局のところ、バイデン政権はこの取引の復活にどれだけの政治資金を費やしたいのか、私は疑問を持っている」

イラン政権は、米国の交渉担当者が最終的に目をつぶることを期待して賭けに出ているとストリッカー氏は考えている。これは、イランが制裁逃れや秘密裏に進めてきた核開発について、実質的な罰則に直面していないことが少なからず影響している。

包括的共同行動計画(JCPOA)は、イラン政権の核武装や地域支配への渇望を和らげることはできなかった。(AFP)

「IAEAは、イランの核開発プログラムが軍事的な次元を維持しているかどうかの調査を完了できていない。だからこそ、ウラン濃縮の制限を段階的に緩めるという協定の命題は意味をなしていない」と彼女は言う。

バイデン政権が支持率低下に歯止めをかけたいのであれば、制裁緩和と核取引再開と引き換えに、イランが従うべき条件をより強固なものにする必要がある、と彼女は考えている。

「政策のリセットには、イランのウラン濃縮プログラムの合法化を廃止し、完全な透明性とIAEAの監査を義務付ける必要がある」とストリッカー氏は語る。「イランは、制裁から解放される前に、核プログラムが完全に平和的であることを世界に証明する必要がある」

ただし、イランがその道を選ぶ可能性は限りなくゼロに近い。イラン政府報道官アリ・バハドリ・ジャーロミ氏は月曜日、国営メディアに対し、イランは「国益が完全かつ包括的に守られる」まで核取引の交渉を続けるつもりであると語った。

バイデン政権は、“イランが求める全ての条件を検討する”ことに対する有用性を速やかに再検討する必要があるだろう。そして“イランの核兵器開発が止まらない”という、厳しい現実を受け入れた、新しい政策方針を描き始めなければならないかもしれない。

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