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慈善家カバラ氏の投獄により、トルコは西側諸国へのアウトリーチを失う

2022年4月26日、トルコのイスタンブールにて、慈善家のオスマン・カバラ氏が政府転覆を図ったとして終身刑を言い渡された。トルコの裁判所の判決に対する抗議デモに参加する人々。(ロイター)
2022年4月26日、トルコのイスタンブールにて、慈善家のオスマン・カバラ氏が政府転覆を図ったとして終身刑を言い渡された。トルコの裁判所の判決に対する抗議デモに参加する人々。(ロイター)
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07 May 2022 04:05:18 GMT9
07 May 2022 04:05:18 GMT9
  • トルコがウクライナとロシアの仲介役として行ってきた善行が台無しに

アンカラ:先週、アントニオ・グテーレス国連事務総長はモスクワに訪問前にアンカラに立ち寄ってレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と面会し、ウクライナでの戦争を終結させるためのトルコ政府の外交努力に対し賛辞を贈った。

両者が握手をしてから2時間も経たないうちに、トルコ政府が紛争当事者の仲介役という独自の役割を通じて西側諸国から得ていた好感の大部分が台無しとなり、関係修復の機会が損なわれた。

転機となったのは、イスタンブールの裁判所が2013年の反政府デモに関与した慈善家オスマン・カバラ氏に対して終身刑の判決を言い渡したことだ。多くの人がこの事件を政治的な意図があると見ており、釈放を求める西側諸国の声に反している。

4月25日、ある西側諸国の外交官は携帯電話に表示されたヘッドラインに驚き、次のように語った。エルドアン政権はウクライナ問題対応で政治的なポイントを得ることができたが、この判決によりエルドアン政権が「いくつかの点で信頼できない」ことを浮き彫りにした。

ある別の特使は、この判決を「最悪のシナリオ」と表現した。

8名の外交官がロイター通信に語ったところによると、この判決は、トルコが西側諸国との経済的・政治的関係の軋みを改善したいと望みながらも、ロシアとの距離を保ちたいという願望に打撃を与えるものだ。エルドアン大統領はロシアに対する制裁措置に反対している。

また、和解に向けた西側諸国の期待も冷え込んだという。

ロシアとウクライナの紛争が開始して以降、両国外相と和平交渉官による会談を主催した唯一の国であるトルコにとって、これは逆戻りと言える。トルコは西側諸国に対し、制裁の段階的な解除を含む戦争終結の準備と、トルコの防衛産業に対する制裁解除を求めてきた。

また、選挙戦を控え、また自国の経済状況が悪化する中、トルコはアメリカ、フランス、イタリアを含むNATO同盟国との関係強化や、欧米諸国との緊張関係緩和も望んでいた。

最近行われた世論調査では、エルドアン大統領が2023年の大統領選で敗北する可能性が示された。複数の外交官によると、エルドアン大統領を支持することに対しての警戒心により、EU関税同盟の更新を含め、有意義な貿易や投資取引の可能性が損なわれている。

エルドアン首相と政府関係者は、今回の紛争により同盟国がトルコの地政学的重要性を認識し、トルコのウクライナに対するバランスのとれた政策が評価され、賞賛さえ受けたと述べている。インタビューに応じた外交官もこの評価を共有している。

制裁に対するトルコの立場と、トルコは制裁を逃れるための避難所にはならないことを西側諸国は理解しているとトルコ政府関係者は付け加えている。

今週末、大統領府報道官兼外交政策首席顧問のイブラヒム・カリン氏がキエフを突然訪問し、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。その後、ウクライナで起きている戦争をどう終結させるかについて話し合ったという。

ロシアによるウクライナへの攻撃が夏まで続けば、NATOで2番目に大規模な軍隊を持つトルコは、ウクライナへの支援を強化するようアメリカやベルギーから圧力を受けることになるだろう、と外交官らは言った。

トルコはすでに、キエフに軍事ドローンを提供し、黒海へ向かうロシア海軍の航路を一部封鎖し、シリアとの間のロシア航空機の発着を禁じるといった措置を講じている。

二国間の交渉を促し、原則的にロシアへの制裁に反対するというトルコの姿勢は「長くは続かないだろう」と3人目の外交官は言った。

紛争がウクライナ側に傾くと、ロシアは観光客やエネルギーの流れを断ち切ることによってトルコ経済に打撃を与え、トルコにとっての好機が危機へと変わる可能性があると強調した。

戦争によるエネルギーコストの高騰はすでにトルコの通貨危機を悪化させ、インフレ率を61%に上昇させた。この状況が2023年半ばの大統領選挙におけるエルドアンの勝利への見通しを複雑にしている。

一部のアナリストは、エルドアン大統領の意向を反映していると批判されるカバラ判決は、選挙に先立って野党に警告を与える役割を果たしたと述べた。また、エルドアン大統領は、ウクライナ戦争で得た外交的な隠れ蓑によって大胆になった可能性がある、と付け加えた。

ワシントンの中東研究所で非常勤研究員を務めるビロル・バスカン氏は、「エルドアン大統領は欧米からの排除を望んでいるのではなく、ありのままの自分、つまりトルコの強い男としての自分を受け入れてほしいのだ」と述べた。エルドアン大統領の20年間にわたる政権運営の第二期を通じて、西側諸国の首脳陣はトルコの権利弾圧と反体制派弾圧を批判してきた。

米国も「不当である」と評したカバラ氏の判決について、ドイツはトルコの駐在大使を召喚したが、トルコ側もこれに呼応してドイツ大使を召喚している。

自国の裁判所は独立しており、法の支配に向けた改善措置を取っているとトルコは言うが、司法に対する国内外からの批判は内政干渉であるとして退けてもいる。

モスクワからのフライトを許可するなどといった戦争に対する姿勢から、トルコはロシア国民や資金、さらには富裕者層のヨットなど制裁を受けた資産の最も有力な逃避先となっている。

西側諸国の外交官3人は、このような状況から、米国やヨーロッパ諸国がロシアと取引を行う者に対する「二次的制裁」を発動する可能性があると述べた。

「我々はトルコに対して制裁を実施するよう求めている。制裁が破られることが明らかになれば、二次的制裁もあり得るだろう」と、特使の一人は語った。

もうひとつの潜在的な緊張状態は、トルコが国連と同様に、ウクライナでの戦闘を直ちに終わらせ、欧米とロシアの関係が均衡した世界にできるだけ戻したいという希望を持っていることである。

米国をはじめいくつかの国々は、戦争が正しい条件の下で終結することを望んでいる。ロイド・オースティン米国防長官は先週、ロシアが再び侵略行為を行わないよう「弱体化」させる必要があると述べた。

それでも、トルコはロシアとの関係を見直すことが予想される。

トルコがロシア製のS-400防衛システムを導入したことで、2020年に米国はトルコに対して制裁措置を発動し、関係を冷え込ませた。

しかし、トルコが昨年アメリカ製のF16戦闘機40機の売却を要請したことと、ウクライナ問題での協力が結びつつき、S-400の放棄という米国からの要求に対する妥協の道が開ける可能性があると、3人の外交官が語っている。

ロイター

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