
ナジャ・フーサリ
【ベイルート】レバノンの闇ドル相場は、レバノン中央銀行のリヤード・サラーメ総裁が27日発表した一連の措置を受けて続落することが予想されていた。ある銀行幹部はアラブニュースにそう語る。
ドル相場は中央銀行のSayrafaプラットフォームの相場とほぼ同じ程度までなお下がるものとみられる、と同幹部はする。同プラットフォームの27日の相場は1ドル=24,600レバノンポンドだ。
27日遅くに中央銀行総裁は驚くべき声明を出した。各行に対し来週月曜以降3日続けて、午後6時まで支店と金庫を開けておくようにとの通達だ。Sayrafa価格でのドル購入を求める市民らの要望に応えたものだ。同幹部の発言はこうした動きを受けたものとなる。
また、総裁は公営企業の従業員の給与もSayrafaレートのドル建てで支払うよう指示を出している。
レバノンポンドの下落が生んだ連鎖反応により、レバノンはさらなる経済的苦境に立たされた。中央銀行では先に銀行各行に対し支払いの一部はSayrafa相場のドル建てでおこなうよう要請していた。
しかし各行は市民に支払うドルの総額規制に乗り出し、先週のブラックマーケット復活につながっていた。
中央銀行総裁の27日の発言はブラックマーケットを揺るがし、同日のドル相場は1ドル=38,000レバノンポンドとなった。
総裁発言を受けてすぐさま両替店では混乱が巻き起こった。ドル相場が数分のうちに1ドル=37,700レバノンポンドから29,000レバノンポンドに急変したためドルを求めて人々が殺到したからだ。
ベイルートのメインストリート、特に金市場や両替店の近くに分散しているブラックマーケットの両替商らは動転しあちこちへ電話をかけはじめた。
銀行業界に通じたルイス・フバイカ(Louis Hobeika, لويس حبيقة)氏がアラブニュースに語る。「いま起きているのは人々の恐れがもたらしたものだ。レバノンではお金が問題なのではない。むしろ経済と政治が問題なのだ」
「この一週間でドルの交換レートは11,000レバノンポンドほど上がった。が、1時間もしないうちに劇的に下がった。これには政治的な理由がいろいろとあるのは確かだ」
市民社会が激動する懸念があるなかで、どうやら中央銀行は為替レートの引き下げのため動くよう政治的な圧力を受けているようだと、フバイカ氏は言う。
今回の発言は総裁としての苦肉の策だ、と同氏は語る。「とはいえ、癌患者を頭痛薬で治すようなものだ」