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アラブ諸国民は、ウクライナ紛争はロシアよりもNATOに非があるとする傾向が強いとの調査結果

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長。(AFP通信)
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長。(AFP通信)
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31 May 2022 02:05:05 GMT9
31 May 2022 02:05:05 GMT9

ジョナサン・ゴーナル

アラブニュースは、世界的データ収集分析会社であるYouGovとの共同で、ウクライナ紛争に関するアラブの人々の見解について特別アンケートを実施した。その結果、調査した14ヵ国のうち1ヵ国を除くすべての国で、回答者の多数が、ロシアではなくNATOに非があると考えていることが分かった。

唯一の例外であるシリアでは、意見が等しく分かれた。

今回の調査結果は、アラブ世界と欧州との間で、紛争に対する見解に隔たりがあることを浮き彫りにした。YouGovが4月に欧州で同様のアンケートを実施したところ、「EU諸国では市民の圧倒的多数がウクライナ情勢の責任はロシアにあると考えている」との結果が出た。

この感情は、フィンランドとスウェーデンで最も強かったが、両国ともロシアによる国境越えの領土拡張を恐れ、現在、NATOへの加盟を検討している。

そして、英国、ポーランド、オランダでは、70%以上が断固としてロシアに非があると回答した。

湾岸諸国、レヴァント諸国、北アフリカ諸国では、NATOが責を負うべき当事者であるとする意見の方が多くはあったが、比較的均等であった。例えば湾岸諸国では、NATOに非があるとの回答(23%)は、ロシアに非があるとの回答(19%)をわずかに上回っているだけだ。

紛争の非がNATOにあるとするアラブ世界の見解は、ロシア政府の公式見解をそのまま反映したものであり、「アトランティック・カウンシル」のデジタル犯罪科学研究所研究員であるエト・ブジアシヴィリ氏は、これはロシアのデジタル偽情報戦略に大きく起因しているのだろうと考える。

「さまざまなSNS上で、ロシア政府の公式ソースから絶えず偽情報のメッセージが流されています」と彼女は言う。「ユーチューブ、フェイスブック、ツイッターなどのプラットフォーム上ではブロックされますが、彼らはテレグラムも活発に使って情報を流しています」

「数週間前、彼らがウクライナ紛争を扱う動画コンテンツに投資をし始め、ペルシア語やアラビア語を含む17以上の言語によるチャンネルをテレグラム上に立ち上げたのを確認しました。

これは、紛争にまつわる偽情報を拡散しようとするロシアのより広範な取り組みの一環です。NATOへの非難は、ウクライナの背後で紛争を煽っているのはNATOであるという、ロシア政府から発信された最初のストーリーでした」

ロンドンに拠点を置くシンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所」の中東安全保障研究の特別研究員トビアス・ボック氏は、今回の調査結果はまた、欧米諸国のツールとしてのNATOに対する、この地域の複雑な感情を反映していると言う。

「中東が経験してきたことは、NATOは自分のしたいようにする、ということです。大多数の人々にとって、NATOとは欧米を意味します。今回の件では、ロシアは自分がしたいようにしているのだと人々は捉えており、そうであれば、そこに大きな違いはあるのか、と考えるのです。

欧米は何年もこのやり方をとってきました。例えば、イラクへの侵攻や占領など。そしてロシアは同様のことをウクライナでしています。ロシアがしていることは立派なことではないにしても、基本的に大きな違いはあるのかと。

よって、もしもロシア人が、NATOが拡大し続けるからこうするのだと言うのであれば、それは、この地域の反欧米、反帝国主義の感情に共鳴して混ざり合うストーリーとなるのです」

中東および北アフリカ地域全体で、今回のアンケート回答者の13%が、ジョー・バイデン米大統領にこの紛争の非があると答えている。おそらく、NATOと米国を結びつけて考えるのは避けられないことや、中東各地における米国の軍事的冒険に対してこの地域に広がる否定的な見方などが反映されているのだ。

しかし、全体で42%の回答者は、誰に非があるのか不明としている。

中東および北アフリカ地域の7835人に調査した今回のアンケートで、ウクライナ自体にこの紛争の非を問うことはできないとする見解は広く一致していた。ウクライナに責任があるとする回答はどの国でも8%を超えることはなく、湾岸諸国全体ではわずか5%であった。

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