ダマスカス:シリアの首都ダマスカスを発着する航空便の運航が10日、全て停止した。シリア政府が発表した。その前に、イスラエル軍による空爆で少なくとも1人の民間人が負傷し、空港の滑走路が損傷したと報じられていた。
2011年にシリアで内戦が始まって以来、イスラエルは隣国であるシリアに空爆を数百回行ってきた。政府軍だけでなく、イランの支援を受ける連合軍やレバノンのヒズボラの戦闘員も標的にしてきたが、そうした攻撃で航空便の運航に大きな支障が出ることはめったになかった。
英国に本拠を置き、戦争に反対するシリア人権監視団によると、10日朝のイスラエルによる空爆は、ダマスカス空港内の親イラン武装勢力の兵器庫3カ所に命中し、同空港の北側滑走路と監視塔が損傷を受けた。
シリア運輸省はその後、技術的な障害があるため、「ダマスカス国際空港発着便の運航を一時停止する」と発表した。
「運航可能な便の安全と安心を確保するため、設備・機器の修理が完了し次第、運航再開を発表する」と同省は発表した。国営シリア・アラブ通信(SANA)が報じた。
民間航空会社シャーム・ウィングス航空は、ダマスカスを出発する全便をシリア北部にあるアレッポ国際空港に迂回させると発表した。乗客は全員、その2つの都市を結ぶ無料のシャトルバスで輸送される予定だという。
空港職員はAFPに対し、イスラエルの空爆が同空港に「影響を及ぼした」と話した。
「全便を、少なくとも48時間延期しなければならず、一部の便はアレッポ空港を使うようにルートが変更された」とその職員は、この問題について話す権限がないため匿名を条件に語った。
アラブ系航空会社の関係者はこれとは別に、イスラエルの空爆が空港の臨時滑走路に命中したと話した。政府系日刊紙アルワタンもこのニュースを報じた。
その関係者も匿名を条件に、その空爆以後、同空港からの発着便はないと話した。
シリア人権監視団によると、イスラエルが昨年行った空爆で、南側滑走路として知られているもう一つの滑走路が著しく損傷したため、北側滑走路だけが機能しているという。
2021年の空爆の標的は、イランの支援を受ける組織が管理する武器輸送と兵器庫だった、と同監視団は発表した。同監視団は英国を拠点とし、シリア国内に幅広い情報源を持っている。
ダマスカス空港があるのは、ヒズボラなど、イランの支援を受ける組織が頻繁に活動しているダマスカス南部だ。
ダマスカス空港周辺はイスラエルの格好の標的になっている。イスラエルはシリアに今年だけで15回空爆を行い、ダマスカス空港を使って仲間に武器を送っているとしてイランをたびたび非難している。
同監視団によると、空爆を受けた滑走路は、空爆される前から状態が悪かったという。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は、シリアのファイサル・メクダド外相との電話会談で、今回の空爆は「シリアの主権と領土を明らかに侵害しており……国際法および人間の規範に反している」と非難した。イラン国営メディアが報じた。
シリア国営メディアは、イスラエルがダマスカス南部を空爆したことを報じていた。午前4時20分(GMT午前1時20分)頃、イスラエル占領下のゴラン高原からミサイルが一斉発射されたと伝えていた。
シリアの防空システムがミサイルの大半を迎撃したが、標的に到達したミサイルにより、少なくとも民間人1人が負傷し、物的損害をもたらした。SANAが報じた。
イスラエルは個々の空爆についてコメントすることはめったにないが、空爆を数百回行ったことは認めている。
イスラエル軍は、大敵イランがイスラエルの近くで拠点を築くのを防ぐために空爆が必要だとしている。
シリア内戦は、平和的な抗議活動に対する残虐な弾圧から始まり、エスカレートし、外国勢力や世界的なジハード主義者を引き込んだ。
シリア内戦では約50万人が死亡し、シリアの戦前の人口の約半数が、住む家を追われている。
AFP、AP、ロイターと共同