
エファレム・コッセイフィ
ニューヨーク:イエメン担当特使のハンス・グルンドベルグ氏は14日、数百万人の被災住民が必要不可欠な人道支援、医療、経済機会へのアクセスを確保できるようにするために、フーシ派はタイズの包囲を解除しなければならないと語った。
戦争によって荒廃した同国に関する国連安全保障理事会の月例会合で報告したグルンドベルグ氏は、イランが支持するフーシ派とイエメン政府との間で停戦が維持されている事実を歓迎しつつも、この行動はとられなければならないと述べた。
停戦によって敵対行為と民間人犠牲者数は大幅に減少し、長期間にわたって閉鎖されていたサヌア空港から飛び立つ民間航空便の再開が可能になり、ホデイダ港に向けた燃料輸送も容易になった。
フーシ派は次にタイズ市につながる道路を段階的に開放していかなければならない、とグルンドベルグ氏は述べた。フーシ派が主要道路を封鎖して同市中心部を取り囲み、国土の大半から切り離した2015年以来、タイズ県は包囲下に置かれている。
「今回の停戦で、タイズの人々の苦難を緩和できるかどうかも重要な問題だ」と、グルンドベルグ氏が安全保障理事会で語った。
「何年にもわたり、この紛争によって(タイズの人々は)移動の自由を大いに妨げられてきた。タイズの人々がよく知っているように、同市につながる、開放されている道路は険しく長い道ばかりだ」と、グルンドベルグ氏は述べた。スウェーデンの外交官である同氏は、自身の経験として6時間以上かけて「アデンからタイズ市まで曲がりくねった狭いでこぼこの山道を移動したことがある。紛争以前は、同じ移動を主要道路ならわずか3時間で行うことができた」と、理事会で語った。
「タイズで男性、女性、若者と会って話をしたが、市外とのアクセス道路が封鎖されているために、日常的に窮状に陥っていると語っていた。厳しい制限によって経済活動が鈍り、医療アクセスが劣化し、市民の移動が危険にさらされているさまも目の当たりにした」
国連は、タイズ周辺の道路を段階的に開放していくことを提案している。これにはタイズ市から東に延びる、ハウバン地域に向かう主要道路や、他県と結ぶその他の道路が含まれる。提案には、民間人移動者の安全を確保するための措置も含まれている。
グルンドベルグ氏は、「国連の提案に対するイエメン政府の前向きな回答には勇気づけられるが、アンサール・アッラー(フーシ派)からは回答待ちの状況だ」と述べた。
会合後に行われたアラブニュースの質問に対して、グルンドベルグ氏は、フーシ派には回答を促したいと述べた。
「7年の歳月が過ぎ去ったが、未だ解決に至らず、わずかにタイズの(問題解決を図る)数回の試みがなされたに過ぎないという事実を顧みると、提案から6日間待っているといっても、その流れからしたらそれほど長いものではないと思う」
「しかし、60日間の停戦という枠組みの中にあっては、1日が過ぎ去るごとに特段に長く感じる。簡単に解決できる問題ではないという事実がただ浮き彫りになる。しかし、私はアンサール・アッラーを含むすべての当事者に、できるだけ迅速にこの問題を進展させることを促す」
14日、グルンドベルグ氏は、4月2日の停戦発効後初めて安全保障理事会の場で直接報告した。停戦はその後、8月2日まで延長されている。同氏は理事国への報告の中で、協定開始以来、イエメン国内で空爆は見られず、同国内からの越境攻撃も行われておらず、停戦は引き続き維持されていると述べた。
民間人犠牲者数も大幅に減少しているものの、グルンドベルグ氏は、地雷や不発弾によって今も人命が失われている事実を嘆いた。市民はこれまで近づけなかった、そうした危険物が残っている前線地域に赴こうとするという。
グルンドベルグ氏によると、敵対行為は全般的に減少しているが、違反は引き続き見られ、特にマアリブ県、タイズ県、ホデイダ県のいくつかの前線で武力衝突が発生しているという。
「ご承知のとおり、私たちには独立して監視する能力はないものの、私はこれらの疑いを非常に深刻に受け止めている。事件と疑われるこれらの事態が、暴力とエスカレーションの新たなスパイラルへと至らないようにすることがきわめて重要である」と、グルンドベルグ氏は語った。
グルンドベルグ氏は、複数の当事者と連合軍の統合軍司令部から代表者が参加する軍事調整委員会の第1回、第2回会合の招集に携わったことにも言及した。そして、同委員会は定期的に協議を重ねることに合意した、と付け加えた。
「この対面方式の会合は、当事者間の信頼構築と意思疎通の改善に向けた最初の重要なステップだ」
停戦開始後に、数便の民間航空機が、これまで6年間閉鎖されていたサヌア空港を飛び立った。診療や家族との再会を希望する約3千人の乗客が、空路アンマンとカイロに向かった。
グルンドベルグ氏は、イエメン政府が空港の利用再開が円滑に進むように取り計らって「イエメン国民のニーズを優先させている」ことに言及し、また「航空便再開に向けてエジプト・アラブ共和国、ヨルダン・ハシェミット王国、サウジアラビア王国が果たした役割に心から感謝する」と改めて表明した。
停戦期間を通じて、ホデイダ港に向けた燃料輸送も安定的に継続している、と同氏は述べた。4月と5月の2カ月間に48万トン以上の燃料製品について通関手続きが行われ、「昨年1年間にホデイダに入港した燃料より多い」という。
「燃料が安定的に供給されることで、必要不可欠なサービスへの圧力が緩和され、サヌアの通りを占拠していたガソリンスタンドに並ぶ車列は大幅に減少し、イエメン国民は国中をより簡単に移動できるようになった」と、グルンドベルグ氏は述べた。
UAEの国連常駐代表であるラナ・ヌセイベ氏は、「包囲下にある数百万人の人々の生活の窮状を和らげる」ために、第2義的な道路だけでなく、タイズの主要道路についても、開放に向けた取り組みを強化することをグルンドベルグ氏に求めた。
同氏は、停戦中であるにもかかわらず、フーシ派は支配地域全域で動員と勧誘を続け、「子供たちに過激思想を植え付けている」と述べた。
ヌセイベ氏は、国連が支援する、老朽化した超大型タンカー「セイファー」の救助作戦に対してサウジアラビアが1千万ドルを拠出することについて、他の理事国の大使ともども賞賛した。
米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド大使は、停戦が維持されており、現在は「真に楽観的になれる理由」があるとし、この進展を土台にさらに前進させることが、来月行われるジョー・バイデン大統領のこの地域への訪問の中核的な焦点になると表明した。
アラブニュースの取材を受け、今回の停戦が7年に及ぶ紛争の恒久的解決につながるという楽観的見方を共有するかどうかを尋ねられたグルンドベルグ氏は、自分は慎重なアプローチをとっていると述べた。
「私は1つ1つステップを踏み、急ぎすぎないようにしている。ただし、踏むべきすべてのステップについて、全体的な視点から連携させたうえで踏み、実施するようにしている。現在私たちが目にしているのは、この7年間に見られなかったステップであり、間違いなく歓迎すべきものだ」
「だが、そうであれば、やるべきこと、努力すべきことがもっとたくさんあるはずだ。だから、私たちは、すべての問題について全当事者を促し続けていきたい。そして、必要なステップを進めていけることを願っている」