
チュニス:チュニジアのカイス・サイード大統領は火曜日、今月国民投票にかけられる憲法案を擁護した。起草委員会の委員長が、国を独裁に戻しかねないとして憲法案を否定したことを受けたものだ。
新憲法案は、地域全体に波及した民主化運動から10年以上が経過した今、チュニジアの政治システムを作り直すためのサイード大統領の計画の中心となるものだ。
しかし、新憲法の起草を監督した法律専門家のサデク・ベライド氏は、サイード大統領が先週公開した最終版は起草委員会の草案とは「全く異なる」ものだと指摘し、一部の条項は「独裁体制への道を開き」かねないと警告した。
サイード大統領府は火曜日、「この憲法案は、(2010年末の)革命開始から2021年7月25日の進路修正までの間にチュニジア国民が表明していたことに基づいて作成された」と主張する公開書簡を発行した。
この日付は、サイード大統領が政権を解任し議会を停止し広範囲におよぶ権力を掌握した日だ。反対派はこの動きを、「アラブの春」の反乱から生まれた唯一の民主主義体制に対するクーデターと呼んだ。
サイード大統領は、しばしば行き詰まり汚職がはびこる大統領制と議会制の混合制を明記したチュニジアの2014年憲法を置き換えて大統領制を敷くことを望んでいる。「今回提案する憲法案は、革命の精神を表現しており、権利や自由を脅かすことは決してない」と大統領の書簡にはある。
大統領は、憲法案がチュニジアを専制に戻しかねないと「中傷し偽る人々」は詳細を読んでいないと切り捨てた。
大統領は国民に対し、権力掌握の1周年である7月25日に開催される国民投票で新憲法案を承認するよう求めた。
「新憲法案に『イエス』を。国が過ちを犯さないように、革命の目標が実現するように、困窮・テロ・不正・苦難が起こらないように」と書簡には書かれている。
小麦危機
チュニジアで農業を営むモンデル・マタリさんは、風に揺れる金色の麦畑を見渡し、コンバイン収穫機を動かす。大きな音を立てる1976年製のこの怪物がいつ壊れてもおかしくないと彼は恐れている。
ウクライナ侵攻により世界の穀物価格が高騰しているため、輸入に依存するチュニジアは、クスクスやパスタなどの地元の主食の原料となるデュラム小麦を全て国内で生産することを目指すと発表した。
小国であるチュニジアは、近隣諸国と同様に、食糧不足と社会不安を防ぐのに必死だ。しかし、チュニス北部の太陽が照りつける平原で農業を営む人々にとっては、基本的なことにさえ問題がある。
「新しいコンバインを買いたいのですが、政府からの補助がないと買えません」と、65才のマタリさんは言う。この旧式の機械が作物の3分の1近くを無駄にしていると思っている。また、予備部品の入手が困難なため、故障したら収穫を全て失ってしまうと恐れている。
しかし、中古機に置き換えるにしても、15万ドルという想像を絶する費用がかかるのだ。
政府の補助があれば「生産量だけでなく品質もたぶん50%、もしかしたら90%上がるでしょう」と彼は言う。「でも、状況は悪くなっています。国は助けてくれません」
チュニジアの小麦生産は、長年の干ばつと、2011年の革命後10年間に10回も政権交代するという政治的不安定に苦しんでいる。
AFP