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バイデン大統領の中東初歴訪の共通項が「イラン封じ込め」である理由

バイデン政権は2021年4月から、米国の核合意復帰を目指して協議を続けている。(AFP)
バイデン政権は2021年4月から、米国の核合意復帰を目指して協議を続けている。(AFP)
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14 Jul 2022 12:07:14 GMT9
14 Jul 2022 12:07:14 GMT9
  • pバイデン大統領は対イラン体制を強化したが、アナリストによれば、米国の政策に根本的な変化があったとは考えられない
  • バイデン大統領は、中東の同盟国に対し、イランの脅威に対抗するための積極的な抑止戦略を行う用意があると示すよう求められている

ラワン・ラドワン、ロバート・エドワーズ

ジェッダ/ボゴタ:今週、ジョー・バイデン米大統領はリヤドに到着し、中東諸国の首脳らとの会談を予定している。ウクライナ戦争と西側によるロシア産炭化水素のボイコットが起きている中で、世界の石油価格上昇は間違いなく重要な議題として上るだろう。しかし、イラン問題も同様に重要な議題である。

実際、バイデン大統領が訪問する各国、あるいは「湾岸協力会議(GCC)+3」に出席する中東の同盟国に共通する願いは、イランの域外活動封じ込め、そして同政権の核武装を阻止することである。

米国大統領府は、イランは十分な核分裂性物質を保有し、おそらく核兵器化や核弾頭運搬に必要な技術さえも保有していると考えており、それがイラン政権に強力な交渉力を与えているとみなしている。

ドナルド・トランプ前大統領が2018年5月に破棄した2015年の核合意を遵守するよう、バイデン政権はイランを説得してきたが、両者間の間接交渉は幾度も困難に突き当たってきた。

それでもバイデン大統領は、イランが同意を再び遵守するまで、制裁を解除することを拒否している。

イスラエル、ヨルダン川西岸およびサウジアラビア歴訪を前にした今週、バイデン大統領は、トランプ前大統領が合意を離脱した後に、イランの核開発が「急速に加速」したことを、ワシントン・ポスト紙に寄せた意見書の中で指摘した。

バイデン大統領は、土曜日の寄稿でこのように記した。「機能していた核合意を前大統領が破棄した後、イランは核開発を急速に加速させる法律を成立させた。そして、前政権が国連安保理でこの行為についてイランに対する非難決議案を提出したが、米国の孤立が示され、孤独であることを思い知らされた。」

「我々はヨーロッパ、そして世界中の同盟国やパートナーと再び協力し、米国の孤立状態を覆した。現在、孤立しているのはイランである。前任者が放棄した核合意にイランが復帰するまで、それに代わる計画は何も考えていない。」

バイデン大統領は、イランが核合意を順守するまで、同国に対する制裁の解除を拒否している。(ロイター)

そして、「先月、30以上の国が我々と共に、イランが過去の核活動に関して国際原子力機関(IAEA)への協力を拒否していることについて、非難する決議を採択した。米国政権は、イランが2015年の核合意の遵守に戻る準備が整うまで、外交・経済の両面で圧力を高め続ける」と記した。

一方イランは、バイデン政権は核問題に関して矛盾していると非難した。

イラン外務省のナセル・カナニ報道官は2日、AFPに対し、「ジョー・バイデン大統領がイランに対する経済的・外交的圧力強化を強調していることは、米国が2015年の核合意再建に対する意志を示し続けていることと矛盾している」と述べた。

米国政府は、「合意再建というスローガンや主張を立てているにもかかわらず、制裁と経済的圧力の継続という(前政権と)同じアプローチを採っている」とカナニ報道官は付け加えた。

アナリストによると、バイデン政権がここ数週間で対イラン政策を強化したことは認められるが、米国に根本的な政策変更があったとは考えられない。

「米国のイランに対するアプローチは、戦術的には変化しているが、戦略としては変化していない」と、イラン核兵器抵抗連合の政策担当であるジェイソン・ブロツキー氏はアラブニュースに対して語った。

「ここ数週間で、米国は制裁を強化している。バイデン政権はこれまで、米国がJCPOAに復帰しても制裁が解除されない機関に対して制裁を課していたのだから、これは一つの変化である。」

「しかしここ数週間、米国は大統領令13846号に基づき、JCPOAが再建された場合には制裁が解除される団体や個人を制裁対象として指定している。これは、バイデン政権が対イラン圧力を強めているという、イラン指導部への微妙なサインなのだ。」

「しかし、大統領の最新の寄稿によれば、この圧力はJCPOA順守に向けた圧力であり、より長期的で強力な合意を目指した圧力ではない。つまり、それは依然として問題を孕んでおり、湾岸アラブの首脳陣やイスラエルが耳にしたいと願っていることではない。」

バイデン政権は2021年4月から、制裁解除やイラン政権の合意の完全遵守を含めた、米国の核合意への復帰を目指した協議を続けてきた。

しかし、オーストリアの首都ウィーンで開催されている断続的核協議は3月以降停滞しており、米国とイランの間には未解決の問題が複数個残っている。

6月下旬、ウィーン核協議のプロセスを軌道に乗せるべく、カタールが米国とイランの間接協議を主催したが、2日間の協議の末、打開策を見いだせないままに決裂している。

イランが核開発計画を抑制する見返りとして制裁緩和を行うという合意内容については、イランの弾道ミサイル計画の拡大や、国家の支援による海軍の海賊行為、中東地域の代理民兵組織への支援を防ぐには十分でないと繰り返し批判されてきた。

長期間に渡り、イランは隣国イラクの武装集団に対する資金提供や装備提供を行っている。民兵組織は、欧米の軍人および外交官、民間インフラを日常的に攻撃しており、イラクの政治制度の破壊を試みている。

「JCPOAは本質的に死んだと思っているが、まだ埋葬されてはいない」と、イラン核兵器抵抗連合の政策担当であるジェイソン・ブロツキー氏はアラブニュースに対して語った。(AP通信)

シリアでは、イランはアサド政権を支援するため、最新の軍事装備や中東地域の紛争地域から集めた戦闘員を送り込んでいる。イスラエル国防省は、イランがシリアをイスラエル攻撃の拠点として利用するのではないかと恐れている。

中東の他の地域でも、イランはレバノンのヒズボラを長年支援しており、レバノンの政治的麻痺と社会的崩壊を助長している。イエメンでは、イランがフーシ派武装組織の後ろ盾となり、イエメンの内戦と国民の長引く苦しみという結果をもたらした。

これら代理民兵組織とその活動地域は、サウジアラビアおよびUAEの民間人や石油インフラに対する、国境を越えたミサイル攻撃やドローン攻撃に利用されてきた。また、民兵組織は、中東地域の水路を航行する商業船舶をも標的にしている。

したがってイランの脅威は、中東地域の安定だけでなく、航行の自由やより広範な世界経済をも脅かしているということになる。

そのため、JCPOAを批判する人々は、イランの問題は核問題だけに留まるものではなく、イランとの合意はこれらの脅威をも抑止するものでなければならないと主張する。

政治アナリストで国際関係学者のハムダン・アルシェフリ博士はアラブニュースに対し、「オバマ政権とバイデン政権が提示したJCPOAには、10年近く経つが何の変化も見られない」と述べた。

「バイデン政権は、イランの核開発を抑制できるような合意の締結に向けて何も動こうとしないため、依然として足踏み状態である。その結果、イランの代理民兵が中東地域における脅威となっている。」

イランは長年に渡り、隣国イラクの武装集団に資金と装備の提供を行ってきた。(AFP)

イランの核活動や核兵器獲得の急速な進展を考えると、JCPOAは復活する見込みがないのではと考える人も多い。

「JCPOAは本質的に死んだと思っているが、まだ埋葬されてはいない」とブロツキー氏は言う。「可能性は非常に低いが、まだ復活を望むことができる。」

「2013年以前は多国間の制裁とイランの核インフラを破壊する軍事力という、より確かな脅威があったが、合意復活に踏み込むほどの圧力をイラン指導部は受けていない。」

「よって、イランは危機感を感じておらず、原油価格の高騰、米国のずさんな制裁、そして何をしたとしても米国とE3(フランス、ドイツ、英国)は交渉のテーブルから離れることはないだろうという状況を利用してきた。米国と欧州の同盟国は、その認識を改めなければならない。」

イランに軍事対抗するための中東防空同盟(MEAD)の構築であれ、中東地域の代理民兵組織の支援に必要な資金を少なくとも絶つという協調的努力であれ、バイデン大統領の今回の中東訪問が、軌道修正してより攻撃的な抑止力行使を目指す貴重な機会だと考えられているのは、この理由のためである。

「今回の中東訪問では、イランが単なる核兵器保有国ではないと明らかにし、そして核武装行動以外の脅威に対抗する、積極的な抑止戦略を行う用意があることを示すことが、バイデン大統領にとって極めて重要だ。これこそ、中東各国がバイデン大統領の口から聞きたいと願っていることだ」とブロツキー氏は言う。

「MEADのような取り組みは必要だが、十分とは言えない。イランの侵略を押し返すことを目的とした阻止行動、物理的攻撃、イランの代理民兵組織やそのネットワークへの資金流入を食い止めることは極めて重要だ。しかし、JCPOAはこうした活動に資金を提供している。この米国政策の根本的な矛盾にこそ、大統領は取り組んでいかなければならない。」

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