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「私たちはどこに行くのか」シリア人は、実行をほのめかされたトルコの攻撃を恐れている

トルコとの国境に近いシリア北部の都市マンビジュの市場で買い物をする人々。実行をほのめかされた攻撃がこの町に迫っている。(AFP)
トルコとの国境に近いシリア北部の都市マンビジュの市場で買い物をする人々。実行をほのめかされた攻撃がこの町に迫っている。(AFP)
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23 Jul 2022 08:07:29 GMT9
23 Jul 2022 08:07:29 GMT9
  • シリア民主軍は、攻撃に備えてマンビジュの外れで塹壕を掘った

シリア、マンビジュ:ガズワン・アル・アトマンさんは、住む場所を数年間追われた後、マンビジュに避難してきた。今、実行をほのめかされたトルコの攻撃がその町に迫っているため、彼は今、家族が再び住居を追われることを恐れている。

トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、シリア北部で新たな攻撃を開始すると繰り返し宣言した。トルコに対して数十年にわたって反乱を起こしてきたクルド人武装組織からトルコを守るための作戦だ、と同氏は言っている。

トルコは過去6年間、シリアに相次いで攻撃を仕掛けてきた。最近では2019年、ドナルド・トランプ前米大統領が米軍を撤退させた後、クルド人武装組織に対し、大規模な空爆や地上攻撃を行った。

「シリア人はすっかり疲れ果てています」とアトマンさんは言った。彼は、マンビジュの繁華街にある、彼が経営する誰もいない靴屋の中に立っていた。シリアとトルコの国境からわずか30キロメートル(20マイル未満)の所にある。

「私たちはここで安全と安心を享受しました。今はどこに行けばいいのか分かりません」

アトマンさんが店を出した市場は、いつもは多くの客で賑わっているが、今はごくわずかしかいない。

彼の家族がマンビジュに定住したのは2018年だったが、そのときすでに「4、5回」住む場所を追われていた、とアトマンさんは話した。

43歳のアトマンさんは家を建て、「ゼロから」店を開いたが、子供たちの命を心配し、今は再び避難する準備を整えている。

「戦争は私を破滅させました……私たちが望むのは、この国の安定だけです」と彼は言った。

新たな攻撃の脅威が高まっている。トルコは今週ロシアとイランから許可を得られなかったにもかかわらず、「軍事作戦の許可」を求めることはない、と21日に発表した。

トルコのメディアによると、8月末もしくは9月上旬までに軍事作戦が実施される可能性は低いという。

アナリストらは、人口密度の高いマンビジュが攻撃されれば、多くの人が移住し、苦しむことになるだろうと警告している。

マンビジュの住人は、攻撃に備えて食料を買いだめするのに忙しい。

フセイン・ハムドゥシュさんは、客が牛乳、米、ブルグルなどの必需品を買いだめするために、彼が経営する食料品店に押し寄せていると話した。

ハムドゥシュさんは「ここを離れたくありません」と言った。

「住む場所を追われるのは、破滅するということです」と彼は言った。「私たちはどこに行くのでしょうか。故郷で死んだほうがましです」

クルド人が支配するこの町では食品価格が高騰している、と住民は言う。

ウム・ニダルさん(48)は、4人の子供のことを心配するのと同じくらい、住む場所を追われることが心配だと話した。

「私たちは空爆よりも経済戦争に直面しています」と彼女は、スーパーマーケットの棚を見渡しながら言った。

トルコがマンビジュを攻撃すると脅したのは、今回が初めてではない。マンビジュの住民の大半はアラブ人だが、町を支配しているのは、2016年に過激派組織ダーイシュを追放したクルド人武装組織だ。

2016年から2019年にかけて、トルコは3回、軍事攻撃を仕掛けた。トルコが言うには、クルド人自治政府の事実上の軍隊であるシリア民主軍(SDF)を主に構成するクルド人民防衛隊を一掃するのが目的だった。

ロシアとイランの承認がなくても、エルドアン氏は限定的な攻撃を行うことができる、とアナリストらはAFP通信に語った。

SDFを構成するマンビジュ軍事評議会のシャーファン・ダルビッシュ報道官は「トルコの脅威は、マンビジュでは今に始まったことではありませんが、脅威のレベルは変動します。最近は非常に高まっています」と述べた。

SDFは、起こり得る攻撃に備えてマンビジュの外れで塹壕を掘った、とAFP通信の記者は話した。

「トルコ軍との戦いでは新しい戦術が必要ですが、私たちは、ダーイシュとの戦闘経験に基づき、部隊を訓練してきました」とダルビッシュ氏は述べた。

SDFは、トルコの過去の作戦と同様な攻撃をかわすため、シリア政府の支援を要請している。
シリア政府はクルド人の自治を認めていないため、政府軍とクルド人勢力は落とし所を見いだすのに苦労している。

シリア政府はここ数日、ロシアが仲介した合意の一環として、マンビジュの近くに増援部隊を配置している。クルド人勢力と、トルコが支援する勢力の間で緩衝材として機能させるのが狙いだ。

増援部隊は「大きくて質の高い武器」を携えてやってきた、とダルビッシュ氏は述べた。

「前線には政府の旗が見えました。マンビジュ軍事評議会の戦闘員は、オリーブの木陰で、トルコが行うかもしれないドローン攻撃から身を隠しながら、もっと後ろで少数で点在していました」とAFP通信の記者は話した。

シリア軍の兵士は、近くの村にキャンプを張り、この2日間、少しずつ移動している。

ハムドゥシュさんは、軍がマンビジュを守れたらいいと思っていると話したが、懐疑的な人たちもいる。

「平和になればいいと思っています」と、マンビジュに住むアリ・アブ・ハッサン(50)さんは言った。「ですが、これ(戦争)は国際的なゲームで、私たちは犠牲者です」

AFP

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