
ナジャ・フーサリ
ベイルート:ウクライナから盗まれた疑いのある5,000トンの小麦粉を積んでいる、レバノン北部のトリポリ港に停泊中の貨物船に対し、レバノンの判事が29日、差し押さえを命令した。
差し押さえられたのラオディケア号という船名のシリア船で、米国の制裁対象となっている。積荷の所有者はトルコの穀物商社ロイヤルアグロ(Loyal Agro) で、同社は積荷の出所が合法であることを示す書類をレバノン税関に提出済だと釈明している。
しかし、ベイルートの在レバノン・ウクライナ大使館は、この船は「ウクライナの店舗から持ち出されたと思われる大麦5,000トンと小麦粉5,000トンを運んでいた 」と述べている。同大使館によると、調査の結果、ウクライナの判事により同船と積荷を差し押さえる裁定が下されたという。
ロイヤルアグロの広報担当者は、貨物は当初シリア向けだったが、レバノンでのパン不足を理由に 5,000 トンの小麦粉を荷揚げすることを決定したと述べている。シリアでは小麦粉は1トン600ドル(約80,000円)で販売されているのに対し、レバノンでは650ドル(約87,000円)だという。
レバノンでは人口の約半分が食料不安に陥っており、今週には不満を募らせた群衆がパン屋に押し寄せる事件が発生している。
レバノンは以前、小麦のほとんどをウクライナから輸入していたが、ロシアのウクライナ侵攻と黒海の主要港の封鎖により、入荷の途絶えた状態が続いている。
レバノンのナーセル・ヤシン暫定環境相は、「レバノンは国際法を尊重しています。ウクライナから盗まれトリポリに停泊しているとされる船からの荷揚げはまだ行われていません」と語った。
同相はまた、この問題はレバノンの経済相、公共事業相によって調査が行われていると説明した。
レバノンの一部の観測筋は、ラオディケア号の所有者がシリア港湾総局なのではないかという情報に特に反応して、レバノンの経済的・政治的混乱に乗じてシリアに商品を密輸し、米国の制裁を回避している勢力があるのではないかと懸念している。
レバノン経済省の関係者はアラブニュースに次のように語った。「海外から小麦や小麦粉を輸入する場合、中央銀行から補助金を受けていない限り、省の承認は必要ありません」
「補助金と関係がないのなら、民間企業や製粉会社には、輸入の正当性をレバノンの税関が確認する限り、小麦や小麦粉を自由に輸入する権利があるのです」
一方、レバノンのアブダラ・ボウ・ハビブ外相は、同国当局はまだ「船に積まれている小麦粉と大麦の出所を特定できていません」と語っている。
同相によると、ラオディケア号の入港後、レバノンは「多くの西側諸国から苦情と警告を受けて」いるとのことである。
この新たな海事事件は、レバノンが8月4日にベイルート港爆破事故から2周年を迎える1週間前というタイミングで発生した。