



ガザ市:イスラエルは金曜にガザに対して立て続けに空爆を行い、武装組織幹部1名を含む、少なくとも10人が死亡したと、パレスチナ当局が発表した。イスラエルは、最近行われた別の武装組織幹部の逮捕に起因する「差し迫った脅威」に対応するために、武装組織イスラム聖戦を標的としたとしている。
数時間後、イスラエルで空襲警報のサイレンが鳴り響く中、パレスチナの武装組織がロケット弾による集中攻撃を行い、両者は新たな全面戦争に近づいた。イスラム聖戦はロケット弾100発を発射したと主張している。
イスラエルとガザを統治する武装組織ハマスは、この15年間に4回の戦争と数回の小規模な戦闘を行い、ガザ地区に暮らす200万人のパレスチナ人に多大な犠牲を強いてきた。
ガザ市では1発の爆発音が響き、高層ビルの7階から煙が上がった。イスラエルの軍部が公開した映像には、武装組織メンバーと思われる人物がいる3つの監視塔が攻撃によって爆破される様子が映っている。
イスラエルのヤイール・ラピード首相は全国放送の演説で、自国は「具体的な脅威」に基づいて攻撃を開始したと述べた。
「政府は、ガザからイスラエル領土へのあらゆる形のいかなる攻撃の企てにも、ゼロトレランス政策をとっている」とラピード氏は述べた。「イスラエルが市民に危害を加えようとする者を何もしないで見過ごすことはない」
また、「イスラエルはガザでの広範な紛争を望んではいないが、紛争に対して尻込みすることもない」とも述べた。
11月の選挙を前に暫定首相の役割を引き受けたラピード氏がその座を維持したいと望むならば、この武力衝突は早々の試練となる。ラピード氏は現政府で外相を務め、外交の経験はあるが、安全保障面では実績が乏しい。
ハマスもまた、前回の戦争で広範な壊滅的被害を受けた後、わずか1年で新たな戦闘に踏み込むかという決断においてジレンマに直面している。前回の戦争以来、復興はほとんど進んでおらず、孤立した沿岸部のガザ地区は貧困に陥っており、失業率は50%前後で推移している。
パレスチナ保健省は、犠牲者を民間人と武装組織で区別することなく、ガザでの死者には5歳の少女と23歳の女性が含まれていると発表した。イスラエル軍は、当初の推定によれば15人ほどの戦闘員が死亡したと述べた。負傷者は数十人におよんでいる。
イスラム聖戦は、死亡者の中に同組織のガザ北部司令官タイシール・アル・ジャバリ氏も含まれていると述べた。同氏は2019年に空爆で死亡した武装組織メンバーの後任者だった。
あるイスラエル軍報道官は、この攻撃は対戦車ミサイルを持つ2つの武装組織分隊による「差し迫った脅威」に対応したものだと述べた。
匿名で記者の取材に応じた報道官は、アル・ジャバリ氏は計画的に狙われていたとして、同氏はイスラエルへの「複数の攻撃」に関与したと述べた。
同氏と他の犠牲者の葬列では数百人が行進し、多くの参列者がパレスチナやイスラム聖戦の旗を振り、報復を呼びかけた。
イスラエルのメディアは、ロケット弾とイスラエルの「アイアンドーム」ミサイル防衛システムによる迎撃ミサイルの光に照らされる同国南部と中央部の空を映した。テルアビブで1発の爆発音が響いた。
現時点では何発のロケット弾が発射されたのかは分かっておらず、今のところイスラエル側に犠牲者が出たという情報はない。
イスラエルは金曜、兵器製造施設やイスラム聖戦の拠点といった別の標的への攻撃を継続した。
この地域を担当する国連特使トル・ウェネスランド氏は「深く憂慮している」と述べた。
「ロケット弾の発射はただちに止めるべきであり、全関係者にさらなる戦闘激化を回避するよう求める」と同氏は述べている。
イスラエルによる最初の攻撃の後、数百人がガザ市の主要医療施設であるシファ病院の遺体安置所の外に集まった。愛する人の本人確認のために中に入り、泣きながら出てくる人々の姿もあった。
イスラエルに協力したパレスチナ人情報提供者に言及し、「神がスパイに報復を下しますように」と叫ぶ人もいた。
ベニー・ガンツ国防相は必要に応じて25,000人の予備兵を招集する命令を承認し、軍は国内に「特別事態」を宣言して、境界線から80キロ以内の地域において学校を閉鎖し、活動を規制した。
月曜のヨルダン川西岸地区への軍事襲撃による、イスラム聖戦指導者バッサム・アル・サアディ氏逮捕に対する報復攻撃に備え、イスラエルは今週、ガザ地区周辺の道路を封鎖し、境界地域に援軍を派遣した。この襲撃の際のイスラエル軍とパレスチナの武装組織による銃撃戦で、10代のイスラム聖戦メンバー1人が死亡した。
ハマスは、2007年にライバル関係にあったパレスチナ人勢力に代わって沿岸のガザ地区を掌握した。直近のイスラエルとの戦争を2021年5月に経験しており、イスラエル国内で相次ぐ攻撃、ヨルダン川西岸地区におけるほぼ毎日の軍事作戦、一触即発のエルサレムの聖地での緊張により、今年ふたたび両者の間で緊張が高まった。
イスラム聖戦指導者のZiad Al-Nakhalah氏はイランでAl-Mayadeenテレビネットワークの取材に応じ、「パレスチナ抵抗運動の戦士たちは共に立ち上がり、この侵略に立ち向かわなくてはならない」と述べた。同氏は「超えてはならない一線は存在しない」として、イスラエルによる攻撃を非難した。
ハマスのファウジ・バルフム報道官は「ガザとの対立激化の口火を切り、新たな犯罪を行ったイスラエル側の敵は、その代償を払い、全責任を負わなければならない」と述べた。
イスラム聖戦はハマスより小さな組織だが、ハマスのイデオロギーの大部分を共有している。両組織は共にイスラエルの存在に反対し、長年にわたってイスラエルに対してロケット弾発射などの激しい攻撃を数多く行ってきた。ハマスがどの程度までイスラム聖戦をコントロールしているかは不明であり、イスラエルはガザ地区からの全攻撃の責任はハマスにあるとしている。
イスラエルとエジプトは、ハマスが支配権を握って以来、ガザ地区に対する厳しい封鎖を続けてきた。イスラエルは、ハマスが軍事力を強化するのを防ぐために封鎖が必要だとしているが、評論家らはこの政策は集団的懲罰に相当すると述べている。
シファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長は、イスラエルが今週に入ってガザ地区を完全封鎖したため、病院は物資不足に直面していると述べた。
院長は、平時であれば5日間もつだけの物資と必須医薬品があったが、新たな戦闘が始まったため、「すぐにも底をつく可能性がある」という。
イスラエルはガザ地区で唯一の発電所への予定されていた燃料供給を中止した。燃料がガザ地区に入ってこなければ、発電所は土曜早くに運転を停止すると予想されていた。発電所がフル稼働している時でも、ガザ地区の人々は毎日数時間続く停電に耐えている。
金曜に、ハマスが保持するイスラエル兵2名の遺体の返還を求めて、ガザ地区付近で数百人のイスラエル人がデモを行った。
デモ集団を率いていたのは、2014年のガザ戦争でオロン・シャウル氏とともに死亡したハダル・ゴルディン氏の遺族。ハマスはイスラエルに拘束されている数千人のパレスチナ人服役囚の一部と交換することを目指し、2人の遺体とガザ地区に迷い込んだ精神障害を抱えていると思われるイスラエルの民間人2名を返さずにいる。
イスラエルは、兵士の遺体と拘束された民間人が返されない限り、封鎖解除に向けた大きな動きはあり得ないとしている。イスラエルとハマスはエジプトの仲介によって、身柄交換の可能性に関して度々話し合いを重ねてきた。
AP通信