
ハゼム・バロウシャ
ガザ市:イスラエルとガザ地区の境界地域が比較的平穏だった1年強の期間は、イスラエルが金曜日に「イスラム聖戦」に対する軍事作戦を開始したことで終わりを告げた。翌日の土曜日も、イスラエルはガザ地区を空爆し、パレスチナ人はイスラエルの都市に向けロケット弾を発射した。
イスラエルは金曜日、ガザ市の高層ビルに対して日中に奇襲空爆を行って同組織の上級司令官の一人を殺害し、ロケット弾の集中砲火による報復を引き起こした。
土曜日には、ロケット弾発射の準備をしていた「イスラム聖戦」の拠点と戦闘員を攻撃したと発表した。目撃者によると追加の空爆は5つの建物を標的としたもので、爆発がガザ市を揺るがし大きな煙と破片を空中に舞い上げた。
パレスチナの武装組織は160発以上のロケット弾をイスラエルに向けて発射した。テルアビブとエルサレムの間にあるイスラエル中部の都市モディーンほど遠くの場所でも、空襲サイレンが鳴り響き人々が防空施設に駆け込んだ。
「イスラム聖戦」は、イスラエルの主要な国際玄関口であるベン・グリオン空港を標的としたと発表した。しかしロケット弾はそこまで届かず、約20km外れたモディーン近郊に落下した。民間航空局によると、空港は飛行ルートを調整したうえで通常通り運航している。
イスラエルの救急隊によると、ミサイルの大半は迎撃されたため死者や重傷者は報告されていない。
金曜日の空爆で十数人のパレスチナ人が死亡した。その中には、ガザ東部のシェジャイヤ地区に住んでいた5才のアラちゃんも含まれていた。
彼女の祖父のリヤド・カドゥムさんは、「この子が何か悪いことをしたのでしょうか。紙と鉛筆と制服の他は何もいらない幼稚園生が」と嘆いた。彼女は路上で遊んでいた時に死亡した。
イスラエルは金曜日の午後、「イスラム聖戦」に対して「夜明け作戦」と呼ばれる軍事作戦を開始し、パレスチナ・タワーの一室にいたタイシール・アル・ジャバリ上級司令官を暗殺した。
「イスラム聖戦」の軍事部門「アル・クッズ旅団」は金曜日の午後9時、ガザ地区からイスラエルの都市や町に向けてミサイルの発射を開始した。
「イスラム聖戦」は声明の中で、「敵側に全ての責任がある(…)我々に対する宣戦布告を意味する今回の攻撃に対して容赦なく反撃する」と述べた。
「全ての抵抗勢力とその軍事部門に対し、一致団結してこの攻撃に反撃しこのテロ行為に立ち向かうよう呼びかける」
ガザ地区を支配するハマスは、イスラエルへのロケット弾発射への関与を公式には発表していないが、イスラエルによる空爆を非難した。
ハマスのハゼム・カセム報道官は声明の中で、今回の戦闘「は占領軍との間で進行中の偉大な戦いの一環であり、その戦いは解放と帰還という我々の目標が達成されない限りは終わらない」と述べた。
沿岸部の狭い飛び地であるガザ地区には約230万人のパレスチナ人が密集している。イスラエルとエジプトは安全保障上の懸念を理由に、同地区への人と物資の出入りを厳しく制限し、海上封鎖を実施している。
イスラエルは金曜日の空爆開始の直前、ガザ地区への燃料の計画輸送を停止した。その結果、同地区唯一の発電所が機能しなくなり、1日約8時間しか電力が供給されなくなった。保健当局は、数日以内に病院が深刻な影響を受けるだろうと警告した。
電力会社の広報担当者のモハメド・タベット氏は、「ガザの発電所は燃料不足で(稼働を)停止している」と発表した。
イスラエルがガザ地区への物資と人の出入りを遮断した火曜日以降、この発電所はイスラエルから燃料の供給を受けていない。 タベット氏によると、電力供給は1日わずか4時間にまで減少する見込みだという。
戦闘の長期化を恐れて、パン屋や食料品店の前に数十人のガザ住民が列を作った。
パン屋で並んでいたラミ・クデイルさんは、「昨夜は一睡もできませんでした。爆撃が激しくて爆発の音がとても大きかったので。この戦闘がいつまで続くのか、何日耐えなければならないのか分かりません。早く終わって欲しいです」と語る。
イスラエルは先週、ヨルダン川西岸地区北部の都市ジェニンにおいて「イスラム聖戦」の幹部バサム・アル・サーディ氏を逮捕したことを受け、個人用のエレズ検問所と商業用のケレム・シャローム検問所を閉鎖した。
パレスチナ保健省は、医薬品・医療用品の深刻な不足と、パレスチナの病院の発電機を稼働させるための燃料の不足のため、72時間以内に医療サービスが停止するだろうと警告した。同省は声明の中で、「これからの時間は決定的かつ困難なものになる」と述べた。
エジプト、国連、カタールは戦闘終結に向けた努力を続けている。戦闘がさらに激化するかどうかは、ハマスが参戦を決めるかどうかに大きくかかっている。
イスラエル軍は金曜日の夜、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区を襲撃して「イスラム聖戦」の戦闘員19人を逮捕し、ガザ地区では同組織のロケット弾製造施設と発射装置を攻撃したと発表した。
土曜日の午後、ガザ市の通りにはほとんど人けがなかった。アル・ジャバリ氏が死亡した現場では、瓦礫、ガラス、家具が路上に散乱していた。
近くに住むマリアム・アブ・ガニマさん(56才)によると、イスラエル軍は以前の戦闘時とは異なり攻撃前に警告を出さなかったという。
ロイターが伝えたところによると、イスラエル軍の報道官は、この奇襲空爆ではビルの特定の階を標的とする精密な手段を用いることで民間人の犠牲を回避する努力をしたと述べた。
軍ラジオによると、イスラエルはガザ地区近傍の南部地域に特別な安全保障措置を課し、約2万5000人の兵士を招集する準備を進めているという。