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レバノンは世界最大のポンジスキームだったのか

世界銀行によるレバノンの財政調査は、レバノンを苦しめている経済崩壊の原因が、凝り固まった政治エリートであると非難している。(AFP)
世界銀行によるレバノンの財政調査は、レバノンを苦しめている経済崩壊の原因が、凝り固まった政治エリートであると非難している。(AFP)
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09 Aug 2022 02:08:43 GMT9
09 Aug 2022 02:08:43 GMT9
  • 世界銀行が調査を行い、政治エリートは公共サービスの提供を弱めるために「意識的な努力」をしていると非難している
  • 報告書によると、安定を装って経済への信頼を高めるために過剰な債務が使用されていることが明らかになっている

レベッカ・アン・プロクター

ドバイ:2020年8月4日のベイルート港爆発事件から2周年を迎える前日、世界銀行は、レバノンの金融危機と同国の経済崩壊を不可避にしたと思われる欺瞞行為に関する、厳しい報告書を発表した。

『ポンジファイナンス?』と題したこの報告書は、1993年以降の地中海沿岸諸国の経済モデルを、イタリアの詐欺師カルロ・ポンジ氏にちなんで名付けられた投資詐欺「ポンジスキーム」になぞらえている。

1920年代、ポンジ氏は国際郵便クーポンへの投資と称して、数ヶ月で50%のリターンを投資家に約束した。ポンジ氏はその後、新しい投資家からの資金を使って、以前の投資家に偽の「リターン」を支払った。

世界銀行の報告書は、内戦終結後のレバノンでも同様の欺瞞行為が行われ、それによって公的資金が国の財源の獲得に使われ、「財政と経済の手段を用いて国家機関を道具化した、既得権益の政治経済の利益への奉仕」が行われていると主張している。

この報告書によると、過剰な債務の蓄積は、経済が安定していると錯覚させ、商業銀行の預金が流入し続けるように経済への信頼を強化するために利用されてきたという。この調査では、レバノンの「長期的な財政赤字を分析して、財政赤字の原因と最終的な債務超過を明らかに」している。

同時に、この報告書によると、レバノン国民を犠牲にしてごく少数の人々の利益のために公共サービスの提供を弱めようとする「意識的な努力」がなされてきたという。その結果、国民は質の低いサービスを受けながら2倍の料金を支払うことになっている。

この報告書を作成した世界銀行の専門家は、レバノンの金融危機を「意図的な不況」と表現している。なぜなら、この30年間にわたって「人々の預金のかなりの部分が、商業銀行の預金という形で不正に使われ、正しく支払われていない」からだ。

「レバノン国民にとって重要なのは、内戦後の経済、すなわちレバノン第二共和国時代の経済の、中心的な特徴が失われ、二度と戻ってこないことを認識することである。また、これが意図的に行われたものであることを知ることも重要である」

港や市街地を破壊した爆発から1周年にあたる2021年8月4日、首都ベイルートの中心部にあるレバノン議会本部近くで、軍や治安部隊との衝突中に、レバノンの国旗を掲げて立っている抗議者。(AFP/資料写真)

この報告書は次のように付け加えている。「これらは、異国の地で苦労して働く自国民による収入である。これらは、市民の老後の資金であり、おそらく、尊厳ある生活を送るための唯一の財源である。これらは、政府が何度も提供に失敗してきた、必須の医療および教育サービスに必要な資金である。これらは、レバノンの国営電力会社の大失敗を考慮した電気代を支払うための資金である」

レバノンは2019年以降、過去最悪の財政危機に陥っており、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる経済的負担と国内の政治停滞によって、さらに悪化している。

2019年10月、レバノン人は政治と経済の変革を求めて、短命に終わった「サウラ」(革命)で街頭に繰り出した。彼らの希望は、2020年8月4日のベイルート港爆発事件のトラウマですぐに打ち砕かれた。その爆発で218人が死亡、7,000人が負傷し、30万人が家を失ったのである。

こうした危機が重なり、レバノンの大勢のトップレベルの医療専門家や教育者を含む何千人ものレバノン人が、安全と機会を求めて海外に流出した。

世界銀行によるレバノンの財政調査は、レバノンを苦しめている経済崩壊の原因が、凝り固まった政治エリートであると非難している。(AFP)

レバノンの経済学者や金融アナリストは、世界銀行のポンジスキームの比喩にほぼ同意している。

経済産業相やレバノン中央銀行副総裁を務めた、レバノンの政治家であり経済学者であるナーセル・サイディ氏はアラブニュースに対し、「レバノンは経済史上最大のポンジスキームです」と語った。

サイディ氏は、レバノンの不幸は、歴史を通じて世界の他の国々が経験した金融危機とは異なり、政府がコントロールできないような個別の災害が原因ではないと述べた。

「レバノンの場合、それは実際の災害によるものではなく、商品の輸出価格の急落によるものでもなく、事実上、人為的なものです」

「世界銀行はポンジファイナンスについて述べていますが、数十年にわたって2つの赤字があるという事実を指摘するのは正しいことです。1つは、政府が歳入を上回る支出を続けたことによる財政赤字です」

「問題は、政府の支出が生産的な目的に使われなかったことです。インフラへの投資や人的資本の整備に使われることはありませんでした。経常支出のために使われました。つまり、実質的な資産を築けなかったのです。借金は増えましたが、それに比例して、あるいは負債と比較して、資産を増やしたわけではなかったのです」

内戦終結後、レバノンは復興期を迎えているはずだった。しかし、そのようなインフラプロジェクトへの支出は少ないままであり、その資金は他に吸い取られたような状態だった。

「電気、水、廃棄物処理、交通、空港の再編など、必要なインフラは放置されたままでした」とサイディ氏は述べた。

2022年5月13日、ベイルートで国を破滅させた高官汚職を非難する行動の際、偽のATMの前で、ドルではなく「ロル」という偽の100ドル札(上の写真)を見せるレバノンの活動家。(AFP)

しかし、放置されたのはこの種の物質的なインフラだけではなかった。ガバナンスや説明責任や包摂性を向上させ、強固にするはずだった制度も放置され、悪用されやすいままになっていたのである。

「内戦を経験するたびに、戦争の原因を考える必要があります。その多くは、政治の機能不全、政治的分裂、国家機関の崩壊に起因しています」とサイディ氏は述べた。

「国家機関の再建は行われず、そのために財政赤字が続き、非常に腐敗した政治階級が国家を所有するようになったのです。彼らは国有企業や政府関連企業に入り込み、国の資産はすべて自分たちの所有物であり、国の所有物ではないと考えたのです」

レバノンの「ポンジスキーム」は、経常収支の赤字と、中央銀行の対ドル固定金利政策による為替レートの過大評価によっても引き起こされていた。

サイディ氏によると、これは経済学でいうところの「不可能な三位一体」であり、つまり、国家が、固定為替レート、自由な資本移動、金融政策の独立性を同時に持つことはありえないと述べている。

港で無造作に保管されていた硝酸アンモニウムによる爆発は、核以外の爆発としては史上最大級であり、200人以上の死者、数千人以上の負傷者を出し、首都の広大な地域を破壊した。(AFP/資料写真)

「為替レートを固定化すれば、金融政策の自由がなくなります。レバノンの中央銀行は、不可能な三位一体に挑んで、為替レートがますます過大評価されていく中で、独立した金融政策を維持しようとしたのです」

レバノン中央銀行は通貨を保護するために借入を増やし、2015年には銀行システムを救済したが、その間ずっとシステムは健全であると主張し、そうではないと主張するIMFの報告書を隠していた。

レバノンの元投資・技術担当大臣であるアデル・アフィオーニ氏はアラブニュースに対し、「世界銀行の報告書には、危機が始まった当初から我々全員が言ってきたことが書かれています」と語った。

「もちろん、この危機は予測できたことです。何年も前から徴候がありました。対GDP比の債務残高と、この対GDP比の債務の持続不可能性と、増え続ける持続不可能な赤字、そして (中央銀行の) 無責任な財政管理のやり方は、何年も前から危険信号だったのです」

「通常の国家であれば、財政赤字と債務を減らすために財政を管理する一連の措置を発表することで、責任ある対応をとります。しかし、レバノンではそうなりませんでした。現当局は、2019年以前の危機を回避する方法と、2019年以降の危機を管理する方法の、基本原則を無視しています」

2022年4月、レバノンはIMFとの間で、一連の経済改革と引き換えに46ヶ月間の延長資金枠で、約30億ドル相当を付与する資金調達取引の草案に合意した。しかし6月に、レバノン銀行協会がIMFの合意案は「違法」であるとして、プロセスを停滞させた。

「これは、危機の2年半後ではなく、最初の数週間で起こるべきだった最初のステップです」とアフィオーニ氏は述べた。「しかし、資金を得る前に抜本的な改革が必要であり、それらの改革が本格的に実施される兆しは今のところありません」

世界銀行の報告書は、ガバナンス・説明責任・包括性に重点を置いた、マクロ経済・金融・セクターの包括的な改革プログラムを求めている。これらの改革が早期に開始されればされるほど、レバノンの人々にとって復興への痛手は軽減されるとしている。しかし、それは一夜にして実現するものではない。

「改革と法律が可決されたとしても、信頼を回復して修復するには時間がかかるでしょう」サイディ氏は述べた。「銀行システム、国家、中央銀行に対する信頼は破壊されました。その信頼が回復しない限り、レバノンは投資を呼び込むことができず、世界の他の国々から援助してもらえることもないでしょう」

レバノンは5月に選挙を行い、反汚職派の無所属議員を国会に送り込んだが、サイディ氏は彼らの影響力が変化を促すのに十分かどうか疑問視している。

「新議員が13人ほど国会に入りましたが、彼らが必要な変化を起こすとは思えません」と彼は述べた。「政治的には、ビジネスはいつも通り継続します。現実を完全に否定しているのです」

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