• 為替レートは年初来で約300%下落した

ナジャ・フーサリ

ベイルート：レバノン・ポンドが記録的な速さで下落し、24時間で2万ポンド下落した後、21日午後、1米ドル＝14万3000レバノン・ポンドに達した。

ベイルート、トリポリ、ベッカー高原で、数百人もの人々が街中で抗議行動を行い、道路を封鎖したり、タイヤに火をつけたりした。

一部のガソリンスタンド、スーパーマーケット、薬局が21日の営業を停止。デモ隊のせいで、首都ベイルートの人気の高いマズラー・コーニッシュ地区の店舗も閉鎖せざるを得なかった。

ベイルートのジャマール・アブドゥル・ナーセル・モスク近くにいたあるデモ参加者は、レバノンの政治家や闇市場で為替レートを操作している人々を声高に非難し、次のように問いかけた。

「もうすぐラマダンの月を迎えるというのに、私たちにどうして欲しいのでしょうか。一体全体、国会議員たちはどこで何をしているのでしょうか。国会議員の汚職のようなことを、国民もしていたというのでしょうか」

怒りの抗議行動は、「2023年世界幸福度報告書」で、レバノンがアフガニスタンに次いで世界で2番目に幸福度が低い国とされた翌日に起こった。

国連の監督下で毎年発表される報告書では、主要な6つの変数、「 1人あたりGDP」、「社会的支援」、「健康寿命」、「人生の選択の自由度」、「寛容さ」、「腐敗の少なさ」が使用される。

レバノン・ポンドの対米ドル為替レートはこれまでのところ、年初来で約300%下落した。

すべての商品が米ドルで価格設定されているレバノンの市場は、今回の下落でかつてない混乱に陥った。購買力が低下し、公共部門の平均月給は現在、月150ドル程度となっている。

経済アナリストのムニール・ユネス氏は次のように述べた。「為替レートはわずか10日間で30%下落しました。輸入に充てられる資金と現地の市場で入手できる輸入量とのギャップが大きくなっていますが、中央銀行が枯渇しつつある準備金で資金を支えるのに消極的なため、輸入量を抑制せずにこの為替崩壊を抑制する方法はないでしょう」

現地通貨が闇市場で下落し続ける一方、銀行はストライキを再開し、政治的膠着状態が広がり、市民は突発的に街頭に出ては、ありとあらゆることで抗議行動を行っている。

治安関係筋は、状況はいつでも崩壊する可能性があると懸念した。

燃料販売業者は22日午前までに、燃料価格を「ドル化」する決定を水曜日の朝までに国に通告することにした。

燃料販売業者の代表であるファディ・アブ・シャクラ氏はアラブニュースに対し、次のように語った。

「販売業者やガソリンスタンドのオーナーは、エネルギー省によって設定された価格表―1日に3回改定」されたとしても―と、刻々と変化する為替レートとの差額を負担できません。国が決断しないなら、私たちは自ら、価格を「ドル化」します」

21日、20リットル缶のガソリン価格が239万レバノン・ポンドに達し、20日の価格を16万8000レバノン・ポンド上回った。

レバノン薬剤師連合は、製薬会社と倉庫が2週間以上前に医薬品の配送を停止したため、薬局の閉鎖を決定した。

「総体的に見て、崩壊状態に陥っています。医療部門が最も大きく影響を受けており、患者は直接影響を受けています」と、薬剤師連合の代表、ジョー・サルーム氏は述べた。

ミシェル・ダハル国会議員は、国家の経費を補填したいときにはいつでも市場に介入しているではないか、とレバノン中央銀行を非難した。「国民は飢えており、パッチワーク的手法の資金調達によるこの悲惨な結果にはもう耐えられなくなっています」

アシュラフ・リフィ国会議員は次のように述べた。

「武器と腐敗の同盟であるマフィアが、レバノン人が環境に適応しているという錯覚に陥っている間に、我々は急速にもっと危険な段階へと進みつつあります。火山はいずれ噴火するのです。

もはや腐敗した人たちに責任を負わせておく余裕はありません。国会議員が救済案の責任を負うべき人物を選ばなければなりません」

全国労働組合代表のベシャラ・アル・アスーマル氏は次のように述べた。「為替レートの異常な低下と、それに伴う日用品、食料品、燃料などの価格高騰に対応する意思が当局に見られないため、包括的なストライキを組織する必要があります」

同氏は次のように付け加えた。「耐え難い状況です。政府関係者は互いに胸襟を開いて話し合わねばなりません。トルコやイランを含むこの地域全体が、対話、開放、政治的解決に向かう地域へと変化しているのです」

21日遅く、レバノン中央銀行は、21日の時点で1ドル＝9万レバノン・ポンドに設定されているSayrafaの為替レートに基づき、「レバノン銀行券を買い、ドルを売って現金化するプロセスをオープンかつ継続的に実施する」と発表した。

レバノン中央銀行の発表後、為替レートは1ドル＝10万レバノン・ポンドまで戻し、現地時間午後5時30分時点で1ドル＝11万6000レバノン・ポンドで落ち着いたため、闇市場でも現地通貨の価値をいくらか回復した。