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OPECプラスとイード祭の妥協点とは:終わりよければすべてよし

イラスト画像(ロイター)
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20 Jul 2021 01:07:38 GMT9
20 Jul 2021 01:07:38 GMT9

終わりよければすべてよし:OPEC(石油輸出国機構)の長年の強力な加盟国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の間で、アブダビの減産の計算に使われるベースラインの引き上げの認可について2週間にわたる議論がなされていたが、イード祭前の大筋合意が成立した。

OPECプラスは来年末までの間、毎月、40万バレル/日の増産を行う予定となっている。UAEは来年5月からベースラインを30万バレル/日をわずかに上回る程度の引き上げが可能になる。サウジアラビアおよびロシアは50万バレル/日の引き上げ、クウェートおよびイラクは15万バレル/日のベースラインの引き上げが可能となる。

今回の合意は、あらゆる面において両者に有利な解決策となった。UAEは生産能力への大規模な投資および契約期間の長さから必要と判断して、ベースラインの引き上げを行う。

ロシアとサウジアラビアはベースラインを上方修正、クウェートも同様にベースラインを上方修正する。OPECプラスの事実上のリーダーであるロシア、そして特にサウジアラビアは、OPECプラスの減産に合わせて生産量を大幅に下方修正させていた。

今年の初め、厳しい状況下になった時にサウジアラビアが100万バレル/日の自主的な追加削減を行ったことは忘れてはならない。イラク政府は慢性的に割り当て量を超過しているが、同国の生産量の上方修正はその救いとなるだろう。

結局、国際石油市場にとって日曜日は、協定の延長および漸進的な生産量増加の放出という意味において「イード祭の手土産」となった。

コーネリア・メイヤー

今回の合意は何よりも、現在200万バレル/日以上の供給不足に陥っている石油市場にとっての勝利である。8月にOPECからの増産がゼロになることが困難な問題となるところだった。とはいえ8月の生産量はかなりの部分が固定されており、新合意による完全な救済は9月になるまでは実感できないだろう。

現行の合意を2022年4月以降に延長することは、時間軸を延長し、非常に不確実な時代に市場に予測可能性を与えるという意味で賢明な行動であった。 最新のOPEC月次石油市場報告書では、2021年の需要を平均960万バレル/日と予測している。そして2022年末には需要が1億バレル/日を超えることが予想されている。パリに本拠を置く国際エネルギー機関(IEA)も同様の数字に落ち着いた。 2021年には540万バレル/日、2022年には300万バレル/日の石油需要の増加が見込まれている。国際エネルギー機関のファティ・ビロル事務局長は、市場の非常に厳しい状況を踏まえ、OPECプラスにさらなる原油の提供を切実に訴えている。

この新たな妥協案では、OPECプラスが保留している残りの580万バレル/日が市場に放出されるまでの間、一貫して減産量を縮小していく予定となっている。

市場の逼迫した状態を考慮するとこのペースは遅い印象を与えかねないが、特にスエズ以東で新型コロナウイルス(COVID-19)の悪性デルタ株の急速な流行拡大によって需要の不確実性が高まっていることを考えると、慎重なアプローチが望ましいと思われる。また、供給に関しても不確実な面がある。例えば核交渉が進展した場合、イラン産の原油がどれほどの速さで世界市場に戻ってくるかということだ(イランやリビア、ベネズエラの3カ国は、内政上・地政学上の理由から現在OPECプラスによる制限を受けていない)。

結局、国際石油市場にとって日曜日は、協定の延長および漸進的な生産量の増加の解放という意味において「イード祭の手土産」となった。OPECプラスの加盟国も最後には、必要に応じて妥協点に到達できることを証明されたことはさらに重要な点である。 昨年4月にパンデミックが世界を席巻し、さらにWTIがマイナスに転じたことで、石油市場は実質的に崩壊していた。しかし2020年5月時点で970万バレル/日の減産を行ったことにより、その市場が息を吹き返したということは忘れてはならない。

  • コーネリア・メイヤーは博士号を持つ経済学者。投資銀行および産業界における30年の経験を有する。ビジネスコンサルタント会社Meyer Resourcesの会長兼CEOを務めている。
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