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レバノンの「死の船」、潜水艦による回収作業が開始される

潜水艦の出発プラットフォームの傍を通り過ぎる、犠牲者親族を乗せたレバノン海軍の船舶。潜水艦は、4月に移民らを乗せたまま転覆した船を発見するために調達された。2022年8月22日、トリポリ。(AFP)
潜水艦の出発プラットフォームの傍を通り過ぎる、犠牲者親族を乗せたレバノン海軍の船舶。潜水艦は、4月に移民らを乗せたまま転覆した船を発見するために調達された。2022年8月22日、トリポリ。(AFP)
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23 Aug 2022 03:08:16 GMT9
23 Aug 2022 03:08:16 GMT9
  • 国外居住レバノン人の資金提供により、悲劇的な沈没事故で亡くなった30人の遺体を回収する作業が行われる
  • 弁護士11人が犠牲者遺族を代表して、レバノン海軍関係者13人に沈没事故の責任を問う訴訟を起こしている

ナジャ・フーサリ

ベイルート:今年4月、レバノン北部の沖合でボートが転覆し30人以上が死亡した。犠牲者の大半は女性や子供だった。月曜日、オーストラリアに住むレバノン人らの資金提供により特殊な潜水艦を使った探索が行われ、いわゆる「死の船」の残骸が発見された。

当局によると、4月23日の転覆時に船内に閉じ込められた人々の遺体が発見された。

少なくとも85人の移民(大半がレバノン人だがシリア人やパレスチナ人もいた)がこの船に乗っていたとされる。密航のためにイタリアに向かう途中、夜間作戦中のレバノン海軍によって阻止された。

船に乗っていた人数が多すぎた結果として転覆に至ったのか、あるいは一部の生存者が主張するように海軍の船舶が意図的に衝突したのかは、依然として不明である。

合計48人が救助され、7人の遺体が回収されたが、30人(大半が女性や子供)は今も行方不明だ。

この「死の船」の残骸が、トリポリ沖約90分、水深470メートルの地点で発見された。

この3人乗りの潜水艦の乗員は、レバノン海軍と調整を行ったうえで船の残骸を探索する作戦を開始した。

レバノン海軍のハイサム・ダナウィ長官によると、回収作業には数日間かかる見込みで、「追跡・監視を行っており、必要な設備も全て提供している」という。

レバノン国内治安部隊の元長官であるアシュラフ・リフィ少将によると、この潜水艦は転覆した船を撮影することでこの事故の調査に貢献し、また船の残骸や犠牲者の遺体の回収も行うという。

この潜水艦をレバノンで使用できるようにするうえで一役買った同少将によると、今回の作戦に必要な約25万ドルの費用は、オーストラリア救援機構との協力により国外居住レバノン人らの寄付によって調達された。

インドの企業が所有するこの潜水艦「パイシーズVI」は、水深2500メートルまで潜水できる。

レバノン当局によると、残骸がある現場の状況を監視し船の回収についての最新情報を提供する「作戦室」がトリポリの海軍基地に設置された。

初日の作戦は時化により延期を余儀なくされた。その後の月曜日に船が発見された。

配偶者や子供を亡くした生存者など、行方不明の犠牲者の遺族らは、海岸から進展を見守った。

一部の遺族は、レバノン政府が「彼らに対する責任を放棄している」と非難し、回収作戦への資金提供が民間組織や個人に任されていることを指摘した。

6月中旬には、弁護士11人が犠牲者遺族を代表して、レバノン海軍関係者13人に沈没事故の責任を問う訴訟を起こした。訴訟はまだ係争中だが、軍司令官のジョゼフ・アウン大将は「透明な調査」の実施を約束している。

犠牲者遺族は、船の回収が調査に寄与することを期待している。船内の遺体の身元確認にはDNA鑑定が使用される。

「死の船」の悲劇をよそに、レバノンから欧州に命がけで渡ろうとする移民が後を絶たない。直近の試みは土曜日の早朝に行われた。潜水艦による回収作戦開始の24時間前のことだった。

これら3隻の貧弱な漁船は、それぞれにレバノン北部の村から来た65人以上の男女や子供、およびシリア人やパレスチナ人を乗せて、同国北部から出航したとみられる。彼らの無事はまだ確認されていない。  

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