
チャーリー・ピーターズ
ニューヨーク市: 16日金曜日のマフサ・アミニ氏死亡事件(「不適切」なヒジャブ着用のかどで警察が殴打した後に22歳のイラン人女性が死亡した事件)への抗議活動でイランが全国的に揺れている中、イブラヒム・ライシ大統領は、今週ニューヨークで開かれる国連総会に出席した。彼は国内で膨らむ怒りから逃れることを願っていたかもしれない。
しかし彼は、ニューヨーク市において、テヘラン政権により人質とされたイランの反体制派や西洋人らが、自分たちが受けた拷問や虐待にライシ大統領が個人的に関与したと非難して提訴した訴訟の送達を受ける虞に直面している。
この訴訟は、イラン民主化全国連合(NUFDI)による支援のもと、人権派弁護士シャヒーン・ミラニ氏が、ライシ氏の犯罪行為の被害者らを代理してニューヨーク南部地区裁判所に提訴したものである。
原告は、ライシ氏が直接命令したか実質的に支援した拷問行為を受けたと主張しており、これは、イラン大統領が米国の拷問被害者保護法に基づく民事訴訟の被告となる責任を有することを意味する。
NUFDIの政策ディレクターであるキャメロン・カーンサリニア氏は、マンハッタンのミッドタウンにあるプライベートクラブでの記者会見で、原告を紹介した。
彼は「我々は今日、イブラヒム・ライシ氏に対する歴史的な連邦法上の民事訴訟を発表し、その概要を説明するために記者会見を開きました」と言った。
「本訴訟の原告らは、イラン反体制派、イラン人や西洋人の元人質であり、正義を求めて一歩前進するために、前例のない形で集結しました」
国連総会の傍らで、カーンサリニア氏はアラブニュースに対して次のように語った。「ライシ氏は現在ニューヨークにいます。メディアが彼を報道する間、彼の被害者についても報道されることが重要なのです」
「私たちは、イブラヒム・ライシ氏の被害者らが彼に立ち向かっていること、彼が拷問で告発され、我々の見解では有罪であることを米国の司法に記録させたいのです。これは、このような案件に対する新たな判例を築くうえで重要なことです」
「第二に、我々はイランの人々やライシ氏の被害者に声を与え、彼らが初めて声を上げられるようにしています。長い間、彼らはこの政権によって、そして不幸にも、しばしば西欧によって、声を奪われてきたからです。だからこれは、彼らが今真実を語るための貴重な機会なのです」
NUFDIが支援した記者会見では、4名の被害者がイラン政権の手による自らの経験の詳細を語った。市会議員で反体制派のメフディ・ハジャーティ氏、イギリスとオーストラリアの学者で元人質であったカイリー・ムーア・ギルバート氏、ベルギーとイランの学者で元人質であったハミッド・ババエイ氏、および政治犯として収容されていたアフマド・バテビ氏である。
さらに、かつて政権によってテヘランで拘束され、拘束されているジャーナリストとして世界最年少であったナヴィド・モヘビ氏が加わった。本件訴訟の主任代理人であるミラニ氏は、この民事訴訟は、イラン・イスラム共和国全体ではなく、個人としてのライヒ氏を直接対象とするものであることを強調した。
ムーア・ギルバート氏は数年に亘る拘束中の「重大な虐待」および「心理的・身体的拷問」について詳細に語った。ライシ氏は、彼女が有罪判決を受け、上訴を棄却され、刑務所に移送された時点でイランの司法当局の長であった。彼女は、自身が被った「虐待と不正義の最終的責任は彼にある」と語った。
彼女は、彼女を裁いた裁判官は、「明らかに政府の操り人形」であり、「独立した判断を下す能力」は無かったと述べた。彼女は、聴聞手続の2,3週間前まで、自分が弁護人を有していることすら知らなかったと付け加えた。
ムーア・ギルバート氏はビデオ通話で発言し、「裁判に証拠を提出することができず」、そして、審理は全てペルシャ語で行われたため理解できなかったと語った。彼女はスパイ行為という「ばかげた罪」で懲役10年の刑を言い渡された。彼女はただちに7ヶ月間独居房に収容されたが、これは、彼女が受けたという残酷で不当な刑罰の一例であり、他には感染性疾患にさらされ、医療措置を拒まれたこともあった。
ムーア・ギルバート氏は、ライシ氏について「私の受けた虐待に対する最終的責任があります」と語り、「私はTVPAに基づくこの訴訟に参加することで、私自身への不正義に対する責任をライシ氏に取らせようとしているのです。」と付言した。
イランで不当収容された学者であるババエイ氏は、拘束中に被った不快な状況を説明し、囚人は飲料水用のコップさえ与えられなかったと明かした。
彼は「絶え間ないトラウマの中で生きていました」と語り、仲間の囚人が絞首刑に処されるために連れ去られるのを目撃し、次は自分ではないかという恐怖が続いていたと述べた。
モヘビ氏は、イラン人は「過去43年間、継続的なトラウマにさらされてきた」と語った。
彼は刑務所での経験を語り、「被告人の処罰は既定事項」である司法制度全体が自分に不利に働いていると感じたと述べた。
彼は「政権の生き残りや犠牲者らは、私たちの魂と回復力は決して壊せるものではなく、人間の尊厳を求める我々の戦いは決して負けないという非常に明確なメッセージを、この訴訟を通じてテヘランの虐殺者たちに送ります」と語った。
彼は、今回の訴訟は3つの事案を裁判所に提起するものだが、これらの事案は「正義を表現する権利、自己を表現する権利、苦しみを表現する権利を奪われた何千人ものイラン人を代表するものです」と付言した。
人権活動家であり、中東研究所の非常勤研究員であるマルジャム・キープール・グリーンブラット氏は、アラブニュースに対して次のように語った。「私がここにいるのは、政権によって日常的に権利を侵害されているイランの人々の権利を支援するためです。私は彼らの声を代弁し、正義がほとんど見られない場所に正義があることを確認するためにここにいるのです」
正義はライシ氏に対する本民事裁判の最終目標である。しかし、何千人もの人々が拒まれてきたこの正義を実現するのは難しいかもしれない。
アトランティック・カウンシルの戦略的訴訟プロジェクトのディレクターであるジスー・ニア氏は、アラブニュースに対し、TVPAは「他の地域における犯罪行為への救済を求めることができるため、本件でこの法律を用いるのは正しいことです」と述べた。
また、彼女はこう付け加えた。「弁護団は送達を希望していますが、送達が行われれば、免責に関する判断が下されることになります。本件についていえば、もし被告が(例えば)フランスやドイツの政府首脳であったとしたら、裁判所は、ライシ氏は国家元首の特権で保護されているという司法判断を下すでしょう」
「しかし、今回はイランです。そして米国法でイランに適用される国家免責にはいくつかの例外がありますから、裁判所が国務省に意見を求めるかもしれません。この手続には時間がかかるかもしれませんが、訴訟手続が先に進む可能性はあります」
もっとも、ライシ氏は民事訴訟に応じる義務はない。もし彼が訴訟手続に参加しなかった場合、裁判所は彼に対して、原告に有利な欠席判決を下す可能性がある。
大統領は国連のイラン常設代表部の一員ではないため、外交特権を受ける資格はない。しかし、国連本部とその周辺地区にいる間、およびそこから宿泊先までの移動中は、法的文書を送達されないという保護を受けている。しかし、ニューヨークでの宿泊先や、公務以外の活動が国連管区の外にある場合は、そこで法的文書の送達を受ける可能性がある。
イラン政権の元囚人であるニザール・ザッカ氏は、アラブニュースに次のように語った。「この訴訟で最も重要なのは、イラン政権が、1979年以来行ってきた人質拘束などの活動をやめるまで、どこに行っても追われ、訴追されるということを知るべきだということです」
長年にわたる不当な監禁で身体的・心理的トラウマに苦しみ続けている反体制派のイラン人と元人質であった西欧人らは、今週、ニューヨーク市でその狩りを続けている。