
トリポリ:リビアに駐在する国連派遣団は、地中海沿岸の都市サブラタ付近で15人の移民が殺害された「凶悪な虐殺」事件を強く批判するとともに、密航業者を非難し、法の裁きを求めている。
国連とリビアの赤新月社(Red Crescent)によると、遺体は7日朝に海岸で発見され、そのほとんどが黒焦げのボートの中で焼かれていたという。
国連リビア支援団(UNSMIL)は声明で、「正確な状況はまだ解明されていないが、殺害は対立する密航業者同士の衝突が原因だと伝えられている」と述べた。
UNSMILはリビア当局に対し、「すべての加害者を裁くために、独立した透明性のある捜査を速やかに確保すること」を要請した。
リビアは、2011年にムアンマル・カダフィ大佐を打倒した民衆蜂起以前から、秘密裏に移住するための重要な密航ルート上にある国だった。
無法地帯となったリビアは、地中海を渡って欧州に向かうための世界でも最も危険な移民ルートとして、その地位を不動のものとしてしまった。
イタリアのランペドゥーサ島からわずか300kmのところにあるリビア西部の都市サブラタの密入国請負業者は、引き続き主要な役割を担っている。
移民たちは密入国組織の手によって、しばしば非道な扱いを受けている。
人権団体は、リビア当局や国の援助を受けて活動する武装集団による拷問やその他の虐待行為を、繰り返し非難してきた。
今回の殺害事件についてUNSMILは、「移民や難民申請者がリビアで求めているような保護を受けていないこと、そして人身売買と犯罪を行う強力なネットワークによる広範な人権侵害を想起させる事件だ。
こうした行為を迅速に阻止し、その行為を行ったものを起訴する必要がある」と述べた。
1/3 UNSMIL strongly condemns the heinous killing on Friday morning of at least 15 migrants and asylum-seekers in Sabratah. Eleven charred bodies were found inside the docked boat with a further four wounded bodies found outside pic.twitter.com/tPJI01XPUv
— UNSMIL (@UNSMILibya) October 9, 2022
リビアのメディアは、事件は「密入国業者同士の争い」が発端となり、移民への発砲に繋がったと報じている。
犠牲となった移民は、主に同国の遠く南方に位置するアフリカ諸国からの人々だった。
これらの報道によると、事件に関与したグループの一つが、移民の乗るボートに火をつけたという。
国際移住機関(IOM)が10日に発表したところによると、今年に入ってから、14,000人以上の移民が渡航を阻止され、リビアに引き戻されたという。
これまでに地中海を渡ろうとした少なくとも216人が死亡しほか、724人が行方不明になったり、死亡したりしたとみられている。
ローマ法王フランシスコは移民を熱心に擁護し、彼らを排除する行為を「恥ずべき、嫌悪すべき、罪深い」と形容した。
その結果、イタリアの次期右派政権と衝突することになった。
フランシスコ法王は、「移民の父」として知られる19世紀の司教と、アルゼンチンで病人に奉仕した20世紀の人物を列聖する際、自らのコメントを残した。
移民支援を教皇職の主要課題としてきたフランシスコ法王は、サンピエトロ広場に集まった5万人の人々の前で式典を司会した。
その際、「移民の排除は恥ずべき行為だ。実際、移民の排除は犯罪的行為である。
彼ら移民を私たちの目の前で死なせてしまうのだ」と同法王は述べた。
さらに、「そして今日、地中海は世界最大の墓地となっている」とし、欧州に到達しようとして溺死した何千人もの人々に言及した。
「移民を排除するのは嫌悪すべきことであり、罪深いことだ。
困っている人にドアを開けないのは犯罪である」。同法王はこう付言した。
AFP、ロイター