
著、ベイルート
ベイルートの高所得層が集まる地区で暴徒化した群衆が夜通し銀行ビルを襲撃したのを受け、レバノンの政治家たちは国が大混乱に陥っているにもかかわらず傍観しているとし、水曜日に国連が激しく非難した。
中央銀行の外では治安部隊が催涙ガスを発射し、石や花火を投げつける抗議者を追い払った。ある男性は某銀行のガラスのファサードに車のバッテリーを投げつけ、別の男性は金属製の棒を叩きつけた。また防犯カメラやATMの機械を破壊したり、中には信号機やパーキングメーターを地面からもぎ取る者もいた。
ハムラで衝突が発生した5時間の間に、50人近くの行内警備員と最大40人の抗議者が負傷し、59人が逮捕された。今回の暴動は、10月に政府の腐敗と財政難に対する抗議が始まって以来最悪の事態となり、新政府をめぐる行き詰まりと派閥間の政治的争いが続く中でのできごとだった。
「ますます怒りが高まる抗議活動と景気急落のさなかに、またもや政権樹立にまつわる混乱が起こった」と、国連のレバノン特別調整官を務めるヤン・クビシュ(Jan Kubis)氏は語った。
「政治家の皆さん、この危険な混乱状態の責任を問うのであれば、国民を責めるのではなく、自分たちを責めるべきです」
抗議活動が4か月目に突入しようとする中、デモ参加者の主要な標的となったのは銀行だ。デモ参加者は、1975年から1990年の内戦以来最悪の経済危機にレバノンを追い込んだとし、銀行を非難している。
銀行は、顧客が引き出したり海外に送金したりできる金額を独断的に制限している。多くの銀行は1か月の引き出し金額を約1000ドルに制限しているが、中にはそれ以上の制限を課す銀行もある。
水曜日にハムラ・ストリートで会ったある女性は、「私は3日間ここに来ていますが、引き出せたのはたった300ドルです…お願いです、何とかしてください。55年間働いたあげく、最後にはこんなふうに訴えなくてはならないなんて」と語った。
ハムラの商店経営者、モハンマド・アル・ライエス氏はこう語った。「昨日のできごとは予期していました。残念ながら、この混乱の責任は政治家にあります。
フランサバンク(Franasbank)に務めるある警備員は、火曜日の夜は非番だったが、銀行の外に新しい防犯カメラが設置されるのを眺めながらアラブニュースに語った。「僕がここにいたとしても、何ができたっていうんだ?」と彼は言う。
「治安部隊でさえ、対処できなくて催涙ガスを使わなきゃならなかったんです。ハムラ・ストリートでこんなことが起こったのは初めてです。戦争中でさえ、銀行は通常通り営業していたし、襲撃する人はいませんでした」
通りがかった人々は現場を目にしてあぜんとした。「ここで起こったことは、革命に悪い印象を与えます」と通行人のモハンマド氏は言う。「公共財産や私有財産を破壊したり襲撃したりした人は、平和的な抗議者ではありません。銀行が加える制限に対して、このように対応すべきではありません」
別の女性は現場を「戦場」と表現した。彼女はこう語った。「私有財産を破壊しても革命のためにはなりません」
講義活動が始まった時に首相の地位を退きつつも、暫定首相にとどまったサード・ハリーリー氏は、次のように述べている。「ハムラ・ストリートの襲撃は容認できるものではありません。正当化したり隠ぺいしたりする政党や人間は恥に思うべきです」