アラブニュース

ジェッダ：全国規模の反政府の抗議デモが3カ月目に入ったイランでは11日、イラン通貨リヤルが対米ドルで記録的な安値に下落した。

イラン政権との核合意再建の交渉が決裂したことも、通貨リヤルの価値を毀損している。

8日は1ドル＝36万8000リヤルだったが、１2日には約37万リヤルまで下落したため、テヘランのトレーダーはリヤルをドルに転換していた。

イランの通貨は、イランの核開発計画を厳格に管理するのと引き換えに、国際的制裁が解除された2015年の核合意の時点では、1ドル＝3万2000リヤルで取引されていた。

イランは9月以降、全国規模の抗議デモにあえいでいる。

国の風紀警察によって拘束された22歳のマフサ・アミニさんの死がきっかけとなり、抗議デモが巻き起こった。

イランの弱い経済状況も、抗議デモを強めるもうひとつの要因である。

人権団体は11日、イランが抗議デモに関連した初の絞首刑が国外から反発を受けた後、数人に処刑の危機が差し迫っていると警告した。

イランの司法当局は、これまでに抗議デモに関連して11名に死刑判決が言い渡されたと報告しているが、人権活動家によると、さらに約十数名も死刑の可能性がある罪に問われているという。

ニューヨークを拠点とするイラン人権センターのハディ・ガエミ事務局長は、外国の政府がイランに対し、外交的・経済的に「大きな犠牲を払わないのであれば、世界がこの殺戮を認めることになってしまう」と述べた。

アムネスティ・インターナショナルは、イランが22歳のマハン・サドラット氏を「甚だしく不公正な」裁判にかけてからわずか1カ月後に、「死刑にする準備をしている」と述べた。

サドラット氏は抗議デモの時にナイフを抜いたことで有罪となったが、同氏は法廷でこれについて強く否定した。

サドラット氏は10日、大テヘラン刑務所から近くの都市カラジにあるラジャイ・シャフル刑務所に移送され、「いまにも死刑が執行されるかもしれないという懸念が大きくなっている」と、アムネスティが発表した。

「サドラット氏は他の死刑囚と同様、取調べ、法的手続き、見せしめの裁判が行われている間、弁護士との接見を拒否された」と、オスロに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ（IHR）」が発表した。

抗議デモで逮捕された別の若者、サハンド・ヌールムハンマドザデ氏の生命も「裁判とは言えない性急な法的手続きを経て」、危険にさらされている、とアムネスティは警告した。

ヌールムハンマドザデ氏は「幹線道路のガードレールを壊し、ごみ箱やタイヤに火を付けた」という罪状で、11月に死刑を言い渡された、とアムネスティは発表した。

イランの少数民族クルド出身の24歳のサマン・セイェディ氏も、死刑判決を言い渡された一人だ。  彼の母親はSNSに動画を投稿し、息子の命を助けてほしいと訴えた。

IHRの代表、マフムード・アミリ・モガダム氏は、「抗議デモ参加者の死刑執行を防ぐ唯一の方法は、イランが払う政治的損失を大きくすることだ」と述べ、国際社会に対し「これまで以上に強い」対応を取ることを求めた。

反政府の抗議デモの支持を表明した反体制派のトゥマジ・サレヒ氏も、「地上の腐敗」の罪状で死刑判決を受ける可能性があると、イラン司法当局が先月、認めている。

国連の専門家はサイェディ氏とサレヒ氏の事例に言及し、「我々は死刑が科される罪状で起訴されたイラン人アーティストの生命について危惧している」と述べた。

アムネスティとIHRは、死刑判決を言い渡された医師、ハミド・ガレハサンロウ氏の事例も挙げた。

同氏は拘留中に拷問を受け、同氏の妻が同氏に不利な証拠を提出するよう強要されたという。その後、妻は証拠を撤回しようとしたと、両団体は主張している。

米国、EU加盟国、英国は、モフセン・シェカリ氏の死刑執行を強く非難した。

ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、「甚だしい人命の軽視」を示していると述べた。

物価の高騰、高い失業率、汚職などが、デモ参加者の間で共通の不満となっている。