
テヘラン:イラン最高裁判所は、ラッパーのサマーン・サイディ・ヤシン被告の死刑判決に対する上訴を受理したが、もう一人のデモ参加者に対しては同じ判決を確定した。司法当局が24日に発表した。
不平等、弾圧、失業などについてラップしているクルド系のヤシン被告は、反政府デモの際に治安部隊員の殺害を試み、ゴミ箱に火を放ち、空中に向かって3回発砲した罪に問われていた。本人はこれらの容疑を否定している。
ヤシン被告の母親は先週ソーシャルメディアに投稿された動画の中で、息子を救ってくれるよう懇願し、「ゴミ箱のせいで愛する人の命が奪われるなんて話が世界のどこにありますか」と訴えた。
最高裁は当初、ヤシン被告ともう一人のデモ参加者の上訴を受理したとしていたが、司法当局のミザン通信がその後に出した声明は、ヤシン被告の上訴のみが受理されたとしている。
この声明は次のように述べている。「イラン最高裁広報課は先の通告を以下のように訂正した。モハマド・コバドルー被告の上訴は不受理となった(…)サマーン・サイディ被告の上訴は最高裁によって受理された」
当初の声明で発表された決定については、事件の調査上の不備があったため再調査のために裁判所に差し戻されたと説明している。
コバドルー被告はデモの最中に自分の自動車を使用して警察官1人を殺害し5人を負傷させた罪に問われていた。
9月中旬にイラン全国でデモが勃発したのは、クルド系イラン人女性のマフサ・アミニさんが、イスラム共和国が課す女性の厳格な服装規定を強制する道徳警察によって逮捕された後に拘束下で死亡した事件がきっかけだった。
デモが発生してから100日目となった24日遅くにソーシャルメディアに投稿されたいくつかの動画には夜のデモの様子が映っていた。これらは、首都テヘラン、北東部の都市マシュハド、テヘランの西にあるカラジュ、北西部クルディスタン州の中心にあるサナンダジュなどの地域でのデモとされている。
数十人のデモ隊が雨や雪を物ともせず「独裁者に死を」「(最高指導者のアリー・)ハメネイに死を」といったスローガンを唱えている様子が映っている。ロイターは現時点ではこれらの動画の真贋を検証できていない。
死刑
24日の発表の10日前、最高裁判所はデモ参加者のマハン・サドラット被告の死刑判決を保留した。
同被告は、治安部隊員を刺した容疑やオートバイに火を放った容疑など様々な罪に問われていた。
イランは今月、2人のデモ参加者の絞首刑を執行した。9月に主要道路で通行を妨害し準軍事組織「バスィージ」の構成員1人をナイフで負傷させた罪に問われていたモフセン・シェカリ氏(23)と、バスィージ構成員2人を刺殺した罪に問われていたマヒド・レザ・ラフナヴァルド氏(23)だ。後者は建設用クレーンによる公開絞首刑に処された。
アムネスティ・インターナショナルは国際社会に対し、イランに圧力をかけてコバドルー氏の処刑をやめさせるよう、また「世界の注意が祝祭シーズンを祝うことに向けられている間にイランの死の機構が新たな犠牲者を出すことを許さない」よう呼びかけた。
また、イラン当局は「この国を揺さぶっている民衆蜂起に参加している人々を怖気づかせることを狙った偽りの裁判」によって少なくとも26人の死刑を執行しようとしていると述べた。
さらに、死刑宣告に直面している人々は全員、適切な弁護を受ける権利や私選弁護人へのアクセスを拒否されたと指摘した。
諸人権団体によると、被告らは彼らの弁護のためにほとんど何もしない国選弁護人に頼らざるを得ないという。
人権団体「HRANA」によると、23日の時点で69人の未成年を含む506人のデモ参加者が死亡している。
治安部隊員66人も死亡したとしている。また、1万8516人ものデモ参加者が逮捕されたとみられるという。
当局は、デモで死亡したのは治安部隊員を含め最大300人だとしている。
ロイター