
モハメド・ナジブ
ラマッラー:ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエル新政権が、モスクワのロシア政府とますます友好的な関係を築くイランへの対抗策として、自国のロシアとの親密な関係を復活させようとしていると評論家は語る。
イランへのロシアの支援は、シリアにおいてイランの勢力を標的にしているイスラエルの治安作戦で、将来的な脅威となる可能性があると、少なくとも一人のオブザーバーが考えている。
1月3日にエリ・コーヘン外相は、ロシアとの電話会談でセルゲイ・ラブロフ外相と話したあと、イスラエルの閣僚にロシア・ウクライナ戦争へのコメントは控えるように依頼した。
新政権は今後、同戦争への言及をあまりしないと彼は話した。これはヤイール・ラピード前首相がとった政治的スタンスから離れて、ロシアによるウクライナ侵攻の非難をイスラエルが避けるようになったことを意味している。
「ネタニヤフ首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の関係がここ何年ものあいだ、イスラエルの前首相であったラピード氏や、かつて首相を務めたナフタリ・ベネット氏とプーチン大統領の関係よりも穏やかなのは明らかです」と大西洋協議会の非滞在型上級研究員で、イスラエル議会の元議員でもあったクセニア・スヴェトロワ氏はアラブニュースに話した。
ネタニヤフ首相はまた、先週の国連で、親パレスチナの決議案にウクライナが反対し損ねたことで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対して不満を持っていると考えられている。
プーチン大統領はクレムリンで指導権を握っていた過去22年間のうち、12年間ネタニヤフ首相と協力してきた。そのため、両者の関係は親密だ。
同ロシア大統領はネタニヤフ首相が11月3日の選挙で勝利したときに、また同じくイスラエルの指導者たる彼が12月29日の信任投票で勝利を収めた際にもお祝いの言葉を述べる電話をかけている。
ネタニヤフ政権はロシア政府との親密な関係を深めようとするだろうが、しかし同時に、コーヘン外相がラブロフ露外相と電話会談したことについて不快感を示したアメリカ合衆国との戦略上のつながりも維持するだろうとイスラエルの専門家がアラブニュースに語った。
プーチン大統領はネタニヤフ首相にイスラエルの対ロシア政策を、国連のスピーチやメディア向けの声明でロシア政府を非難していたラピード前首相の取り組み方から変えることを期待しているとイスラエルの政治評論家のヨニ・ベン・メナヘム氏は話す。
イスラエルはシリアにおけるイラン勢力への爆撃をロシアが阻止するのではないかと恐れている。ロシアは、イスラエルの航空部隊にとって脅威となりうる対空ミサイルをイランの軍隊に提供する可能性がある。
ロシアは現在イランとの「蜜月」を楽しんでおり、その行く先には、シリアでイラン勢力を標的に爆撃するイスラエル航空部隊の自由の終焉があるかもしれないとベン・メナヘム氏は話した。
イスラエルにはロシア語を話す100万人のユダヤ人がいる。
そのほとんどが選挙権を持つ18歳以上で、イスラエルの選挙結果に影響を及ぼす。
以前のイスラエル政府にも、アヴィグドール・リーベルマンやユーリー・エーデルシュテイン、ソフィア・ランダーといったロシアに起源を持つ大臣や副大臣が含まれていた。
12月31日、ネタニヤフ首相はゼレンスキー大統領と話し、国連の親パレスチナ決議案に反対するように頼んだ。
ゼレンスキー大統領は、テルアビブのイスラエル国防軍本部がウクライナに先進兵器を提供してくれるなら応じると答えた。
ネタニヤフ首相はその申し出を断り、テルアビブとモスクワの関係を損なう恐れがあることから、イスラエルはウクライナに人道支援以上のものは提供できないとゼレンスキー大統領に伝えた。ウクライナは投票をおこなう議会を欠席し、イスラエルに反対票を投じるのを避けた。
ゼレンスキー大統領はラピード政権から対空防衛システムを受け取ることを望んでいたが、彼のもとに届くことはなかった。ネタニヤフ首相がそういったものを提供することはあまり起こりそうにない。
「いずれにしても、イスラエルとロシアの関係は、ラピード前首相とプーチン大統領のときより、ネタニヤフ首相とプーチン大統領の組み合わせのほうがいいでしょう」とスヴェトロワ氏はアラブニュースに話した。
ロシアとイスラエル間の問題に詳しい専門家のアレクサンダー・グリンバーグ氏は、次のようにアラブニュースに語った。
「前任者のヤイール・ラピード元首相がとっていたウクライナ支援の姿勢は個人的な感情によるもので、それ以上のものではなかったため、イスラエルが今後とるべき姿勢と、ウクライナと戦争を続けるロシアとの関係のバランスをネタニヤフ首相がうまく取れるのは間違いないと思います」
彼が言うには、シリアであろうとイラン国内であろうと、テヘランをめぐるイスラエルの安全保障上の利益に関して、ネタニヤフ首相のロシアに対する姿勢は、イスラエル軍や参謀本部諜報局、その他のイスラエルの安全保障に関わる組織のものと一致している。
「政治と安全保障の指導権を握る人物がプーチン大統領と密接に協力する一方で、イスラエルの人々はウクライナで戦争を始めたロシアに反対しています」と彼は言った。