モハメッド・ナジブ
ラマッラー:イスラエル政府は、ヨルダン川西岸地区において今後数ヶ月で1万8000戸の住宅を建設するなどの前例のない入植活動を計画している。イスラエルの新聞が25日に明らかにした。
イスラエルのイスラエル・トゥデイ紙は、パレスチナ人に対する深刻な脅威と見なされているこの動きについて、「ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル政治の革命」であり「ミニ併合」であると表現している。
イスラエルの「100万人入植」計画のもとでは、過去2年半の間に保留されていた数千ヶ所の入植地が承認されることになる。
この計画では他に、ヨルダン川西岸地区に今後数ヶ月で1万8000戸の住宅を建設すること、入植者数十万人を移住させること、パレスチナ人数十万人をイスラエル政府の公的データに登録することなどが予定されている。
パレスチナ外務省は、イスラエルの新政権は現地に新たな現実を押し付けようと時間との競争に必死に勤しんでおり、それは二国家解決の交渉を「非現実的かつ非理性的」なものにする行為だと非難した。
また、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立の機会を毀損するものであるとともに、紛争の平和的解決に向けた国際社会および地域の努力の扉を永久に閉ざすものであると付け加えた。
イスラエルのヨアフ・ガラント国防相は入植者の指導者らと面会し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が発表した計画のもとで「C」に分類されている全ての地区においてパレスチナ人の住宅や施設を取り壊すキャンペーンについて伝えた。
イスラエル・トゥデイ紙によると、新政権はナブルスに近いアヴィタールやホメシュを含む入植拠点を合法化するべく、「分離・撤退」法を改正するとともに、これらの拠点を基本インフラに繋ごうとしている。
イスラエル民政局の権限は国防省から別の省に移管される予定で、入植地の建設計画が促進され、新しい入植地の道路が敷設されることになる。
同紙はこの計画を「接近する嵐」と例えたうえで、ガラント国防相と宗教シオニズムのベツァレル・スモトリッチ党首との間で責任が整理される中で出てきたものだと述べている。
一方、ファタハのジャマル・ナザル報道官は、イスラエルのクネセト(国会)がヨルダン川西岸地区の入植地にイスラエルの法律を適用する緊急規制(「アパルトヘイト」法)をさらに5年間延長したことを非難した。
同報道官は、この一方的な措置はパレスチナ人の権利を直接脅かすものだと述べた。「人種差別的かつ反民主主義的な法律の基礎を拡大するというイスラエル政府のやり方は、イスラエルによって占領されている領土に住むパレスチナ人の権利を脅かすものである」
「イスラエルはアパルトヘイト法を悪用して、占領下の領土に住むパレスチナ人をイスラエル国内に収監しようとしている。これは、占領国による住民の投獄を禁じている国際法に対する違反にあたる」
パレスチナの政治アナリストであるガッサン・アル・ハティブ氏はアラブニュースに対し、イスラエルの現政権は以前の政権と比較してより大きな脅威をパレスチナ人に与えており、特にC地区と東エルサレムにおいてそれが顕著だと指摘する。
同氏は次のように語る。「アル・アクサやエルサレムの問題はイスラエルとアラブ諸国の関係に悪影響をおよぼすだろう。C地区の入植地を拡大すれば、イスラエルとEUおよび米国との関係に悪影響を与えることになる。米国は二国家解決の可能性を生かしておきたいと思っているが、イスラエルの入植活動はそれを危険に晒すものだ」
別の動きもあった。パレスチナとイスラエルの共同世論調査から、パレスチナ人とイスラエル人の間で二国家解決への支持が低下し続けていることが明らかになったのだ。
この世論調査「パレスチナ・イスラエル・パルス」は、ラマッラーの「パレスチナ政策調査研究所」とテルアビブ大学の「調停・紛争解決国際プログラム」によって2022年12月に実施された。
この調査によると、二国家解決を支持するという回答の割合は2020年9月の43%から大幅に低下し33%(パレスチナ人)および34%(ユダヤ系イスラエル人)になっている。
パレスチナ人の3分の2、イスラエル人の53%は、二国家解決に反対すると回答している。アラブ系イスラエル人の場合は支持が60%、反対が21%で変化はないが、2020年より前と比較すると支持が低下している。
イスラエル人、アラブ人、ユダヤ人を全て合わせると、二国家解決を支持するという回答は39%となっている。この支持率は2016年6月の調査開始以来最低であるとともに、1990年代初頭にオスロ和平プロセスが始まって以来最低である。
回答者は、イスラエルとパレスチナの二国家の間の連合という案についての詳しい回答を求められ、その主な内容を、難民と入植者の移動・国籍・住居の自由、エルサレム、合同民政当局の設置などの5つの要素に分けて説明した。
その結果、この案を支持するという回答は21%(パレスチナ人)および22%(ユダヤ系イスラエル人)と、両民族の間でほぼ同じであった。アラブ系イスラエル人は59%が支持すると回答した。
ガザ地区のパレスチナ人はヨルダン川西岸地区のパレスチナ人と比較すると、支持するという回答の割合が高かった。
両民族が平等な権利を持つ一国家解決を支持するという回答は、ユダヤ系イスラエル人で20%、アラブ系イスラエル人で44%、パレスチナ人で23%だった。
イスラエルが統治しパレスチナ人は平等な権利を享受しない一国家解決については、ユダヤ系イスラエル人の37%が支持している。
一方、パレスチナが統治しユダヤ人は平等な権利を享受しない一国家解決の場合、パレスチナ人の30%、アラブ系イスラエル人の20%が支持すると回答している。
ユダヤ系イスラエル人の大多数(84%)およびパレスチナ人の61%は、相手側のことを和平に向けたパートナーと思わないと回答している。その結果、和平合意の可能性はないと双方ともに考えている。また、イスラエル人の大半が和平を望んでいると思うと回答したパレスチナ人は僅か17%だった。
パレスチナ人の大半が和平を望んでいると思うと回答したユダヤ系イスラエル人も僅か12%で、2017年中頃の33%、2018年中頃の35%、2020年の19%から低下している。
相手側が決戦や武装闘争をしかけようとしていると思うという回答は、ユダヤ系イスラエル人で52%、パレスチナ人で44%で、双方ともに最も多い回答だった。
同様に、自分たちが独立国家として存在することを相手側は決して受け入れないと思うという回答は、ユダヤ系イスラエル人(82%)とパレスチナ人(75%)でともに最多の回答となっている。
大多数のパレスチナ人(86%)とユダヤ系イスラエル人(85%)は相手側を信用できないと回答しているが、そう回答したアラブ系イスラエル人は50%だった。
アル・ハティブ氏は次のように語る。「入植を行いパレスチナ人の権利を否定するイスラエルの政策の存在を考えれば、二国家解決に対する支持やパレスチナ人とイスラエル人の間の信頼が低下するのは当然だ」
さらに別の動きもあった。ネタニヤフ首相が1月24日にアンマンでヨルダンのアブドッラー国王と会談しアル・アクサモスクの現状維持を約束したことを受け、イスラエルのイタマル・ベングビール国家安全保障相が次のように発言したのだ。「私は今後もアル・アクサへの突入を続ける。この場所に対する主権を持つ者はイスラエル以外にいない」
ヨルダンはイスラエルに対し、アル・アクサモスクとその中庭の保護を強化するためにモスクの東側の壁に5本目のミナレットを建設することを許可するよう求めている。
この要請はネタニヤフ氏に難題を突きつけていると、イスラエルの専門家らは指摘している。