ドバイ:スペースXは、宇宙飛行士4人のクルーで構成された宇宙船の打ち上げを延期した。クルーメンバーには、アラブ史上最長の宇宙探査ミッションに乗り出すはずだったアラブ首長国連邦(UAE)のスルタン・アル・ネヤディ氏が含まれていた。
「TEA-TEBの地上システムに問題があったため、今夜のCrew-6の打ち上げを一旦中止します。Crew-6も輸送船も好調で、ドラゴンを降りるクルーより先に推進剤の取り外しが始まっています」とスペースXはツイートした。
スペースXの打ち上げ機は、ファルコン9ロケットの先端に自律航行するクルードラゴンのカプセル、エンデバーを搭載したもので、米国東部標準時で午前1時45分(グリニッジ標準時06時45分)に発射するよう設定されていた。
4人のクルーは、およそ25時間後の28日朝に国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、地表から420kmほど上空にある軌道実験室で6カ月間の微小重力ミッションを開始するはずだった。
Crew-6と名付けられたこのミッションは、NASAがスペースXに乗せる6回目の長期滞在ISSチームである。
それは、電気自動車メーカー「テスラ」とソーシャルメディアプラットフォーム「ツイッター」のCEOであり億万長者のマスク氏が民間ロケットベンチャーを設立し、2020年5月にアメリカ人宇宙飛行士を軌道に送り始めたことで始まった。
NASAは、ミッションの打ち上げ準備状況報告は25日に完了しており、計画通りの発射を進めるための「ゴー」サインが出ていたと発表した。
マスク氏は26日、「すべてのシステム、それに天候も打ち上げに適しているようだ」とツイッターに投稿していた。
最新のISSクルーを率いるのは、当ミッションのコマンダーを務めるスティーブ・ボーエン氏(59)である。
元米海軍潜水艦将校のボーエン氏は、3回のスペースシャトル飛行と7回の宇宙遊泳を経験しており、軌道上で40日以上の滞在記録がある。
仲間のNASA宇宙飛行士であるウォーレン(ウッディ)・ホーバーグ氏(37)は、エンジニアであり、民間飛行士でもある。Crew-6のパイロットとして任命された今回が初の宇宙飛行となる。
4人のクルー構成員最後の一人は、ロシア人宇宙飛行士のアンドレイ・フェジャエフ氏(41)だ。
アル・ネヤディ氏と同じくエンジニアであり、宇宙飛行としては新人の彼は、チームのミッションスペシャリストに任命された。
フェジャエフ氏は、ロシアのウクライナ侵略をめぐってワシントンとモスクワ間の緊張が高まる中、アメリカの宇宙船に乗る最も新しい宇宙飛行士である。
これは、NASAとロシアの宇宙機関ロスコスモスが7月に締結したライドシェア契約に基づいて実現した。
Crew-6チームは、ISSに滞在中の7名の宇宙飛行士によって宇宙ステーションへ迎えられることになる。
滞在メンバーには、アメリカ先住民女性として初めて宇宙飛行を行い、コマンダーを務めるニコル・アウナプ・マン氏を含む米国NASAのクルー3名の他、ロシア人クルー3名と日本人クルー1名がいる。
ISSは、サッカー場ほどの長さがある宇宙最大の人工物である。カナダや日本、ヨーロッパ11カ国を含む米露主導のコンソーシアムが、その運営に継続的に取り組んできた。
この宇宙ステーションの始まりには、ソビエト連邦が崩壊し、1950年代と60年代に最初の米ソ間宇宙開発競争を引き起こした冷戦の対立が終わった後、ワシントンとモスクワの関係改善を促す事業としての意味合いもあった。
NASAとロスコスモスの協力は、かつてないほど試されている。ロシアが1年前にウクライナへ侵攻して以来、米国はモスクワに対して大規模な制裁を課しながら、ウクライナ政府への軍事支援を着実に増やしているからだ。
Crew-6のミッション延期は、最近起こった2件の不運な出来事に続いている。軌道実験室にドッキングしていたロシアの宇宙船が冷却剤漏れを引き起こし、それによって宇宙空間を流れた微小隕石が宇宙船に高速で衝突したのである。
影響を受けたロシアの輸送船の1つであるソユーズのクルー用カプセルは、3月に終了予定の6カ月のミッションのため、昨年9月に3名の宇宙飛行士を宇宙ステーションへ運んだものだった。
クルーを帰還させるための空のソユーズが24日に打ち上げられ、25日に宇宙ステーションへ到着している。