
ラマッラー: ヨルダン川西岸地区での大規模な軍事作戦「ブレイク・ザ・ウェーブ」が行われてから1年が経過したが、イスラエルの治安組織はほとんど成果を上げていないようだ。その作戦の前よりも危険で暴力的な状況になっていると、防衛専門家はアラブニュースに話した。
その作戦は、ナブルスでパレスチナ人3人(アダム・ マブロカ氏、アシュラフ・ムバスラット氏、モハメド・ダクヒル氏)が暗殺された2022年2月に始まり、ひどい暴力行為を続け、ガザへと広がった。
イスラエルによる逮捕を目的とした作戦は、ヨルダン川西岸地区とエルサレムに住む7000人以上のパレスチナ人の生活を混乱させた。合わせて139人のパレスチナ人が死亡し、数千人が負傷し、数十棟の住宅が破壊された。しかし、この作戦では、個人による攻撃の実行者を抹殺することはできなかった。
イスラエルの軍事専門家は、イスラエルはヨルダン川西岸地区の戦線でのみ勝利を収めることができたと言っている。レバノンのヒズボラ、ガザを支配するハマス、イランとの対決に関しては、勝利したとは言えなかった。しかし1年後、ヨルダン川西岸地区はイスラエル軍にとって、イランの脅威に次ぐ最大の安全保障上の課題になっており、イスラエルは同地区に46個師団を配置した。これは全兵力の8割に当たる。
その作戦では、次の3つの目標を達成しようとした。
iii) イスラエルとヨルダン川西岸地区を隔てる分離壁の弱点に対処すること。その弱点のせいで、武装した攻撃者や他のパレスチナ人は分離壁を突破できている。
2023年のイスラエル兵と入植者の死者数は15人になった。2022年の1年間の死者数である33人の約半分だ。
イスラエル問題を専門とする、パレスチナ人のエスマット・マンスール氏はアラブニュースに対し、イスラエルの軍事作戦は1年前に設定した目標を達成できなかったと話した。
イスラエルの軍事作戦は、パレスチナの軍事組織を壊滅させることも、イスラエルの標的に対する武力攻撃を阻止することも、イスラエル・パレスチナ間の対立をヨルダン川西岸地区に移すこともできなかった。イスラエルのベニー・ガンツ前国防相は、パレスチナ武装勢力とイスラエル兵には、テルアビブの喫茶店で話し合うのではなく、ジェニンで軍事衝突してほしいと発言した。
イスラエルとパレスチナ自治政府は安全保障に関する協力関係を見直し、イスラエルのヨルダン川西岸地区の治安状況をコントロールする力は弱まった、とマンスール氏は述べた。
「イスラエルの作戦は、作戦開始時に設定した目標を達成できていない、と私は思っている。極右政権の存在によって軍事作戦の失敗がいっそうひどくなり、第3次インティファーダの開始につながる可能性がある」とマンスール氏は述べた。
パレスチナ人による攻撃の激化とパレスチナの下部組織(獅子の巣、ジェニン旅団、エルサレム旅団、アル・カッサム旅団、アル・アクサ殉教者旅団、トルカレム旅団、ジャバ旅団など)の拡大は、イスラエルの安全保障システムに対する打撃になった。
その軍事作戦から1年後の現在、イスラエル軍、イスラエルの国内諜報機関シンベト、イスラエル警察が次々と計画を変更する中、以前はジェニンにとどまっていたパレスチナの抵抗組織が今ではナブルスやエリコ、トルカレムに存在し、増え続けている。
一方、米国、ヨルダン、エジプトの高官は2月26日、イスラエルの標的に対するパレスチナの武力攻撃の増加を抑えるため、ヨルダンのアカバで開かれた会議に参加した。パレスチナ自治政府も参加した。
その会議が開かれていたときに、ナブルス近郊でパレスチナ人がイスラエル人入植者2人を射殺した。その日の夕方には過激派入植者数百人がハワラを襲撃し、民間人の家や車を狙った放火攻撃を何のおとがめもなく行った。