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パレスチナのアッバース大統領に対し、トランプ新和平案の拒否は賢明でないとの声も

パレスチナのマフムード・アッバス大統領は、アラブ連盟会議において、(左から)歴史上のパレスチナ、1947年の国連分割案、1948年から1967年のパレスチナ領とイスラエルの国境、およびイスラエル併合地域や入植地のない国土計画案、の各地図を示した。 (AFP)
パレスチナのマフムード・アッバス大統領は、アラブ連盟会議において、(左から)歴史上のパレスチナ、1947年の国連分割案、1948年から1967年のパレスチナ領とイスラエルの国境、およびイスラエル併合地域や入植地のない国土計画案、の各地図を示した。 (AFP)
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02 Feb 2020 11:02:36 GMT9
02 Feb 2020 11:02:36 GMT9

ダウド・クッタブ、アフナン・ナセル、ヤスミン・イッサ

カイロ/アンマン:パレスチナのマフムード・アッバース大統領に対して土曜日、新しい中東和平案をただ拒絶するのでなく、それに基づいた協議に参加するよう求める声が上がった。

「建設的で現実的なスタンス、そして単なる非難を超えたポジティブな戦略を打ち出すことが大事だ」と、アラブ首長国連邦(UAE)のアンワル・ガルガシュ外務担当国務相は述べた。

同相の発言は、カイロで開催されたアラブ連盟の外相たちによる会議において、先週ドナルド・トランプ米大統領が発表した新しい和平案が拒否されたのを受けてのものである。外相たちは、新和平案がパレスチナ人にとって不公平であり、包括的で公正な平和をもたらさないと述べていた。

パレスチナのアッバース大統領自身も、トランプ案を非難しただけでなく、占領地ヨルダン川西岸におけるイスラエルとの治安維持協力を停止した。「安全保障を含めてイスラエルと米国と関係を持つことは一切ないだろう旨を、イスラエル側に伝えた」とアッバース大統領は会議で語った。

イスラエルとパレスチナ自治政府の治安部隊は、占領地ヨルダン川西岸のパレスチナの支配下にあるエリアの治安維持において、長い間協力関係にあった。また、自治政府とCIAとの情報協力協定は、パレスチナ人たちが2017年にトランプ政権をボイコットし始めた後も継続した。

アッバース大統領は、電話でトランプ大統領と新和平案について議論すること、また検討のためそのコピーを受け取ることさえ拒否したと言う。「トランプは電話で話したいと頼んできたが、ノーとお答えした。私に手紙を送りたいとも言ってきたが、それもお断りした。」

アッバース大統領は、後でトランプ大統領に、彼に相談されたなどと言われては困るからだと説明した。

イスラエルのネタニヤフ首相に熱心に支持されているトランプの和平案は、占領地に建設されたユダヤ人入植地を含まない、ほぼ完全にイスラエルの治安管理下にある非武装化されたパレスチナ国家の創設を求めるものだ。同案はまた、占領地ヨルダン川西岸のイスラエル入植地、およびイスラエルの分割できない首都としてのエルサレムを、ヨルダン渓谷のイスラエル併合とあわせ、米国が承認することを提案している。

カイロで開催されたアラブ連盟の外相会議は、この案が包括的かつ公正な平和につながることはなく、同盟はその実現について米国に協力することはない、としている。

最後のコミュニケによると、出席した大臣たちは、1967年の中東戦争でイスラエルが攻略・占領した土地を基本に、東エルサレムを首都としてパレスチナ人が将来国家を建国する権利を確認した。彼らは、2002年のアラブ和平イニシアティブに基づき、パレスチナ人の権利を認めて包括的な解決策を講じなければ、平和はあり得ないと述べている。 

サウジアラビアの代表団を率いた外務大臣のファイサル・ビン・ファルハン王子は、「パレスチナ人とその大義」をサウジアラビアが支援することを再確認した。

アッバース大統領は以前にも治安維持協力を破棄すると脅したことがあり、破棄を本当に実行するかは不透明だ、とアナリストはアラブニュースに語っている。

「もし本当に破棄すれば、アッバースにとって、より有利な取引のためイスラエル人たちと交渉していくに当たって、ついに手に入れる有効な力になるかもしれません」とジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の外交政策研究所のファディ・エルサラミーン氏は言った。「しかし、彼に破棄を実行に移す能力があるかどうかについては、私は非常に懐疑的です。」

エルサレムおよび他の聖地をサポートしているイスラム-クリスチャン委員会の事務局長であり、ファタハ革命評議会メンバーのハンナ・イッサ氏は、治安維持協力の完全停止はオスロ合意の終わりを意味する、とアラブニュースに語った。「これは時間をかけなければいけない問題です ―パレスチナ側が、パレスチナ自治政府を解散してイスラエルに占領国としてパレスチナの法的、政治的、財政的責任者になってほしいと望んでいるのでなければ」と彼は言う。「もし破棄が決定されれば、政治的な真空状態が生まれ、その真空がどう満たされていくのかは定かではありません。」

国際コンサルテーションセンターのワディ・アブナサル所長は、パレスチナ大統領の発言は「曖昧」であり、それは代替案がないためだと指摘する。「これは、パレスチナ自治政府を解散することが選択肢にあるかもしれないと示唆することによる警告だと思われます。そのような選択肢が特に彼にとって、そしてパレスチナ人全体にとって悪いものだろうことを分かっているにもかかわらず、です。」

国際危機グループのオファー・ツァルツベルク・上級アナリストは、米国の案は強制的外交に当たり、トランプ政権はパレスチナ人に、妥協しないことのコストは大きく、しかもさらに大きくなり続けるのだ、というシグナルを送っている、と見ている。

「この強制的な取り組みには、2つの大きな問題があります。第一の問題は、そうした取り組みがパレスチナ人のアイデンティティの核心にかかわるいくつかの要素、とりわけ、パレスチナ人が交渉の余地のないものと見なしているアルアクサ・モスクおよび難民の権利に関して、強硬な態度を含んでいることです。このようなプレッシャーは逆効果となり、米国案に対する抵抗を強めるだけです。

「第二に、パレスチナのナショナリズムが国家としてのパレスチナを必要とするだけでなく、イスラエル人/ユダヤ人のナショナリズムもまた、ユダヤ人の多数派維持と民主的な統治システムの確保の両方を欲する限りにおいて、パレスチナ国家を必要としているということです。」

ツァルツベルク氏は、これら2つの問題の相乗効果により、パレスチナの指導部は計算ずくで事態をエスカレートさせる方向に動くようになっているのではないか、と言う。「暴力の抑制おけるパレスチナ自治政府の有用さを、治安維持協力を弱めることでイスラエルに示す一方、真の二国間合意を不可能にしてしまうような種類の併合政策の抑制のためには、イスラエルの自己利益に依存する、というわけです。」

ロンドンのアラブ進歩センター所長で在英パレスチナ大使館の元顧問であったモハマド・マシャルカ氏は、アラブニュースに対し、治安維持協力が近い将来に終了する可能性は低い、と語った。

「治安維持協力はオスロ合意の最後の砦で、もしもそれが崩れたら、新しい形の努力で置き換えなければなりません」と彼は述べた。 「治安維持協力を終了しパレスチナ自治政府を解体するなら、新たな戦略が必要になり、その戦略の開発には、時間と、内外のパレスチナ人があらゆる面で国として団結することが必要になるでしょう。」

前パレスチナ首相の下で情報部門のトップを務めたジャマル・ダジャーニ氏は、アッバース大統領には、オスロ合意に基づいてイスラエルとのすべての協力を終了するより他に選択肢は残されていない、と語る。「トランプ大統領が提示したのは和平への計画ではなく、イスラエルがヨルダン川西岸の広い地域を併合し、パレスチナ人をバントゥースタン[アパルトヘイト体制の南アフリカで作られた、限られた権利しか持たない「アフリカ人の国」]に閉じ込める道を開くための、一方的な計画の概説に過ぎなかったからです」と彼は指摘する。

「それでも、パレスチナ人は米国との関係を断つべきではありません。トランプの案はアメリカの人々や米国議会の感情を反映していないからです。実際、米国の多くの著名人や政治家が彼の案を非難しているのです。」

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