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レバノン、国内のシリア難民による負の影響を懸念

レバノン北部のアッカール県タルハヤトにあるシリア難民の仮設キャンプで、テントの外でプラスチック容器に入れた食器を洗う女性と、その側に居続ける子どもたち。(AFP)
レバノン北部のアッカール県タルハヤトにあるシリア難民の仮設キャンプで、テントの外でプラスチック容器に入れた食器を洗う女性と、その側に居続ける子どもたち。(AFP)
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21 Mar 2023 08:03:35 GMT9
21 Mar 2023 08:03:35 GMT9

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンの公安総局長官代理、エリアス・バイサリ准将は21日、「レバノンの国家と国民にとって憂慮すべき問題」とする事態について説明した

レバノン国内のシリア難民の問題について、バイサリ長官代理は、公安総局が2017年から行っている、難民のシリアへの自発的で安全な帰還の実現支援を継続する、と強調した。

また、難民の第三国での再定住のため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との調整も進めているという。

「この問題がレバノンに及ぼす負の影響を考え、迅速な解決に至ることを願っている」とバイサリ長官代理は語った。

数日前、バールベック郡のダル・アル・ファトワで開かれた会合で、同郡知事のヘルメル・バシル・ホダー氏は、在レバノンのシリア難民の代表者に対し、次のように述べた。「あなた方は避難民であり、難民ではない。これはレバノンという国におけるあなた方の法的定義であり、あなた方は自らを受け入れている国に敬意を払い、その法律を尊重しなければならない」

ホダー知事はまた、「これは差別的な姿勢を意味するものではなく、レバノン人はもう忍耐を使い果たしてしまっているということだ」と付け加えた。

レバノンで最も多くの難民キャンプを抱える国境の町、アルサルのシリア人避難民キャンプのコーディネーターは、避難民への拠出金の増額を要求し、彼らの苦境についてホダー知事の責任を追及していた。

こうした要求に対するホダー氏の怒気を含んだ反応は、ソーシャルメディアで広く共有され、多数のレバノン人から賞賛を浴びたている。

「私は、レバノンで最も地位の高い行政職のひとつ、郡の知事というポジションにあるが、受け取る給料はレバノンに避難民として来ているシリア人1人が得る額よりも少ないのだ」とホダー氏は語っている。「避難民たちは、レバノン人が働いて得る額よりもずっと多くの手当を得ている」

レバノン人が差別的であるという非難に異議を唱えたホダー知事に、聴衆は拍手喝采を送った。

「私たちは2つの国に属する1民族であり、同じ1つの国に属する1民族ではない。避難民の在留期間の上限が最長12年に延びたが、避難は永遠に続けられるものではない。私たちは苦しんでいる。あなた方は私たちの兄弟であり、決して見捨てたりはしないが、これ以上あなたたちに提供できるものはもう何もないのだ。レバノンの賃金水準は極端に低いのに、負担はすべて私たちに回ってきている。これ以上の責任を背負うことはできない」

ホダー知事はまた、アラブニュースに対して次のように語った。「シリア難民の問題に関わる当局者で、これまで私に接触してきた人は一人もいない」

「私は、レバノン人、特に公共部門で働く人たちの痛みを言葉にしただけだ」

ホダー氏はまた、難民キャンプ内のインフラの問題についても懸念を示している。

「ある外国のNGOが、ベカーのキャンプの1つで下水道設備の拡張工事を行うことを許可するよう私に要請をしてきた。しかし、キャンプ内のインフラ整備を認めることはできない。後にテントの代わりに家屋を建てることになる可能性があり、問題外だ」とホダー知事は言う。

公安総局の前長官、アッバス・イブラヒム元少将が昨年12月に発表した最新の統計によると、現在レバノンには280万人のシリア難民がおり、2017年以降で自発的に帰国したシリア人は54万人に過ぎない。

レバノンにいるシリア難民のうち100万人以上は「自国への帰還を希望していない」とイブラヒム前長官は述べた。

デル・アル・アハマルの自治体が統計チームと協力して行った最近の現地調査では、同地域のシリア難民キャンプ内での出産の割合が大幅に増加していることが明らかになった。

この調査には655のテントの統計サンプルが含まれており、それらテントで暮らしている難民の総数は3,728人、そのうち15歳未満の難民は1,782人で、48%を占めている。

この割合は、調査報告によると「レバノンの家族よりもはるかに高い」ものだという。

レバノン政府は、国際機関から難民たちへの多額の寄付が、難民たちに、子供を作り、レバノンに留まり、国際的な援助が得られなくなるのを恐れて帰国しないよう促すことになっているのではないかと懸念している。

レバノン政府の以前の推定によると、難民が毎日50万束のパンと500万ガロン(約1900万リットル)の水を消費している。国が難民のために費やした金額は、11年間で300億ドル(約4兆円)にのぼる。

保健省の公式サイトに掲載されている統計速報によると、2021年のレバノンでは10万人の出生が記録され、そのうち40%がシリア人であった。この統計では、病院外で行われる出産は考慮されていない。

UNHCRの報告書にはこう書かれている。「2021年、大多数の難民は、物乞い、借金、子供を学校に通わせない、医療費を減らす、家賃を払わないなど、生き残るためにネガティブな方法に頼り続けていた」

シリア難民がレバノンで享受しているとレバノン人が思っている様々な「特権」のため、多くのレバノン人は、ラマダン月が近づく中で、シリア難民と援助を分かち合うことに反対するようになっている。

「今年はまずレバノン人に援助を与え、シリア人には残った分を回すことになる」とあるモスクの職員はアラブニュースに語っている。

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