
ロンドン:イエメン沖に停泊中の老朽化した石油タンカー「セイファー号」について、国連関係者は「いつ何時、沈没もしくは爆発して」大きな被害をもたらしてもおかしくないと語った。セイファーには100万バレルの石油が積まれている。
「紅海が黒い海になっては困るが、これは今後起こりうることだ。(セイファー号は)1976年の非常に古い船でメンテナンスもされておらず、いつ何時、沈没もしくは爆発してもおかしくない」と、デビッド・グレスリー国連イエメン常駐・人道調整官はスカイニュースに語った。
「かつての船長ら、あの船を知る人々から、そうなることは間違いないと聞いた。『もしも』ではなく『いつ』の問題なのだ」
セイファー号には100万バレルを超える石油が積まれていることから、早急な対応が欠かせないとグレスリーは述べた。科学的モデリングによれば、石油が流出すれば紅海に面したイエメンのホデイダやサリフの港に「数日のうちに」流れ着き、その結果、600万の人々の生命を支える食糧援助が突然、途絶える可能性もあるという。
さらに、約800万人にきれいな水を供給するためのポンプやトラックが機能するのに欠かせない燃料輸入の「大半」も停止しかねない。
そんな事態を避けるためには1億3000万ドルの費用が必要だが——石油が流出した場合にかかる除去費用200億ドルに比べれば安いものだ——国連の資金だけでは3400万ドル不足する。そこで国連は、セイファー号のサルベージ作戦で油を移し替えるのに使う別のタンカーを調達するのにクラウドファンディングを行った。
「複雑な問題があるが、大半の加盟国にとっての困難は——皮肉なことに——緊急事態に対応するために使える金は国家予算に十分にあるのに、大災害を予防するための予算がある国は皆無らしいということだ」とグリスリー氏は述べた。
被害を受ける可能性があるのはイエメンだけではない。科学的モデリングによれば、石油が流出すれば2〜3週間のうちにサウジアラビアやエリトリア、ジブチの沿岸にも到達し、サンゴ礁や保護下にあるマングローブの森に対する深刻な環境被害が起きる可能性があるという。
イエメンの紅海における漁業資源が死に絶えてしまう可能性もあり、そうなれば食料や生活を海に依存している数多くの人々が大きな打撃を受けるとの懸念もある。