バグダッド:3月25日、イラクは半自治区であるクルディスタン地域と北部キルクーク油田からの原油輸出を停止した。長年トルコとの間で続いていた仲裁裁判でイラクが勝訴した後、石油当局者がロイターに明らかにした。
45万日量バレル相当の原油の輸送を差し止めた今回の決定は、2014年に始まる裁判との関連で行われた。
この裁判でイラク政府は、トルコがクルド地域政府(KRG)に対し、トルコの港ジェイハンへ至るパイプラインを経由して石油を輸出することを認めているのは共同協定への違反に当たると主張していた。
イラク政府は、KRGがトルコのジェイハン港経由で行っている石油輸出を違法行為と見なしている。
「3月23日、イラクは国際仲裁裁判所より、正式に最終判決についての通知を受けました。判決はイラクに有利なものでした」と石油省の高官は述べた。
関係筋によると、トルコはイラクに対し、仲裁裁判所の決定を尊重すると通知してきた。
ロイターが確認した書類によると、トルコの運輸当局者は、トルコのジェイハンにある石油輸出ハブで働くイラク人従業員に対し、イラク政府の承認なしにはどの船にもクルディスタン地域からの原油を積むことはできないと告げた。
またロイターが参照した別の書類によれば、トルコはその後、ジェイハンへ至るパイプラインからのイラク産原油の汲み上げ作業を中止した。
25日、イラクは北部キルクーク油田から始まるパイプラインのイラク側での汲み上げ作業を停止したと、当局者の1人がロイターに明かした。
パイプラインの操業事情に通じた関係者によると、輸出停止以前にはイラクはKRG産の原油37万日量バレルと、イラク連邦産の原油7万5,000日量バレルを、パイプラインを通じて送り出していた。
「近日中に、石油省の代表団がトルコを訪問してエネルギー関連の当局者と会談し、仲裁裁判所の評決に沿った形で、イラク北部で産出された原油を輸出する仕組みについて協議する予定です」と別の石油省の関係者は話した。
生産者が抱えるリスク
仲裁裁判の最終審理は、2022年7月にパリで行われたが、調停者、仲裁裁判所事務局、および国際商業会議所が評決を承認するまでに数か月を要したと、この裁判の事情に詳しい関係者がロイターに明かしている。
今回の決定がKRGの石油生産に及ぼす影響は、イラク・トルコ石油パイプライン(ITP)の封鎖がどの程度続くかに大きく左右されると情報筋は指摘し、イラク・クルディスタン地域(KRI)で操業する石油企業は非常に不確定な状況に直面するだろうと続けた。
パイプラインによる石油輸出の停止は、KRI経済の崩壊をもたらす可能性があると、昨年ダラスを拠点とし、クルディスタン地域で操業するHKNエナジー社が米下院議員に宛てた書簡は指摘している。
この書簡では、イラク北部産の石油の輸入分を補うためにトルコはイランやロシアからより多くの石油を調達する必要に迫られるだろうとも述べられている。
アナリストは、環境が改善しない限り、企業はこの地域から撤退する可能性もあると警告している。
HKNエナジーやガルフ・キーストーン石油といった海外の石油企業は今年、投資計画をKRGからの支払いの信頼性に基づいて立てているが、支払いは数か月単位の遅延に直面している。
ロイター