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ロシアはトルコ・シリアの和解を通して中国の中東での外交成功を再現できるか

会談を行う、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相をはじめとするロシアとトルコの上級外交官たち。2020年、モスクワ。(AFP)
会談を行う、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相をはじめとするロシアとトルコの上級外交官たち。2020年、モスクワ。(AFP)
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03 Apr 2023 08:04:33 GMT9
03 Apr 2023 08:04:33 GMT9
  • アサド体制の同盟国ロシアで昨年12月、シリアとトルコの間で2012年以降で最高レベルの閣僚会談が開かれた
  • 中国がサウジとイランの間の仲介役として成功したのは、両国と友好的な関係を持っているため

ポール・イドン

エルビル、イラク・クルディスタン:ロシアは、シリアとトルコの二国間関係修復を監督することで、中東の二大大国サウジアラビアとイランの国交再開を仲介した中国の成功を再現できると期待している可能性がある。しかし、この二つの正常化努力の間には根本的な違いがあるため迅速な進展は望めないと、アナリストは注意を促している。

昨年12月、ロシアでシリアとトルコの国防相会談が開かれ、対立する両国の間の潜在的な和解の始まりであるとの見方がなされた。両国の高官の会談としては、シリア内戦勃発後の2012年に両国が国交断絶して以降で最高レベルのものとなった。

クレムリンでの会談前、トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相、トルコのフルシ・アカル国防相(右から2番目)、トルコ情報機関トップのハカン・フィダン氏(右)を迎えるロシアのウラジミール・プーチン大統領(左)。2018年8月24日、モスクワ。(AFP)

また、ロシアは4月3日・4日にシリア、トルコ、イラン、ロシアの副外相会談を開き、シリア情勢について議論する。あるトルコ政府高官がロイターに語ったところによると、この会談はロシアが推進している「正常化プロセスの中で始まった一連の閣僚級会談の延長線上にあるとみられる」

オクラホマ大学の「中東研究センター」と「イラン・アラビア湾岸研究のためのファルザネ・ファミリー・センター」の両方で所長を務めるジョシュア・ランディス氏はアラブニュースに対し次のように語る。「ロシアはシリアのバッシャール・アサド大統領に対して大きな影響力を持っており、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領との関係も良好なので、トルコとシリアの間の交渉において権威と影響力を有している」

「シリアとトルコの間には合意を妨げている大きな障害がたくさんある。トルコはシリアの国土の約10%を占領しており、アサド体制の支配に対抗している反体制派民兵組織を支援している」

シリア北東部のクルド人支配地域においてトルコが広範な攻撃を開始する中、車両でタル・アブヤドに向かうトルコ軍。2019年10月10日、シリア。(AFP)

中国はサウジアラビアとイランの両方と良好な関係を持っているため仲介役を務めることに成功した。米国はもう何十年もイランと国交を持っていない。米国はアサド体制にも反対しており、同盟国に対してシリアと国交回復しないよう求めている。一方のロシアはトルコとシリアの両方と良好な関係を維持している。

しかし、これらの関係の性質の間には大きな違いが一つある。ロシアのトルコおよびシリアとの関係よりも、中国のサウジアラビアおよびイランとの関係の方がはるかにバランスが取れているという点だ。

リスク情報会社RANEの中東・北アフリカ担当上級アナリストであるエミリー・ホーソーン氏はアラブニュースに対し次のように語る。「ロシアはこの10年の内戦においてシリア政府を支援しており、安全保証国として深く関与している」

シリアのバッシャール・アサド大統領と、ロシアのウラジミール・プーチン大統領およびセルゲイ・ショイグ国防相。シリアのラタキア。(AFP)

「これは、中国とサウジアラビアおよびイランとの間のよりバランスの取れた関係とはかなり違う。中国はどちらの安全保証国でもないからだ」

「ロシアはシリア政府との親密な関係のおかげで、ほとんどの国にはないシリアの仲立ちをする力を確かに持っているが、トルコとの間には同様の関係がない」

ロシアの独立系アナリストで中東研究所シリアプログラム在外研究員のアントン・マルダソフ氏は、ロシアが中国と同様のことを実現できる可能性を疑問視する。ロシアは仲介者としての役割を果たそうとしているものの「シリア内戦の当事者」だからだ。

同氏はアラブニュースに対し、「ロシアは難しい立場に立たされている。一方では、シリア体制の存続に対する責任から解放されるためにシリアの潜在能力を高めたいと思っている」と指摘する。「その意味で、ロシアはシリア・トルコ関係の修復や経済協力などの深化を目標としている」

「そのうえ、ウクライナ戦争、そして経済パートナーとしてのトルコの重要性を考えて、ロシアはアサド体制をトルコに近づけることに関心を持っている。それが主に難民問題に関してトルコの利益に適うからだ」

シリア北部の今後をめぐるトルコとシリアの間の強い意見の不一致も、ロシアによる正常化努力を困難にしている。

ホーソーン氏は次のように語る。「トルコとシリアにとってのシリア北部に最も似ている領土は、サウジアラビアとイランの間で言えばイエメンだろうが、イエメンは主権国家であり、紛争の力学も大きく異なる」

「ロシアがトルコ・シリア関係の修復を仲介しようとするうえで直面するであろう困難として、シリア北部の今後に関する難しい問題と、この地域のクルド人武装組織に関するトルコの安全保障上の懸念の解決をシリアが約束できるかという問題がある」

トルコの支援を受けた戦闘員によって殺害されたクルド人男性らの葬列の空撮写真。2023年3月21日、アレッポ県ジンディレス。(AFP)

マルダソフ氏は、アサド大統領は弱い立場にあり非現実的な要求をしていると言う。また、トルコは同盟を結んでいる反体制派が支配しているシリア北部に正式には軍隊を展開していないと指摘する。ただ、国境地域にいる軍隊がこれらの反体制派のために迅速に介入することは可能だ。

「イドリブにおけるトルコ軍の存在は、アスタナプロセスの枠組みの中でロシアからだけでなくイランからも正式に承認された」という。アスタナプロセスとは、2017年1月に発足したロシア・イラン・トルコの三者間のシリア和平プロセスだ。「だから、彼らの撤退を主張すれば、アスタナにおける合意の破棄を主張することになる」

そのうえ、トルコは数百万人が住むシリアの領土を支配しており、大きな影響力を行使している。

「これは実はかなり微妙な状況だ。アサド体制の庇護者であるロシアは、ウクライナ戦争を背景としたプロジェクトの面でもシリアの道筋に関する交渉の面でもトルコにも頼る立場にあるからだ」とマルダソフ氏は言う。「ここでより重要なのはロシアの立場が悪くならないようにするための戦術的対応だ。戦略的な状況はロシアにとってあまり有利ではないからだ」

ランディス氏は、5月14日のトルコの選挙が終わるまでは交渉は概ね保留されると予想する。

トルコの国境検問所を通過するシリア難民たち。(AFP)

「トルコの野党はエルドアン大統領の対シリア政策を非難しており、自分たちはシリアとの関係正常化を迅速に進めると主張している」と同氏は言う。「そのうえ、エルドアン大統領が擁護し保護を約束したシリアの反体制派勢力に対して、トルコの野党は義務をほとんど負っていない」

「5月の選挙でケマル・クルチダルオール氏が勝てば、シリアとトルコの関係は急速に改善する可能性が高い」という。「ただ、400万人の難民やイスラム主義民兵組織の扱いに関する問題はなくならないだろう」

ロシアも正常化から利益を得るだろう。

ホーソーン氏は、「ロシアにとっては、従属国がより安定すれば中東全体における自国の足場がより安定することになる」と言う。

そのうえ、この線の努力が行き詰まったとしてもロシアの代償はそれほど大きくない。

ホーソーン氏は語る。「ロシアがこの努力において失敗したとしても、中東におけるロシアの立場は地域全体における様々な二国間関係を維持するロシアの能力に依存している面が大きいため、著しく損なわれる可能性は低い」

「ロシアによる仲介でシリアとトルコの間の対話が前進する可能性はあるが、両国がシリア北部の今後について自分たち自身の理解に至るまでは、ロシアの成功の見込みは薄い」

シリアのバッシャール・アサド大統領に対する反乱開始12周年を祝って街頭に集まるシリアの反体制派支持者たち。2023年3月15日、トルコとの国境沿いの町アル・バブ。(AFP)

ランディス氏は、ロシアがアサド大統領のシリアに「多大な」投資をしたこと、そしてウラジミール・プーチン大統領のシリアでの「勝利」はロシアにとって「大きな外交成功」であったことも指摘する。

しかし、アサド体制に対する全般的なボイコットや「壊滅的な制裁」を考えれば、シリアは依然として「危うい」状況にある。

ランディス氏は、「プーチン大統領がシリアの孤立を解消し、地域の外交や貿易に関する合意の復活に貢献できれば、彼は成功を収めたことになる」と語る。

同氏はそう言いつつも、トルコとシリアが最終的に合意に達する可能性に関しては楽観している。

「道は険しくとも、シリアとトルコは関係を正常化すると見ている」と同氏は言う。「両国は764kmにわたって国境を共有しているし、シリアから米軍を追い出し、クルド人の武装を阻止し、『テロ』を取り締まるという共通の関心がある」

「両国とも、繁栄と発展を支えた戦前の良好な関係に戻ることに関心を持っているのだ」

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