
ベイルート:4月5日、レバノンのビシャーラ・アル・ライ・マロン派総主教とキリスト教各派代表が新大統領選出をめぐる6カ月にわたる政治的停滞を打破しようと、聖地での宗教的会合を持った。
ハリッサで開かれたこの会合に先立って、モハメド・ビン・アブドルアジーズ・ビン・サーレハ・アル・クライフィ・カタール外務省国務担当大臣とレバノン政府関係者および政治指導者たちとの個別会談が行われたが、政治的空白が続く現状を打開することはできなかった。
自由愛国運動(FPM)、レバノン軍団、ファランヘ党、マラダ運動の各派から、計53名の代表者が会合に出席した。
欠席した代表者は11名で、その中にはFPMが支持するエリアス・ブウ・サアブ議会副議長と、現状打破には宗教的な集まりではなく政治的対話が望ましいと考える改革派の代表も含まれる。
メルヘム・ハラーフとナジャト・アウン・サリバの両議員は大統領選の問題に抗議して議会内で寝泊まりをしている(77日目に突入)ため欠席し、パウラ・ヤクビアン議員は「宗派的区別に基づくいかなる集まりにも参加するつもりはない」と表明した。
アル・ライ総主教は各派代表に宛てた声明で、以下のように述べている。「現在国を支配している人々が採る政策は誤っており、国民を保護することができていない。貧しい人々を苦しめ、土地を不当に利用し、問題に直面しているにもかかわらず、対話の仕方も理解していない。
国民は何を成し遂げることができただろうか。どのような肯定的な力が解き放たれただろうか。そして、あなた方は大統領選挙のためにどんな努力をしてきただろうか」
ヒズボラとアマル党は大統領候補としてスレイマン・フランジェ氏を推すことに決めたが、キリスト教各派の議員たちはこれを拒否している。進歩社会党のワリード・ジュンブラート党首は、中道派の大統領が望ましいとしている。
フランジェ氏は著名なキリスト教徒政治家で、レバノン軍団と対立候補のミシェル・ムアワド議員を「傲慢な候補者」として敵視するヒズボラとその信奉者から支援を受けている。過去11回の投票で、ヒズボラの議員たちは白票を投じ、また2回目投票をボイコットし、この時は定足数に達しないとして投票自体が無効になった。
大統領に選ばれるためには、128名いる議員から、65票を獲得する必要があるが、いずれの候補を推す側もこの票を確保することができないため、どちらの候補者も選出される見込みはない。
一方、アル・クライフィ氏はレバノンの大統領選挙実施を支援するというカタールの立場を繰り返すとともに、政府関係者に対して経済再生のために国際社会が求める改革を実行するよう促した。
これとは別に、アメリカ財務省海外資産管理局はレバノンのレイモンド・ラームとテディ・ラーム兄弟および両氏が所有する3つの企業(ZRエナジー社を含む)に制裁を課した。
声明の中で、米財務省は次のように述べた。「ラーム兄弟は財産と権力、影響力を利用して腐敗行為に関与し、その結果レバノンにおける法の支配が崩壊することとなった」
兄弟はFPMのジブラーン・バシール党首やレバノン軍団のサミール・ジャアジャア党首、フランジェ候補を含むキリスト教系政治家と太いパイプを持つ。
2020年の記者会見で、フランジェ氏は1980年代までさかのぼるレイモンド・ラーム氏とのつながりを「恥じて」はいないと発言した。
アメリカによる制裁のニュースを受けて、ソーシャルメディア上にはラーム兄弟に関連するコメントや写真があふれた。2020年、アメリカ財務省はバシール氏にも制裁を課している。