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地球を救おう。だが、その方法には注意。

23 Sep 2019 05:09:09 GMT9

2018年8月、当時はまだ無名だった15才のスウェーデン人少女グレタ・トゥーンベリは、自国の国会の外で毎登校日、「Skolstrejk för klimatet」(気候のための学校ストライキ)と書かれたプラカードを持って3週間にわたり座り込んだ。それ以来、多くの出来事があった。

先週金曜、150ヶ国以上の約4,500の場所で、400万人を超える人々がデモ行進を行った。大人たちに混ざって、トゥーンベリのような年若い学生も加わった。Amazonで働く1,800人の労働者は、この大手テック企業のカーボンニュートラルの達成期限を2040年から2030年に前倒しするように要求し、彼らのボスであるジェフ・ベゾス氏がこれに同意した。影響力のあるドイツの新聞『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』は金曜の出来事を、「1人が数千人になった」という的確な題名の記事で報じた。数百万人とした方がより適切だったかもしれない。

トゥーンベリは大きな注目を集めるようになり、ダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会へお金持ちや権力者と共に招待された。彼女は言うべきことを言っただけでなく、やるべきこともきちんと実行し、勇敢にも凍てつく1月の夜を小さなテントで過ごした。ダボスへの出席によって、彼女と彼女が世界中で注目される理由が広く世間に知られることとなった。その後、毎週金曜日に世界中の街で学校ストライキが実施された。英国で行われた「絶滅への反逆」抗議活動の他、ノルトライン=ヴェストファーレン州にあるハンバッハの森にトゥーンベリが姿を見せるという大きな出来事もあった。この古代から残る森林地帯は炭鉱を拡大するために多くの樹木が切り倒されており、2012年以来ドイツの環境保護主義者たちの焦点となってきたためだ。

権力者たちは列をなしてこの若いスウェーデン人に会おうとした。彼女は英国の主な政党の党首たち、ローマ法王、そして多くの国家元首と面会した。また、小さな帆走ヨットで大西洋を横断し、ニューヨークとチリで開かれた国連気候サミットに出席した。

地球を救うというトゥーンベリの訴えは多くの人々、特に若者たちの共感を呼んできた。若者たちに共感するのは簡単だが、私たちは共感する一方で、物事を慎重によく考える必要もある。

地球を救うというトゥーンベリの訴えは、多くの人々、特に若者の共感を呼んできた。この運動は気候が危機的状態にあることを宣告し、政府や企業、個人に対して温室効果ガスの排出に歯止めをかけ、プラスチックの使用を制限するように圧力をかけようとしている。彼らは2016年のパリ気候協定のさらに先を行っている。同協定は世界の温室効果ガスの排出削減を求め、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃以下に制限した。パリ協定の後、科学技術が進歩し、多くの人たちがその目標を不十分だと考えている。学生たちは現在、1.5℃の制限を求めており、国や組織が2030年までにカーボンニュートラルになることを望んでいる。一部では2025年までの達成を求める者たちさえいる。

若者たちに共感するのは簡単である。彼らは何世代にもわたる資源の不用意な利用や二酸化炭素の排出、プラスチックの海洋投棄によって荒廃させられた地球を受け継いだと感じている。ハリケーンや洪水、干ばつなどの自然災害の頻度と激しさが増したのを目にしている。海面が上昇し、自分たちの住む町が水浸しになるのを恐れている。つまり、彼らはこれまでの世代が自分たちの生活を危険にさらし、「未来を盗んでいる」と感じているのだ。彼らは気候の危機的状況に直面していると本当に感じており、自分たちにはそのことを表明する手段がないと思うから、デモ活動を行うのである。

しかし共感する一方で、私たちはものごとを慎重によく考える必要もある。環境問題には対処が必要だが、非常に多くのデモ活動やデモ参加者の生み出す感情に政治家が影響を受ける危険性がある。為政者は慎重に考え、自らの決断が環境や経済、社会に与える影響を判断しながら対応を調整しなければならない。

例えば、家畜は大量の炭酸ガスを排出する一方で、肉や卵は多くの人々にとって、特に新しい食肉代替品を利用できない(そしてとにかくそんな余裕のない)ほとんどの発展途上国では、重要なタンパク源である。また、それらの国の多くの農民たちの生活は、自らが飼う牛や羊、鶏に依存している。最貧困層での低栄養状態は誰の利益にもならない。

私たちは全員、車の運転を控えてもっと公共交通機関を使うべきだが、ガソリンで動く車を一夜にして電気自動車やハイブリッド車に置き換えることは不可能である。また、代替輸送手段がそのライフサイクル全体(製造から退役まで)で環境に与える影響を分析する必要もある。例えば、電気自動車の製造は、内熱機関自動車よりも多くの銅を必要とする。また、電気を作る方法や不可欠なインフラの設置に必要なもの、バッテリーの毒性、および電源の問題もある。経済学もこの議論に関わってくる。ドイツではディーゼル車をどうするべきかという議論がある。ディーゼル車は地方社会の低収入層に偏った影響を与える可能性があるためだ。彼らはお払い箱となったディーゼル車を簡単には交換できず、動き回るための十分な公共交通機関も持たない。

つまり、地球を救うためには私たちの生活の方法を変える必要があるのだが、貧しい人たちや弱者を経済的な破綻から守る実現可能な解決策が必要なのである。また、エネルギー移行を設計する一方で、電灯は確実に点灯させ続けなければならない。私たちはまだ何十年も石油やガスを必要とするだろう。そうでなければ世界の多くの場所で、家の明かりや暖房が消えてしまう。

国連気候変動枠組条約の元事務局長クリスティアナ・フィゲレスは先週、カーボンニュートラルな世界の実現目標である2050年を前倒しするのは素晴らしいことだと述べたが、2030年、さらには2025年などの野心的な提案に対しては警告を発した。彼女は2040年を適切だと考えている。

フィゲレスは核心をついている。もし方針が過度に厳しく容赦のないものになれば、学生たちは大人しくなるだろう。しかし、新しい基準に従う余裕のない人たちや、健康に影響が及ぶ人たちからの反発が起こるだろう。そのような人たちの中には抗議活動をしている学生たちの親や、子どもたち自身さえ含まれるかもしれない。

私たちは地球を救わなければならないが、多くの人の利益を守る方法で行う必要がある。さもなくば反発に遭い、パリ協定以来私たちが若い活動家たちの助けを借りて歩んできた道のりを台無しにしてしまう可能性がある。

  • コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、およびエネルギーの専門家である。Twitter:@MeyerResources
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