
カイロ:多数のスーダン人家族が、エジプトとの国境や紅海の港湾都市に参集しており、自国で繰り広げられている暴力的衝突から逃れようと、食料も避難所も無いままに、時として数日にわたってただ脱出の機会を待ち続けていると、目撃者たちが水曜日に語った。
首都ハルツームでは、3日間の停戦の2日目になって戦闘の激しさが若干減じた。スーダン軍側は、現行の停戦が木曜日に期限を迎えた後さらに3日間延長するという外交的イニシアチブを「初めに受け入れた」と発表した。
停戦延長のイニシアチブは、政府間開発機構(IGAD)という呼称で知られる東アフリカの8か国から成る貿易ブロックの地域機構によって仲介されており、4月15日から戦闘を行っているスーダン軍と即応支援部隊(RSF)両者との直接交渉も行われる見込みである。
このイニシアチブに対してRSFは即応的なコメントはしていない。このイニチアチブが両陣営に受け入れられたとしたら、1週間以上にわたる緊迫した国際外交において大きな突破口となるだろう。軍を掌握しているアブドゥルファッターフ・ブルハン将軍とRSF司令官のモハメド・ハムダン・ダガロ将軍という対峙する2人は、互いを打ち負かそうと決意を固めていしまっているように現況では見受けられる。
首都ハルツームと隣接する都市オムドゥルマンでは、情勢が比較的穏やかとなったため、軍と敵対する準軍事組織との戦闘のため数日間屋内に留まっていた多くの住民たちが、食料と水を求めて屋外に出て、パン屋や食料品店の列に並んだ。破壊されたり略奪を受けた店舗や家屋を検分して回る住民たちもいた。
「私の住む地区とその周辺の雰囲気は穏やかなものです」と、ハルツーム南部のメイ地区に住むお茶売りのマハセン・アリ氏は述べた。「しかし、皆、次に何が起こるのかと怯えています」
銃声や爆発音は依然としてハルツーム市内でも聞こえている。ただし、両勢力の衝突は、主としてハルツーム中心部の軍司令部や共和国宮殿の周辺、ナイル川対岸のオムドゥルマンの基地周辺といった限られた地区で発生していると住民たちは述べている。
停戦の見通しが不確かなため、数多くの人々が、この機会を利用して、最近数日でハルツームから脱出した数万人に加わり、スーダンの2大軍事リーダーによる十字砲火から逃れようとした。
食料はますます入手困難となっている。電力は首都ハルツームを初めとする各都市の大部分で途絶している。複数の援助機関が活動停止に至っており、これは4,600万人の人口の3分の1が人道支援に依存しているスーダンにおいて非常に深刻な事態である。
首都の4つの病院の内、完全に機能しているのは1つだけで、5万人の急性栄養失調の子供たちへの支援が戦闘によって途絶えていると、国連人道問題調整事務所が明らかにした。
日曜日に開始された外国人の避難完了の後に、両陣営が戦闘を激化させることを、スーダン国民の多くは、恐れている。現在でも空輸を行っている英国政府は、既に約300人の避難が完了し、水曜日にさらに4便を予定しており、可能な限り続行すると言明した。
一方、多数の人々が砂漠を横断し、東部にある紅海のポートスーダンや北部の国境を越えてエジプトに向かうためのアルキンなど、国外へのアクセス地点を目指して疲労困憊しながら1日がかりのドライブを敢行している。
ポートスーダンでも、スーダン人と外国人の群衆が、サウジアラビア行きのフェリーへの乗船のために登録手続きを待ち続けていた。スーダンの政治評論家であるダリア・アブデルモニーム氏は、自身と家族は月曜日に到着しそれ以来フェリーの空きを確保しようとしていると述べた。
アブデルモニーム氏と彼女の大家族の一部は、ほぼ女性と子供だけで、26時間のバスの旅を経てポートスーダンに到着した。その途上で、一行は軍の検問所と小さな村々を通過した。そうした村々では、村人たちが「ハルツームの旅人たち」であるアブデルモニーム氏らにハイビスカスのジュースや水を振舞ってくれたという。
「村人たちはとても貧しい人たちでしたが、バスやトラックに乗っていた全員に行程が楽になるようなものを何かしら提供してくれたのです」と、モニーム氏は語った。
国境線上のアルキンでは、多数の家族が、エジプトへの入国を待ち、屋外の砂漠の中で夜を明かした。国境にはバスが並んでいた。
「大混乱です、老人や病人、女性に子供たちが長い列を作って悲惨な状況の中で待っているのです」と、妻と3人の子供たちと共に1日前に国境に到着したスーダン人教師のモアズ・アルシア氏は語った。
数万人に及ぶハルツームの住民が近隣の州やスーダン国内にある過去の紛争で被害を受けた人々のための避難所や難民キャンプに逃げ込んでいる。
4月15日の戦闘開始以来、民間人と戦闘員合わせて少なくとも512人が死亡し、さらに4,200人が負傷したとスーダン保健省が発表した。民間人犠牲者の追跡調査を行っているドクターズ・シンジケートは、少なくとも295人の民間人が死亡し同じく1,790人の民間人が負傷していると述べた。
アントニー・ブリンケン米国務長官が発表した72時間の停戦合意は木曜日遅くまで継続することになっている。現在最終段階にあると考えられる外国人の避難の完了と共に、戦闘が激化の一途を辿ることを多くの人が恐れている。
しかし、英軍の将官は、英国の避難活動は停戦と関わりなく継続し得ると語った。ダン・リーブ准将は、ハルツーム近傍のワディ・サイードナ空港の状況は「平穏」であり、スーダン軍が周辺地区を「良好にコントロール」していると話した。
キプロスのコンスタンティノス・コンボス外相は、水曜日にスーダンから5便が到着し、合計で391人の英国人が搭乗していたと述べた。
過去1週間の一連の短期的な停戦は、明らかな失敗か、空路か陸路で数百人の外国人を避難させるための断続的小康状態となっただけだった。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、この紛争がスーダンの未来に対するリスクであるだけではなく、「国境を越えて伸びる導火線に点火し、他国での爆発を引き起こし、何年にもわたる計り知れない苦しみを生じさせ、開発を何十年も遅らせかねません」と警告した。
グテーレス事務総長は、武力衝突がスーダン全域で発生しており、青ナイル州、北コルドファン州、西ダルフール州全域で人々が避難しているとの報告に言及した。人道問題担当のジョイス・ムスヤ事務総長補佐は安全保障理事会で「性的及びジェンダー関連の暴力行為が多数報告されています」と述べた。
「数万人の人々が中央アフリカ共和国、チャド、エジプト、エチオピア、南スーダンに避難して来ている」という報告を国連は受けていると、ムスヤ事務総長補佐は明らかにした。
別系統の情勢展開もあった。世界保健機関(WHO)の緊急事態対応責任者のマイク・ライアン博士は、ポリオや麻疹、コレラといった病原体が保管されている研究施設を戦闘員が占拠したことについてスーダンのWHO代表が前日に表明した懸念を撤回した模様だ。ライアン博士は、ジュネーブで記者団に、曝露の場合、主なリスクは占拠した戦闘員たちが負うことになると語った。
ブルハンとダガロは、2019年の民衆蜂起に後押しされた将軍たちがスーダンの長年の独裁的な支配者だったオマール・アル・バシール大統領を排除した後に権力を掌握した。それ以来、スーダン国民は民主的な政治体制への移行を成し遂げようとしてきたが、2021年にブルハンとダガロが共謀して文民指導者たちを排除してしまった。今月、文民統制を再導入するための素案をめぐって両者間に軋轢が生じた。
スーダン軍とRSFの両者共、長年にわたって活動家や抗議運動参加者を残忍に扱い、それ以外にも様々な権利侵害を行ってきた経緯が有る。
また、水曜日には、スーダン軍はアル・バシール元大統領は軍運営の病院に収容されていると発表した。戦闘開始以来、アル・バシール元大統領の居場所についての初の公式声明だった。アル・バシール元大統領と元政府高官の多くが収容されていた刑務所がそれまでに襲撃されており、元大統領の居場所については、疑問が引き起こされていた。
スーダン軍は、声明の中で、アル・バシール元大統領と元政府高官らはスーダン全域で衝突が発生する以前に軍運営のアリヤ病院に身柄を移送されていたと述べた。アル・バシール元大統領は2000年代のダルフール紛争に関連した大量虐殺や人道に対する罪、戦争犯罪で国際刑事裁判所から指名手配されている。
AP