
国際連合:国連安全保障理事会では27日、シリアで進行中の人道支援活動についての報告がなされ、人道支援活動が2月6日に発生した大震災によって支障をきたしていることについて全会一致で同意したほか、戦争で荒廃した同国について楽観的とは言い難い見通しが示された。
シリアは、約13年間に及ぶ紛争によって危機的状況に陥っており、事態は2月の地震によってさらに悪化した。約880万人が影響を受けているこの状況に対する政治的解決策については、理事会の中で意見が大きく分かれた。
会合は、国連特使による報告に始まり、国連による人道支援と10年以上にわたるこの紛争の平和的解決に向けた妥協点を探る取り組みについて、重要な詳細や統計情報を共有した。出席者した外交官らは、内戦終結に向けた2015年の決議を堅守するという決意で表面的には一致していたものの、公開討論では、これまで通りの東西の政治的対立軸がむき出しになった。
ゲイル・ペデルセン国連シリア担当特使は、「このような解決(和平と人道的努力の拡大)には、全当事者が現実主義的な立場をとり、安保理決議第2254号の重要事項に関して合意し、これに基づき行動することが必要です」と述べた。
決議第2254号は、「シリア政府と反体制派が政治的移行プロセスに関する正式な交渉に参加すること」などを求めているが、現在のところ、双方がこれに応じる様子はない。
ペデルセン特使は続けて外交官らに、特にイスラエルによる空爆や、ダーイシュの攻撃、それに対するシリア、ロシア、米国主導の連合軍の攻撃の増加などにより、シリアでの暴力が激化していることを告げた。
外交官らは次々と、人道支援の拡大に対する自国の支持を強調した。しかし、シリアの一部、特に北部への支援が不足しているという見解に関しては、その原因の説明は大きく異なった。
アラブ首長国連邦(UAE)のモハメド・イッサ・アブ・シャハブ代表は、2015年以来シリアに甚大な被害をもたらしてきた紛争について、全国的な停戦を呼びかけた。また、人道支援の「政治化」を終わらせる必要性を強調し、そのような政治的工作は最終的にシリア国民にとって有害無益となると述べた。
さらに、アブ・シャハブ代表は、UAEは現在の外交プロセスにおいて、地域の安定性向上の兆しは見られないとし、地域の長期的な平和を実現するための「あらゆる取り組みにおいてアラブ諸国首脳が役割を果たすこと」への期待を示した。
「これには、こうした取り組みの成功を確実にするために、アラブ諸国間で、必要な機構を確立し、(取り組みを)強化することも含まれる」と述べた。
遅れが指摘されているシリアにおける人道的対応については、ロシア連邦の外交官であるワシリー・ネベンジャ氏から更なる批判があった。ネベンジャ氏は、米国とその同盟国によるアサド政権への制裁を「違法な挑発行為」として繰り返し言及した。
また、米国とその同盟国が「シリアと近隣アラブ諸国の主権を侵害する」「違法な」軍事行動を常習的に展開していると非難し、こうした行動に対して国連指導部から何のアクションもないことは、「非常に危惧すべきこと」だと述べた。
シリアでの人道的努力について明確に言及した際、ネベンジャ氏は、状況は依然として「極めて困難であり、悪化の一途を辿っている」と述べた。
「我々が留意すべきは、シリア全土で窮乏と問題の増大に一般市民が耐えている最中、西側諸国の支援者は人道支援の政治化をなおも続け、これをダマスカスに圧力をかける道具として使っており、同時に、シリアの主権と領土保全も侵害し続けている」と、ネベンジャ氏は述べた。
米国のジェフリー・デローレンティス大使は、「シリアはより広範な地域に不安定をもたらし続けて」おり、米国は「アサド政権との関係を正常化することはなく、他国にも同様の立場を強く求めてきた」と述べた。
「真の包括的かつ永続的な改革と政治プロセスの進展がなければ、アサド政権への制裁を解除することも、復興を支援することもない」とデローレンティス大使は述べた。
続けて、「米国は、米国の制裁によって人道支援が妨げられているといういかなる主張も拒否し続ける」と述べた。
国連人道調整事務所の資源動員責任者であるリサ・ドーテン氏によると、シリア内戦が始まって以来、700万人近いシリア人が避難生活を送っているという。そのうちの80%近くが、少なくとも5年間は避難生活を続けているという。
ドーテン氏は、長年の紛争に加え、経済的な圧力、公共サービスと重要インフラの劣化により、シリア国民は「ショックやストレスに対して非常に脆弱」であるとしている。
「この危機には持続性のある解決策が必要であり、それは内戦の終結に始まる」とドーテン氏は述べた。