ナディア・アル・ファウア
ドバイ:各年代のパレスチナ人に尋ねたYouGovの世論調査によると、イスラエル国家と共存する形でパレスチナの独立国家を設立する「2国家解決」を支持する若者の割合はかなり低い。
アラブニュースとYouGovが特別に実施した共同調査では、2国家解決を支持する18~24歳のパレスチナ人は42%。一方、45歳以上で積極的に支持している割合は63%以上だった。
ロンドンにあるアラブ・英国理解評議会のトップを務めるクリス・ドイル氏は、アラブニュースに対して次のように語っている。「パレスチナの若者は特に2021年に、自分たちの権利を決して諦めない姿勢を示している。シェイク・ジャラー地区での家屋取り壊しや追い立てを阻止しようとする活動は驚異的で、1987年のインティファーダを思い起こさせる。当時、蜂起を主導・結集したのはパレスチナの若者だった」
2017年、米国のドナルド・トランプ大統領がアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムへ移した。70年近くに及ぶ外交方針からの転換であり、エルサレムをイスラエルの公式の首都と宣言した。
それは思い切った措置で、パレスチナやアラブ世界の指導者、EUから一様に非難を浴びた。
調査では、パレスチナの若者はエルサレムの返還には交渉の余地はないと考えていることが示されており、イスラエルへの完全な帰属を認めてパレスチナの首都を別の場所に設置することを認めたのはわずか1%だった。
他の解決策(例えば、エルサレムを分割し、東エルサレムをパレスチナ国家の首都、西エルサレムをイスラエルの首都とする)を支持したのは15%に過ぎなかった。45歳以上では35%が支持しており、ここでも意見が食い違っている。
なぜ年齢が高いほど妥協案が好まれるのか、その理由は不明だ。
ドイル氏は以下のように考えている。「高齢層の一部を妥協案に向かわせているのはおそらく精神的な消耗だろう。現実主義から来ている可能性もある。彼らにしてみれば2国家解決が唯一可能な選択肢に思えるのだろう。問題は、これらの選択肢がすべて不明確だということだ。パレスチナの人々には明確に定義された取り決めが示されていない。彼らは何を受け入れ、何を拒否しているのだろうか?」
国連の管理・監督の下で統一されたエルサレムを設立するという選択肢についても、若者の支持は低い(5%)。45歳以上で16%が支持しているのとは対照的だ。
調査では、アブラハム合意に対するパレスチナ人の視点も調べている。
アブラハム合意は、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエル、バーレーン、スーダン、モロッコが共同で出した一連の公式な関係正常化宣言であり、2020年に発効した。当時は、アラブ世界とイスラエルとの関係の根本的な変化を示していた。
それから3年が経つが、イスラエルとの関係正常化を望む新たなアラブ諸国は現れていない。調査では、全年代のパレスチナ人が関係正常化を引き続き否定的に見ていることが示されている。
パレスチナ国家の設立を想定した場合の市民の最優先事項としては、経済発展や雇用創出が挙げられている。
現在、ヨルダン川西岸地区もガザ地区も外国からの支援に大きく依存している。
先月公表された世界銀行の報告書では、パレスチナ経済が今年さらに落ち込むことが予測されている。パレスチナの厳しい経済状況は、イスラエルが課している移動・輸入・貿易の制限に原因がある。
最近の軍事衝突の激化やロシアによるウクライナ侵攻の世界的な影響が、パレスチナ人の生活水準や経済にマイナスの影響を与えている要因となっている。
世界銀行で西岸地区・ガザ地区を担当しているカントリーディレクターのステファン・エンブラッド氏は「生活水準や財務状態の持続可能性の向上および、失業率の改善を有意義に実現するには、成長率を大幅に上げる必要がある。食料・エネルギー価格の領域などの外的なリスク要因は、全体の経済見通しが引き続き厳しいことを意味している」と述べている。