パンデミック後の未来が何をもたらすにせよ、サウジアラビアの銀行制度における、合併への傾向は抑えられないようだ。これは良い傾向である。
サウジアラビアで最大の銀行であるNational Commercial Bank (NCB)と、4番目に大きいSamba Financial Groupの合併が、つい先ほど発表された。合併後には、サウジアラビアにおいて他を引き離して一番大きい銀行になり、中東地域の銀行ランキングでも、最上位に食い込むことになる。
NCBはサウジアラビアの銀行業界では大公のような存在である。その起源は1953年に遡る。当時のサウジアラビアの企業の多くは、外国の銀行の融資を受けていた。
数年後、アメリカの銀行大手のCitibankが、サウジアラビアにおける最初の支店を開店し、1980年まで拡大を続けた。その年は、サウジアラビア政府が、国内の銀行は、主にサウジアラビア人によって所有されるべきだと決定した年だった。
元々はSaudi American BankだったSambaは、国内統一への動向の産物だった。Citiは、大きな出資元であり続けたが、2000年台初期に、サウジアラビアでの事業を完全に売り払った。しかし、Citiは完全に消えたわけではなく、Vision 2030という経済改革が進行する中で、2018年に、リヤドに新しくオフィスを構え、フルタイム営業で復帰した。
しかし、NCBとSambaの合併は、歴史上手付かずになっていたことを整理する以上の出来事である。この合併により、サウジアラビアの銀行業界における真の国内チャンピオンが生まれ、この合併体は、国中に小売のネットワークを持つだけでなく、全銀行資産の約3分の1、つまりは、2千億ドル以上の価値があるとされる資産、第2位の競合相手の少なくとも2倍の資産を保有することになる。
このタイミングで合併が起きたのは、新型コロナウイルス感染症による危機を原因とした経済的困難に対する反応を示しているかもしれない。実際、サウジアラビアの銀行は、いくつかの格付け会社から赤信号を受け取っている。しかし、S&Pの先ごろの判断によると、サウジアラビアの銀行は、パンデミックによる経済的金融的な困難に対して、中東地域において最も耐久性がある。サウジアラビア通貨庁(SAMA)による、銀行システムへの、数十億ドル規模の流動性の供給が耐久性を高めた。
NCBとSambaの合併は、感染症の影響というよりも、ここ3年間続いてきた傾向の延長上にあるものとして、そして、その傾向の今までで最も顕著な例として、受け止められるべきである。金融業界をより効率的で活発なものにすることが、Vision 2030の戦略が目指すところの一つであり、銀行の数を減らすことが、それを達成するための前提条件だ。
サウジアラビアで最も利益を上げていて、最も資本の充実している銀行のうちの2つが合併することで、金融の効率を上げる原動力を促進させることになる。銀行の合併のテンプレートは、AlawwalとSoudi British Bank (SABB)の提携だった。この提携は、調整者や他の利害関係者が契約を細部にわたって調べた、長い熟慮期間を経て、合意に至った。
この提携には、外国の雰囲気も混じっていた。イギリスのHSBCとRBCが、AlawwalとSABBの株主として、交渉のテーブルの反対側にいたからである。
NCBとSambaの合併はもっと速く進むだろう。すべての株を共有する取引の詳細が合意に至れば(交渉すべきことはほとんど残っていないように見えるのだが)、4ヶ月以内に合併が完了すると予測されている。
合併するうちで規模が大きい方として、NCBは、先週取引が公表される前のSambaの株価の最大27パーセントに及ぶプレミアムを与える株の提供によって、取引をリードしている。
この合併は順調に行われるはずだが、銀行の合併は最終段階で交渉につまずく恐れがある。NCBは昨年Riyad Bankとの交渉で、かなり詳細な議論が交わされたのち、理由を明かさずに撤退した。
とりわけSaudi Public Investment FundがNCBとSambaの両方の大きな株主であることにより、今回はより合意が得られやすいと予想される。サウジアラビアにおける最も大きな金融機関を、提案された合併に関心のある仲介者として迎えることで、心が一つになりやすくなるだろう。
この取引が、合併への傾向を加速させるかは、まだわからない。ある銀行幹部が言うには、広い範囲にわたってすぐに合併の波を引き起こすとは限らないが、真剣に合併を考えるきっかけにはなることは確かである。